Rely on -each other-

Rg

文字の大きさ
上 下
14 / 56
haze

2-7

しおりを挟む
 『今日の7時頃にはそっち着く』

 昂良から連絡が入ったのは、翌日の正午――――彼が他地域に赴いてから五日が経過した頃だった。
 今し方食事を済ませたばかりの朔斗は、汁だけが残っているカップ麺を前に発話する。

「夜ご飯どうする? 食べてくる?」
『ううん、駅で弁当買おうと思ってる』
「そう」

 これで会話は終わりかと思いきや、昂良が『あのさぁ』と口にした。

『駅まで迎えに来たりしない? ……一緒に弁当選んで、一緒に帰りたい』
「ん、いいよ」

 即答に、昂良が一驚の声を上げ、それから間を置いて感謝の言葉を述べた。通話を終えてから、時計を一瞥する。まだまだ時間はある。部屋を見渡し、まずは昼食の後片付けに着手する。

 退屈な毎日からやっと抜け出せる。そう思い心が華やいだのも束の間、たった五日間でこの有様かと自分が情けなくなった。


 
 17時になり、あたりに薄闇が広がり始めた。
 昂良と二人で帰宅したら、いの一番に何をしようかと考える。部屋を暖めて家を出るか、すぐに入浴出来るようにお湯を溜めておくか、野菜スープを作っておいた方がいいのか、そんな事も一緒に黙考する。

 帰って、弁当を食べて、シャワーを浴びたら、それからは。

 思い立つが、少し躊躇する。だが、五日ぶりに彼と会うのだ。今夜体を求めてくるだろうという予想は、忽ち確信に変わる。
 朔斗はもう一度時刻を確認し、居間を後にした。



 帰宅ラッシュの駅内は、身動きがぎこちなくなる程にごった返していた。壁際を伝って歩いていき、比較的人が少ない場所で立ち止まる。改札からは少し離れているが、見つけやすさを選ぶなら丁度いいはずだ。店舗や広告といった、目印になるものをメッセージで伝達し、ぼうっと待つ。

 何もせずに立っていると、密閉空間でも無いのに人熱ひといきれで汗ばんでくる。マフラーを緩め、風通しを良くすれば暑さは和らぐのだが、それも一瞬だ。出口に近い場所に移動しようかと爪先の方向を変えたその時、名前を呼ばれた。
 主人を見つけた犬の如く走ってきた昂良に抱き付かれそうになって、すかさず制止する。

「人いるところではやめて。……お疲れ様」

 言いながら、両手をポケットに突っ込む。彼の表情に翳りが落ち、心苦しくなるが、こんな人混みで勘違いされるようなことはしたくなかった。

「……弁当見に行くか」

 苦笑し、昂良が前を歩き始める。予定通り、地下に降りて夕食に食べる弁当を二人で選んだ。その間何度も、昂良の指先が体に触れかけていたのを、朔斗は一度たりとも見逃しはしなかった。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

おしっこ8分目を守りましょう

こじらせた処女
BL
 海里(24)がルームシェアをしている新(24)のおしっこ我慢癖を矯正させるためにとあるルールを設ける話。

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

処理中です...