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7.番いがいるって、どんな気持ち?
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寝返りを打とうとして、そういえば今日は傍にガラがいるんだったと思い直し、レタはその場で目を開けた。みんなで集まって眠るのは安心感があるけれど、ちょっと動くと誰かにひれが当たりそうで窮屈でもある。そっと浮き上がってから伸びをして、まだ寝ていると思っていたガラがいないのに気づく。先に起きてしまったのかもしれない。
小さくあくびをしてから洞窟を出て、レタはふよふよと珊瑚礁を巡った。たまに珊瑚礁でかくれんぼをすると、レタはなかなか見つからなくて最後になりがちだ。赤い鱗のおかげで見つけにくいらしい。その次に見つかりにくいのがガラで、オレンジ色の鱗は元気の出る明るさだとレタは思う。
だからガラを探すときは、珊瑚にできるだけ近づいて見上げるようにして探したほうがわかりやすい。
「ガラ」
まだ洞窟の入り口から遠くないところにいたガラを見つけて、レタはぴゅいっと近づいた。おはようを交わしてからしばらく戯れるように追いかけっこをして、どちらからともなく海藻の原っぱに下りていく。ガラは貝を獲るのも上手だけれど、今日は海藻の朝ごはんにするらしい。
「ねえガラ、この前の……番いの話だけど」
もしゃもしゃと勢いよく海藻を食べているガラに、レタなりに考えたことを伝えてみる。
「僕はまだ、番いがほしいかどうかよくわからないけど……シューロに、番いがいるってどんな気持ちか、聞いてみるのはどうかな」
番いを探しに出ていきたいと伝えたら、きっとツァコもシューロも心配する。だからまずは、番いに対する気持ちを聞いてみるのがいいと思うのだ。ガラやレタには番いがいないから、どういうものかわからなくて質問する、というのはおかしくない。ツァコに聞いてみるのは何となく気がひけるけれど、シューロなら優しく話を聞いてくれそうな気もする。
レタの提案を聞いて考え込んでいる様子のガラの横で、摘み取った海藻を食べ進める。
「……レタも、一緒に行ってくれる?」
「うん」
頷いたレタに少し安心したのか、ガラがにっこり笑ってまた海藻を食べ始めた。遅れないようにもぐもぐ食べて、二人連れ立って今度はシューロを探す。シューロは青い鱗だから、上から探したほうが見つけやすい。
「レタは、自分の番いを探してみたいって思わないの?」
「あんまり……ぴんとこなくて……」
「私もはっきりわかるわけじゃないけど……自分の番いは探してみたいって思うけどなぁ」
そんなに番いがいるのはいいことなのだろうか。
レタの親は、レタが覚えている限りでは父親のほうしかいなかったし、母親は一度情を交わしたらまたどこかに行ってしまったそうだから、番いに対する憧れのようなものは湧いてこない。ツァコとシューロはとても仲がいいけれど、自分もそうなりたいと思ったことはないし、レタはのんびり暮らしているほうが性に合っている気がしてしまうのだ。
どちらかというと、もしかしたらガラがここを出ていってしまうかもしれないことのほうが、寂しいし嫌だと思ってしまう。
「シューロいた」
珊瑚の間にシューロの青色が見えて、レタとガラは緩いらせんを描きながら降りていった。
シューロはもう朝ごはんを終えて、珊瑚礁の見回りをしているようだ。珊瑚礁から離れたところはツァコが見回りに行くけれど、珊瑚礁の中の異常だったり、弱った魚がいたりしないかはシューロの分担だ。きちんと普段から綺麗にしておかないと、においを嗅ぎつけてサメやシャチが寄ってきてしまう。
「ガラ、レタ、どうかした?」
シューロの傍に二人で降りたものの、ガラが話し出す様子がない。横目で見てみると何だかもじもじしていて、困っているようにも感じられる。シューロだって二人が来ても、何も言ってくれなかったらどうしたらいいかわからないだろう。
変なの、とレタは首を傾げ、シューロの腕にまとわりついた。
「あのね、番いがいるってどんな感じ?」
レタを見下ろしているシューロが、ぱちぱちと瞬きをする。質問の仕方がいけなかっただろうか。
「ツァコのことを聞きたいの?」
ううん、と首を振ってはみたものの、どう説明したらいいかわからず、レタはちょっと口を尖らせた。確かにシューロの番いはツァコだけれど、ツァコのことを聞きたいのではなくて、番いとはどういうものかを知りたいのだ。
「ツァコのことじゃなくて……番いって、どういう感じなのか知りたくて」
レタがくっついているのと反対の腕に、ガラがくっついてシューロを見上げる。二人を見比べて、シューロが困ったように笑った。
「番いがどういう感じなのか、かぁ……」
頷いて二人でシューロの前に並ぶと、レタとガラの頭をシューロが撫でてくれた。撫でてくれるのは嬉しいけれど、子供扱いされている感じなのはちょっと嫌だ。
ぷるぷる首を振ったらシューロにまた笑われて、レタは鼻にしわを寄せた。その横で、ガラもくすくす笑っている。ガラも同じように子供扱いされていたはずなのに、どうしてレタだけ笑われているのだろう。
首を捻ったレタをまた撫でながら、シューロが優しい顔をする。
「一緒にいるととても幸せなのが、番いかなぁ」
みんなでいるだけでもレタは幸せな気がするけれど、シューロは違うのだろうか。
レタが首を傾げる横で、ガラがくるりと身を翻した。
「番いってやっぱり特別?」
「うん、特別だよ」
レタにはぴんとこなかったのだけれど、ガラには何か通じるものがあったようだった。
小さくあくびをしてから洞窟を出て、レタはふよふよと珊瑚礁を巡った。たまに珊瑚礁でかくれんぼをすると、レタはなかなか見つからなくて最後になりがちだ。赤い鱗のおかげで見つけにくいらしい。その次に見つかりにくいのがガラで、オレンジ色の鱗は元気の出る明るさだとレタは思う。
だからガラを探すときは、珊瑚にできるだけ近づいて見上げるようにして探したほうがわかりやすい。
「ガラ」
まだ洞窟の入り口から遠くないところにいたガラを見つけて、レタはぴゅいっと近づいた。おはようを交わしてからしばらく戯れるように追いかけっこをして、どちらからともなく海藻の原っぱに下りていく。ガラは貝を獲るのも上手だけれど、今日は海藻の朝ごはんにするらしい。
「ねえガラ、この前の……番いの話だけど」
もしゃもしゃと勢いよく海藻を食べているガラに、レタなりに考えたことを伝えてみる。
「僕はまだ、番いがほしいかどうかよくわからないけど……シューロに、番いがいるってどんな気持ちか、聞いてみるのはどうかな」
番いを探しに出ていきたいと伝えたら、きっとツァコもシューロも心配する。だからまずは、番いに対する気持ちを聞いてみるのがいいと思うのだ。ガラやレタには番いがいないから、どういうものかわからなくて質問する、というのはおかしくない。ツァコに聞いてみるのは何となく気がひけるけれど、シューロなら優しく話を聞いてくれそうな気もする。
レタの提案を聞いて考え込んでいる様子のガラの横で、摘み取った海藻を食べ進める。
「……レタも、一緒に行ってくれる?」
「うん」
頷いたレタに少し安心したのか、ガラがにっこり笑ってまた海藻を食べ始めた。遅れないようにもぐもぐ食べて、二人連れ立って今度はシューロを探す。シューロは青い鱗だから、上から探したほうが見つけやすい。
「レタは、自分の番いを探してみたいって思わないの?」
「あんまり……ぴんとこなくて……」
「私もはっきりわかるわけじゃないけど……自分の番いは探してみたいって思うけどなぁ」
そんなに番いがいるのはいいことなのだろうか。
レタの親は、レタが覚えている限りでは父親のほうしかいなかったし、母親は一度情を交わしたらまたどこかに行ってしまったそうだから、番いに対する憧れのようなものは湧いてこない。ツァコとシューロはとても仲がいいけれど、自分もそうなりたいと思ったことはないし、レタはのんびり暮らしているほうが性に合っている気がしてしまうのだ。
どちらかというと、もしかしたらガラがここを出ていってしまうかもしれないことのほうが、寂しいし嫌だと思ってしまう。
「シューロいた」
珊瑚の間にシューロの青色が見えて、レタとガラは緩いらせんを描きながら降りていった。
シューロはもう朝ごはんを終えて、珊瑚礁の見回りをしているようだ。珊瑚礁から離れたところはツァコが見回りに行くけれど、珊瑚礁の中の異常だったり、弱った魚がいたりしないかはシューロの分担だ。きちんと普段から綺麗にしておかないと、においを嗅ぎつけてサメやシャチが寄ってきてしまう。
「ガラ、レタ、どうかした?」
シューロの傍に二人で降りたものの、ガラが話し出す様子がない。横目で見てみると何だかもじもじしていて、困っているようにも感じられる。シューロだって二人が来ても、何も言ってくれなかったらどうしたらいいかわからないだろう。
変なの、とレタは首を傾げ、シューロの腕にまとわりついた。
「あのね、番いがいるってどんな感じ?」
レタを見下ろしているシューロが、ぱちぱちと瞬きをする。質問の仕方がいけなかっただろうか。
「ツァコのことを聞きたいの?」
ううん、と首を振ってはみたものの、どう説明したらいいかわからず、レタはちょっと口を尖らせた。確かにシューロの番いはツァコだけれど、ツァコのことを聞きたいのではなくて、番いとはどういうものかを知りたいのだ。
「ツァコのことじゃなくて……番いって、どういう感じなのか知りたくて」
レタがくっついているのと反対の腕に、ガラがくっついてシューロを見上げる。二人を見比べて、シューロが困ったように笑った。
「番いがどういう感じなのか、かぁ……」
頷いて二人でシューロの前に並ぶと、レタとガラの頭をシューロが撫でてくれた。撫でてくれるのは嬉しいけれど、子供扱いされている感じなのはちょっと嫌だ。
ぷるぷる首を振ったらシューロにまた笑われて、レタは鼻にしわを寄せた。その横で、ガラもくすくす笑っている。ガラも同じように子供扱いされていたはずなのに、どうしてレタだけ笑われているのだろう。
首を捻ったレタをまた撫でながら、シューロが優しい顔をする。
「一緒にいるととても幸せなのが、番いかなぁ」
みんなでいるだけでもレタは幸せな気がするけれど、シューロは違うのだろうか。
レタが首を傾げる横で、ガラがくるりと身を翻した。
「番いってやっぱり特別?」
「うん、特別だよ」
レタにはぴんとこなかったのだけれど、ガラには何か通じるものがあったようだった。
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