41 / 116
仔犬、負け犬、いつまで経っても
5-1
しおりを挟む
ベッドの上で頭を下げた俺に、向かい合って座っている師匠はしばらく動かなかった。さすがに無理かと思っておそるおそる顔を上げたら、師匠が口元を手で覆っていた。そんなことをしているのをあまり見たことがなくて、どうしたんだろうと逆に不思議な気持ちになる。
そんなに変なことを言ったつもりはなかったけど、ダメだろうか。
「……本気で言ってんのか」
「ご褒美にお願いするくらいには」
「……そうだな……」
口元にあった手でそのまま目を覆って、師匠がため息をつく。
許してもらえる、かな。どうだろう。石の床は嫌だって言われたから、ウィルマさんにもらったお金でめちゃくちゃいい宿を取ったし、ベッドもふかふかで最高だと思うんだけどな。
あの後、師匠が翻訳作業を終わらせるまで待って、さらに報告書として、遺跡の見取り図、建築様式のこと、壁に書かれていた内容とかをまとめてウィルマさんのところへ持っていった。転移の魔道具は一人でしか移動出来なかったから、師匠と二人でひたすら歩いた。何回か野営もした。行きも思ったけど、ウィルマさんの家ですら嫌になるくらい遠かった。あの遺跡にはもう行きたくない。
報告書を見たウィルマさんは喜んでくれて、今後も俺に魔術を教えると約束してくれた。師匠によると俺が気に入ってもらえたということらしいけど、それがいいことかどうかちょっと悩ましい。しれっと俺で実験しているような人だし。ただ、魔術を教えてもらえるのは助かるから、お礼だけは言っておいた。
それからクウィック文字を翻訳したのを師匠が渡して、しばらく密談してた。内緒話がいい感じにまとまったのか、予定にはなかったのにたっぷりお金も払ってくれたから、師匠がウィルマさんに何か言ったんだと思う。脅したわけじゃないと思うから、もらえるものはもらっておけばいい。
そのお金で今いる町で一番いい宿の、一番いい部屋を押さえてふかふかのベッドの上で、俺は師匠にご褒美をお願いした。
「対面座位でヤらせてください」
「言い直してんじゃねぇ……」
師匠がもう一度深々とため息をついて、緩く首を振って服に手を掛けた。
一度決めたら潔いところ、やっぱり師匠格好いい。勢いで抱き付いたら、脱げねぇだろと舌打ちされた。
「脱がしたい」
「……どんだけねだるつもりだよ」
言いつつ師匠の手が服から離れる。
どうしよう、本当にご褒美だ。めちゃくちゃ甘やかしてもらってる。嬉しい。俺がしたいことを、師匠がさせてくれる。俺の欲しいものを、師匠がくれる。
「今なら死んでもいい……」
「まだ何もしてねぇだろ」
何言ってんだって師匠が笑うから、それも嬉しくて師匠の肩に額を擦り付けた。あああああ撫でてもらった。すごい。ご褒美すごい。
幸せすぎて耐え切れなくて、喉の奥で唸りながら、師匠の服を少しずつ寛げていく。ヒューさんみたいなごりごりの筋肉というわけじゃないけど、師匠はきちんと体を鍛えているから、鋼を縒り合わせた繊維でしっとりと肉付けしたような肉体だ。触ると弾力が合って、でも柔らかすぎなくて、手に吸い付くような肌理細やかな肌に、ところどころ傷跡が残っている。もう薄らと消えそうな痕も、盛り上がって肌を這う痕も、師匠が誰かを守って生きてきた証だ。全部が格好いい。しばらく遺跡に籠って調査をしていたから、少しだけ肌の色が白くなった気がする。
師匠は俺の好きにさせてくれて、いちいち肌を撫でる俺を急かしたりしないし、脱がせる俺に協力して体を動かしてくれたりした。下穿きも脱いで何も着ていない師匠に対して、俺はまだ何も脱いでいない。脱いでないけど、どことは言わないけど、もう痛い。いや自分でもどうかと思う。童貞でもこんなことならない。
「抜いてなかったのかよ」
師匠にも笑われた。
「ウィルマさん怖くて……」
「……ああ……」
そんなに変なことを言ったつもりはなかったけど、ダメだろうか。
「……本気で言ってんのか」
「ご褒美にお願いするくらいには」
「……そうだな……」
口元にあった手でそのまま目を覆って、師匠がため息をつく。
許してもらえる、かな。どうだろう。石の床は嫌だって言われたから、ウィルマさんにもらったお金でめちゃくちゃいい宿を取ったし、ベッドもふかふかで最高だと思うんだけどな。
あの後、師匠が翻訳作業を終わらせるまで待って、さらに報告書として、遺跡の見取り図、建築様式のこと、壁に書かれていた内容とかをまとめてウィルマさんのところへ持っていった。転移の魔道具は一人でしか移動出来なかったから、師匠と二人でひたすら歩いた。何回か野営もした。行きも思ったけど、ウィルマさんの家ですら嫌になるくらい遠かった。あの遺跡にはもう行きたくない。
報告書を見たウィルマさんは喜んでくれて、今後も俺に魔術を教えると約束してくれた。師匠によると俺が気に入ってもらえたということらしいけど、それがいいことかどうかちょっと悩ましい。しれっと俺で実験しているような人だし。ただ、魔術を教えてもらえるのは助かるから、お礼だけは言っておいた。
それからクウィック文字を翻訳したのを師匠が渡して、しばらく密談してた。内緒話がいい感じにまとまったのか、予定にはなかったのにたっぷりお金も払ってくれたから、師匠がウィルマさんに何か言ったんだと思う。脅したわけじゃないと思うから、もらえるものはもらっておけばいい。
そのお金で今いる町で一番いい宿の、一番いい部屋を押さえてふかふかのベッドの上で、俺は師匠にご褒美をお願いした。
「対面座位でヤらせてください」
「言い直してんじゃねぇ……」
師匠がもう一度深々とため息をついて、緩く首を振って服に手を掛けた。
一度決めたら潔いところ、やっぱり師匠格好いい。勢いで抱き付いたら、脱げねぇだろと舌打ちされた。
「脱がしたい」
「……どんだけねだるつもりだよ」
言いつつ師匠の手が服から離れる。
どうしよう、本当にご褒美だ。めちゃくちゃ甘やかしてもらってる。嬉しい。俺がしたいことを、師匠がさせてくれる。俺の欲しいものを、師匠がくれる。
「今なら死んでもいい……」
「まだ何もしてねぇだろ」
何言ってんだって師匠が笑うから、それも嬉しくて師匠の肩に額を擦り付けた。あああああ撫でてもらった。すごい。ご褒美すごい。
幸せすぎて耐え切れなくて、喉の奥で唸りながら、師匠の服を少しずつ寛げていく。ヒューさんみたいなごりごりの筋肉というわけじゃないけど、師匠はきちんと体を鍛えているから、鋼を縒り合わせた繊維でしっとりと肉付けしたような肉体だ。触ると弾力が合って、でも柔らかすぎなくて、手に吸い付くような肌理細やかな肌に、ところどころ傷跡が残っている。もう薄らと消えそうな痕も、盛り上がって肌を這う痕も、師匠が誰かを守って生きてきた証だ。全部が格好いい。しばらく遺跡に籠って調査をしていたから、少しだけ肌の色が白くなった気がする。
師匠は俺の好きにさせてくれて、いちいち肌を撫でる俺を急かしたりしないし、脱がせる俺に協力して体を動かしてくれたりした。下穿きも脱いで何も着ていない師匠に対して、俺はまだ何も脱いでいない。脱いでないけど、どことは言わないけど、もう痛い。いや自分でもどうかと思う。童貞でもこんなことならない。
「抜いてなかったのかよ」
師匠にも笑われた。
「ウィルマさん怖くて……」
「……ああ……」
0
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
主神の祝福
かすがみずほ@11/15コミカライズ開始
BL
褐色の肌と琥珀色の瞳を持つ有能な兵士ヴィクトルは、王都を警備する神殿騎士団の一員だった。
神々に感謝を捧げる春祭りの日、美しい白髪の青年に出会ってから、彼の運命は一変し――。
ドSな触手男(一応、主神)に取り憑かれた強気な美青年の、悲喜こもごもの物語。
美麗な表紙は沢内サチヨ様に描いていただきました!!
https://www.pixiv.net/users/131210
https://mobile.twitter.com/sachiyo_happy
誠に有難うございました♡♡
本作は拙作「聖騎士の盾」シリーズの派生作品ですが、単品でも読めなくはないかと思います。
(「神々の祭日」で当て馬攻だったヴィクトルが受になっています)
脇カプの話が余りに長くなってしまったので申し訳ないのもあり、本編から独立しました。
冒頭に本編カプのラブシーンあり。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる