馬鹿犬は高嶺の花を諦めない

phyr

文字の大きさ
上 下
97 / 116
犬牙、犬吠、その身に喰らえ

6-1

しおりを挟む
 キスは気持ちいい。舌を絡めたり、口の中を擦ったりして、師匠がちょっと息を乱して気持ちよさそうにしてくれるのも好きだ。頭を支えたままゆっくり押し倒して、口に溜まった唾液を師匠に飲み込ませる。素直に喉を動かしてくれるのが嬉しい。口の端から溢れているから、そっちは俺が舐め取ってあげる。

「……したいけど、師匠、こっち使ってないよね?」

 尻を撫でたら軽く蹴られた。痛い。

「使ってた?」
「……股座蹴り上げてやろうかテメェ……」

 股間を蹴られるのは痛いから嫌だ。ひとまず、一人でする時にそっちを使う趣味はないらしい。もう一度キスをしながら、師匠の体に浄化の魔術を掛ける。一瞬だけ師匠の動きが止まったから、魔術を掛けたのはわかったはずだ。ただ、何も聞かずに続けてくれるから、許してもらえてるみたいで嬉しくなる。
 挿れたいけど、しばらくしてないところに突っ込んだら怪我をさせかねない。頑張って師匠を気持ち良くするだけに抑えるか、素股くらいはさせてもらうか悩ましい。

 唇を離して防具の留め金を外してたら、師匠に足を撫でられた。

「……ヤんのは、いいけど……怪我治ってるわけじゃねぇんだぞ、テメェは」

 心配してくれた。嬉しい。いや、ヤるのはいい? だめだ、処理しなきゃいけない情報が多すぎる。混乱してぐるぐるしてたら、師匠が小さく笑った。可愛い。

「そんなにヤりてぇのか」
「……だって、あの時からしてない……」

 置いていかれた日から、溜まったら抜いてるだけだ。ずっと師匠とも会えなかったし、相手がいなくちゃセックス出来ない。

「……娼館くれぇ行ってたんじゃねぇのか」
「……カーメルに会いに行ったくらい?」

 それも、師匠の情報がないか聞きに行った程度の話だし、あとは師匠がいなくて寂しいって言って慰めてもらっただけだ。上衣を脱がせたら師匠の体に傷跡が増えていて、ちょっと眉を寄せる。

「……アイツと俺って、かなり方向性違わねぇ?」

 傷のことを確認しておこうと思ったら、そう言って首を捻ってるからため息を漏らさないようにするのが大変だった。カーメルのことは好きだけど、突っ込みたいかって言われたらそれはない。

「カーメルは抱いたことない。そもそも俺、師匠以外とヤったことない」
「……は?」

 心底驚いたような顔をするから、師匠の下腹に手を置いて言い聞かせる。

「俺は、ここ以外に挿れたことないし、挿れたいと思ったことない」

 師匠のナカはめちゃくちゃ気持ちいいし、他の人間には勃たないからヤりようがない。挿れたいのも、とろとろにしたいのも師匠だけだ。
 ついでに師匠の下衣も下穿きも脱がせて、露わになったモノを撫でる。

「他のやつのこれ、触ろうと思わないし、舐める気もしない」

 師匠のだったらいくらでも気持ち良くしたい。わざとらしく指を絡めて擦り上げたら、詰めたような声を漏らして顔を逸らされた。俺を煽る気がなくてこれだから、初めての時みたいにその気になられたら、怪我させるどころじゃない。
 赤くなってる耳に口付けて、舌を這わせて水音を立てる。抱きたい。めちゃくちゃヤりたい。怪我させたくはないけど、奥まで貫いてぐちゃぐちゃにしたい。
 少しずつ唇をずらして首筋に痕を付けて、どうやって啼かせようか考えてたら、師匠の手が俺の腕を掴んだ。

「ル、イ、待って……ほしい……」

 俺を煽る気はない、はずだ。悪だくみしてる顔じゃないし、目がちょっと潤んで困ったような顔でいつも強気なくせに今は待ってほしいってお願いするような言い方とかどういうテクニックだチクショウ。

 思わず顔を上げて無言で凝視してたせいか、師匠が手を離そうとしたから、慌てて促す。

「違う、ごめんなさい、師匠、ちゃんと待つから、理由言って」

 我慢させて無理やりにでも抱きたいわけじゃない。せっかく俺を選んだって自覚してもらったのに、そこに我慢することを紐付けさせたくない。カーメルの言ってた通り、俺に甘やかされるのに慣れてほしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

晴れの日は嫌い。

うさぎのカメラ
BL
有名名門進学校に通う美少年一年生笹倉 叶が初めて興味を持ったのは、三年生の『杉原 俊』先輩でした。 叶はトラウマを隠し持っているが、杉原先輩はどうやら知っている様子で。 お互いを利用した関係が始まる?

幼馴染は僕を選ばない。

佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。 僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。 僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。 好きだった。 好きだった。 好きだった。 離れることで断ち切った縁。 気付いた時に断ち切られていた縁。 辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。

生まれ変わったら、彼氏の息子でした

さくら怜音/黒桜
BL
貧乏アパートで恋人と幸せな日々を送っていた矢先、不慮の事故で死んでしまった良一は、サラリーマン風の天使に「転生希望調査」をされる。生まれ変わっても恋人の元に戻りたいと願うも、「代わりに二度と恋は実らない」と忠告されたその世界は、確かに元恋人・享幸の腕の中から始まったが――。 平成→令和へ。輪廻転生・やりなおし恋愛譚。 2021年1月に限定配信された「天上アンソロジー 〜From misery to happiness」収録作品です。 ※単話配信に伴い、タイトルを変更しました。表紙絵:咲伯梅壱様

【完結】嘘はBLの始まり

紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。 突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった! 衝撃のBLドラマと現実が同時進行! 俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡ ※番外編を追加しました!(1/3)  4話追加しますのでよろしくお願いします。

一度くらい、君に愛されてみたかった

和泉奏
BL
昔ある出来事があって捨てられた自分を拾ってくれた家族で、ずっと優しくしてくれた男に追いつくために頑張った結果、結局愛を感じられなかった男の話

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~

松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。 ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。 恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。 伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

処理中です...