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ヒースとの日々は驚きに満ち
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「日が眩しいわね、ヒース」
日傘を左手に、手鏡を右手に持ったアンナは目を細めた。 ヒースは王宮から出ると嬉しげに駆け回った。その二人の後ろにバルザックが控えめに着いてくる。
「ヒース、待って! もう! 困った犬!」
アンナは言いながらも走る気配はない。マイペースに歩いて行く。緑の鮮やかな庭木が綺麗に刈られて通路を作っていた。昨日歩いた所を過ぎ、ヒースに着いて薔薇園へと進むアンナ。
赤、ピンク、白、黄色、様々な色の薔薇が秩序ある配列で植えられている。
「毎朝この薔薇を私の部屋に持ってきてるのね」
部屋で見る薔薇は薔薇で美しいが、陽の光を浴びて咲き誇る薔薇はたしかにそれ以上に美しく見えた。
「なんだかいい香り」
「そうでしょう。花には香りがあります。薔薇も種類によって香りが違うんですよ!」
ヒースの言葉に「そうなの?」と興味を示したアンナは薔薇の花に近づいて行く。日傘が邪魔に思えてアンナがバルザックに預けると、
「姫、薔薇には棘がありますゆえ、お気をつけください」
バルザックが言った。アンナは恐る恐る薔薇の花に鼻を埋めた。
「うーん、いい香りね。高貴でいて瑞々しい。こちらの白の薔薇はどうかしら」
アンナはそれぞれの色の薔薇の香りを香っていく。
「あら、こちらは可愛らしい香りね。本当に香りが違うわ。それによく見ると花びらのつき方や葉の形も違うのね」
ヒースは嬉しそうに頷く。バルザックは薔薇にそこまで興味はなかったが、アンナが楽しそうなのを見るとつい気になって同じように香りを嗅いでいた。
アンナは手鏡に薔薇と自分を映してうっとりしている。
「綺麗な薔薇に囲まれたアンナ、やっぱり美しいわ」
バルザックは、そんなアンナの幸せそうな笑顔に、自分まで幸せな気持ちになり驚いた。今まで見たアンナの笑顔とはどこか違う。この日のアンナが一番綺麗に見えた。
日傘を左手に、手鏡を右手に持ったアンナは目を細めた。 ヒースは王宮から出ると嬉しげに駆け回った。その二人の後ろにバルザックが控えめに着いてくる。
「ヒース、待って! もう! 困った犬!」
アンナは言いながらも走る気配はない。マイペースに歩いて行く。緑の鮮やかな庭木が綺麗に刈られて通路を作っていた。昨日歩いた所を過ぎ、ヒースに着いて薔薇園へと進むアンナ。
赤、ピンク、白、黄色、様々な色の薔薇が秩序ある配列で植えられている。
「毎朝この薔薇を私の部屋に持ってきてるのね」
部屋で見る薔薇は薔薇で美しいが、陽の光を浴びて咲き誇る薔薇はたしかにそれ以上に美しく見えた。
「なんだかいい香り」
「そうでしょう。花には香りがあります。薔薇も種類によって香りが違うんですよ!」
ヒースの言葉に「そうなの?」と興味を示したアンナは薔薇の花に近づいて行く。日傘が邪魔に思えてアンナがバルザックに預けると、
「姫、薔薇には棘がありますゆえ、お気をつけください」
バルザックが言った。アンナは恐る恐る薔薇の花に鼻を埋めた。
「うーん、いい香りね。高貴でいて瑞々しい。こちらの白の薔薇はどうかしら」
アンナはそれぞれの色の薔薇の香りを香っていく。
「あら、こちらは可愛らしい香りね。本当に香りが違うわ。それによく見ると花びらのつき方や葉の形も違うのね」
ヒースは嬉しそうに頷く。バルザックは薔薇にそこまで興味はなかったが、アンナが楽しそうなのを見るとつい気になって同じように香りを嗅いでいた。
アンナは手鏡に薔薇と自分を映してうっとりしている。
「綺麗な薔薇に囲まれたアンナ、やっぱり美しいわ」
バルザックは、そんなアンナの幸せそうな笑顔に、自分まで幸せな気持ちになり驚いた。今まで見たアンナの笑顔とはどこか違う。この日のアンナが一番綺麗に見えた。
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