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第2話 私が推しを好きになるまで

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みなさま、ごきげんよう。
私、バロミア王国侯爵令嬢のソフィア・アーガストですわ。

ご挨拶ついでに、少し長くなりそうですが、私の話をさせてくださいませ。



私、一言で表すと「天才」ですの。



まぁ、正直、何言ってるんだと思われるかもしれませんけれども、いわゆる「ちょっとやったら何でもできちゃう系」の人ですわ。

こういったことを言うと、少し苛立ってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、幼いころからそうだといろいろと良くないこともあるものです。
私の場合、人間関係がそれに当たります。


私も当時幼かったので、できていない子にはすぐに「こうしたらいいんじゃない?」と口出ししていました。初めこそ、嬉しそうに話を聞いてくれる人も多かったのですが、だんだんと人は離れていきました。

特に男の子がそうなることが多く、今でこそ、親や同世代が自分より私を褒めるのが気に食わなかったからなのだろうなと分かります。私も若かったので、みんなに褒められたいと思っていましたから。
現在では、きちんと対応術を身に着け、社交はうまくやっているつもりですわ。
ただ、つまり何が言いたいかと申しますと、私、本当に寂しくつまらない人生を送っていましたの。

家族はもちろんそんな私をずっと愛してくれていましたし、私を誇らしく思ってくださっています。ですが、正直、疲れ果てていたんです。(5歳でこんなことを思うなんて本当にひねくれていて、ませた子供ですわよね笑)




そんなひねくれていた時に出会ったのが、グレン様でした。
ちょうど、7歳になったグレン様の誕生日パーティーにお誘いいただき、王宮の会場に出席したのが始まりです。もちろんこのパーティーはお察しの通り、グレン様の婚約者探しでもありました。

私はその日、同年代の方々と話すことに疲れていたことと、なんとなくパーティーの目的を察していたため、親元を離れたものの、王宮を探索することにしました。王宮に入ったのは初めてだったからです。絶対にそっちの方が楽しいだろうということを確信しておりましたので。





そんなこんなで、探検していた際に入ったのが、グレン様の私室だったのです。当時は、全くそれに気づいておらず、ただただきれいな部屋だなと思っていました。入ってはいけないとわかってはいたものの、好奇心による衝動を抑えられなかったのです。

そこで見つけたきれいな部屋の隅にある、きれいな勉強机には問題集が置かれていました。その時、私はなんとなくその問題集の中身を見たのですが、つい先日習った公式の応用で解くことができるような簡単な数学の問題だったので、


「.......こんなの簡単じゃん」



とつぶやいてしまいました。
すると、


「そうかな?それ僕の年でもだいぶ進んだ応用問題が載っている問題集なんだけど。僕も解けていないんだ。君、すごいね!」
「........あ、いや...」



その時の私は見つかってしまったという焦りと、口出ししてしまったことに対するトラウマがよみがえってきて言葉を発せずにいました。当時、グレン様のお顔も見ずに王宮に侵入していたため、グレン様が誰かもわかっていませんでした。


「本当にすごいよ!どうか僕に解き方を教えてくれないか?」
「!!!......は、はい!!!」


そんな私にもグレン様はお褒めの言葉をかけてくださって、なおかつ年下のお子様に教えを乞う姿勢を見せてくださいました。また、私が簡単だと思った数学問題だけではなく、ほかの教科のお話にもなって、その日はパーティー終了まで、2人でずっと話していたことはいい思い出です。







当時のことを思い返すと、グレン様も王宮の、それも自分の私室に紛れ込んだ子供をどう対処するか困っていたのかもしれません。ですが、お優しいグレン様は子供がどうして部屋に紛れ込んだかまで考えてくださったのでしょう。


また、当時の私を発見して同じようなことをしてくださったら、グレン様でなくとも、大好きになっていたと思っています。
ただ、当時、なかなか周りとなじめなかった私に身近な人間以外で唯一声をかけてくださって、また、褒めるだけではなく、何度も繰り返し教えを乞うという姿勢を続けてくださって、私にはとてもありがたかったですし、嬉しかったのです。
また、私が1を話すと10まで理解してくださったことや、私の知らないものまで知っていたことに、話していて楽しいと初めて感じたものです。
それから、自分に自信をもって、振舞うことができるようになりましたし、そのおかげで今では親友のリリーとも仲良くなれましたしね。




心残りがあるとすれば、お互いの名前を言い忘れたことだけでしょうか.....
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