その秘め事は誰の為

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第一話

1-8

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 二杯目の緑茶を飲み終わる頃、腕時計を見て瞠目した。このままでは最終電車を逃してしまう。

「あの、桐ヶ谷さん。僕そろそろ帰ります」

 それとなく切り出すが、静真とは対照的に、理士は立ち上がろうとしない。まだ話をしようと言わんばかりに、腰を据えている。

「まだここにいなよ。……明日は仕事?」
「いえ、休みですけどこれ以上長居したら申し訳ないし…そろそろ行かないと終電が……」

 右手に伝わる温度に、息を呑む。しっかりと握られたその手は、忽ち熱を帯び始めた。

「あとひとつだけ、いい?」

 そう言ってやっと立ち上がった彼は手招きをして、薄暗い廊下に出た。

「あの、どこに……?」
「ちょっと、ね」

 行き先と、曖昧な声音に、心拍数が上がっていく。居間以外に思いつく場所は全て閉鎖的で、加えてこの時間帯だ。如何わしい想像が働かないわけがない。
 そんなことあるわけないと自分に言い聞かせ、必死に理士の背中を追いかけた。
 連れてこられたのは、案の定、鍵のついた個室だった。
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