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第一章 悪役王女になりまして
33. 霊峰の巫女姫 3
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「さすがに怪我してると動きにくいのよね~」
そう言いながら、彼女は回復魔法ですべての怪我や傷を治す。
腕も足も治ったので、万全の状態で戦える。
「それじゃあ、行くわよ?」
巫女姫は、男に斬りかかる。その男は転移で避けるが、そんなのは関係ないとばかりに、高速で移動して斬りかかった。
だが、ギリギリ致命傷は避けていたので、少し傷がついただけだった。
「へぇ~。幹部クラスなのは本当っぽいわね。じゃあ、もうちょっと本気だそうかな」
そう言うと、彼女は更に早く動き出す。彼女がよく使っていたスピードスター。
使いなれているので、怪我しないように威力を調整できる。
そして、相手の魔法攻撃を避けながら、残り5メートルくらいまで近づいたら、剣を振った。どう考えても届かない距離だが、剣から光の斬撃が飛んでくる。
これは、巫女姫がよく使っていた戦法。魔力をこめて、その魔力を剣に乗せることで、魔力が刃のように飛んでいくので、魔法を放つよりも魔力消費が少なく、魔力量の割には威力も高くなる。
別に、100メートル以上先からでも届くが、近づいたのは、確実に当てるため。遠くからやると、当たる前に避けられるからだ。
「うぐっ!」
飛んだ斬撃は当たったが、幹部クラスは、聖剣の斬撃を飛ばすくらいでは死なない。
「一瞬でも隙を見せてくれてありがとう。転移が使えるのはあんただけじゃないの」
体に傷つけられたことで、男の意識は斬られた体に向かっていた。
その隙に、彼女は男の目の前まで転移して、男の胸に左手を当てる。
「今のこの子の魔力量では一発が限界だったのよね。この距離なら避けられないわよ?」
彼女がそう言うと、胸に当てられた左手が輝き出す。
「ホーリー・サン」
彼女がそう言うと、左手を中心にして太陽のように光りだした。
そして、その光がおさまると、そこには一人の少女があくびしながら浮いているだけで、男の姿はどこにもない。
三人を閉じ込めていた結界も消えた。これで、あの男が死んだことが証明された。
「僕たちも消されるかと思ったよ、あれ」
「隔離の陣の中にいなかったら消されただろうな」
「手加減してあげたのよ?あなた達が消えると困るもの」
「「「!!」」」
後ろから声が聞こえて、三人が振り返ると、そこには巫女姫と呼ばれた存在がいる。
「あなた達は手出ししてないしね。そのまま何もしなければ私は何もしないわ」
彼女は、もう何度目かもわからないくらいにあくびをしている。
とうとう目まで擦り始めた。
「眠いんですか?」
「だって、いくら血が繋がっているとはいえ、私の体じゃないから、動かすだけでも疲れるのよ」
またあくびして、持っているのも疲れるし、もういらないかと、持っている剣を消した。
完全に気が抜けているが、手をだせばさっきの男の二の舞になるのは理解しているので、三人とも手は出さない。
「それで、なんでご主人さまの体の中にいるの?」
「そんなこと言うわけないでしょ。私は闇の眷族は信用してないの。手出ししてないし、この子が困るかもしれないから、殺さないだけよ」
それは、手出しするなら始末すると見てとれる。幹部クラスを瞬殺した彼女の機嫌を損ねれば、文字通り消されるのは理解しているので、とりあえず、今は巫女の娘のエルルーアは殺さないことにした。
「そろそろ時間切れだから、私は寝るけど、私のことはエルちゃんには話さないでね」
「なんで?」
「第二の巫女姫になってほしくないから……かな。じゃあ、多分すぐに起きると思うけど、おやすみ」
そう言ってすぐに、彼女はその場に寝転がって、目を閉じて眠ってしまった。
そして、すぐに目を開ける。
「ふわぁ……あれ?あいつと戦ってて、心臓を刺されたと思ったんだけど……」
彼女が自分の体を確認するが、傷跡はない。だが、服は破れている。破れている場所には、血も染みている。
「ご主人さま、起きましたか」
「あれ?あんた達、閉じ込められてなかったっけ?」
「ご主人さまがあいつを殺しちゃったから、結界が消えたんですよ」
自分が闇の眷族を倒した。そう言われても、まったく記憶にない。魔力が切れそうなところで、黒い槍のようなもので刺されたところまでしか覚えていない。
違和感があるとすれば、最後の記憶までのときと比べて、魔力が減っているような感覚と、やけに体が疲れていることくらいだ。
(そういえば、腕も足も治ってるな)
足は、激痛が走るほどの怪我を、そして、腕は魔法を使わなければ動かせなかった。
それが、普通に動かせる。
今までのは全部夢だった。そう言われた方が納得するくらいには、不審な点が多い。
「それよりご主人さま。お城に戻らなくていいのか?」
ルカにそう言われて、彩花は、はっとなる。今は、おそらく晩餐が用意されているであろう時間帯だ。
早く帰らなければ、説教どころではすまないかもしれない。
「ご飯抜きは困るんだよー!」
彩花は、疲れなんて知らないように、残っている魔力で強化して、城の方に走っていった。
そう言いながら、彼女は回復魔法ですべての怪我や傷を治す。
腕も足も治ったので、万全の状態で戦える。
「それじゃあ、行くわよ?」
巫女姫は、男に斬りかかる。その男は転移で避けるが、そんなのは関係ないとばかりに、高速で移動して斬りかかった。
だが、ギリギリ致命傷は避けていたので、少し傷がついただけだった。
「へぇ~。幹部クラスなのは本当っぽいわね。じゃあ、もうちょっと本気だそうかな」
そう言うと、彼女は更に早く動き出す。彼女がよく使っていたスピードスター。
使いなれているので、怪我しないように威力を調整できる。
そして、相手の魔法攻撃を避けながら、残り5メートルくらいまで近づいたら、剣を振った。どう考えても届かない距離だが、剣から光の斬撃が飛んでくる。
これは、巫女姫がよく使っていた戦法。魔力をこめて、その魔力を剣に乗せることで、魔力が刃のように飛んでいくので、魔法を放つよりも魔力消費が少なく、魔力量の割には威力も高くなる。
別に、100メートル以上先からでも届くが、近づいたのは、確実に当てるため。遠くからやると、当たる前に避けられるからだ。
「うぐっ!」
飛んだ斬撃は当たったが、幹部クラスは、聖剣の斬撃を飛ばすくらいでは死なない。
「一瞬でも隙を見せてくれてありがとう。転移が使えるのはあんただけじゃないの」
体に傷つけられたことで、男の意識は斬られた体に向かっていた。
その隙に、彼女は男の目の前まで転移して、男の胸に左手を当てる。
「今のこの子の魔力量では一発が限界だったのよね。この距離なら避けられないわよ?」
彼女がそう言うと、胸に当てられた左手が輝き出す。
「ホーリー・サン」
彼女がそう言うと、左手を中心にして太陽のように光りだした。
そして、その光がおさまると、そこには一人の少女があくびしながら浮いているだけで、男の姿はどこにもない。
三人を閉じ込めていた結界も消えた。これで、あの男が死んだことが証明された。
「僕たちも消されるかと思ったよ、あれ」
「隔離の陣の中にいなかったら消されただろうな」
「手加減してあげたのよ?あなた達が消えると困るもの」
「「「!!」」」
後ろから声が聞こえて、三人が振り返ると、そこには巫女姫と呼ばれた存在がいる。
「あなた達は手出ししてないしね。そのまま何もしなければ私は何もしないわ」
彼女は、もう何度目かもわからないくらいにあくびをしている。
とうとう目まで擦り始めた。
「眠いんですか?」
「だって、いくら血が繋がっているとはいえ、私の体じゃないから、動かすだけでも疲れるのよ」
またあくびして、持っているのも疲れるし、もういらないかと、持っている剣を消した。
完全に気が抜けているが、手をだせばさっきの男の二の舞になるのは理解しているので、三人とも手は出さない。
「それで、なんでご主人さまの体の中にいるの?」
「そんなこと言うわけないでしょ。私は闇の眷族は信用してないの。手出ししてないし、この子が困るかもしれないから、殺さないだけよ」
それは、手出しするなら始末すると見てとれる。幹部クラスを瞬殺した彼女の機嫌を損ねれば、文字通り消されるのは理解しているので、とりあえず、今は巫女の娘のエルルーアは殺さないことにした。
「そろそろ時間切れだから、私は寝るけど、私のことはエルちゃんには話さないでね」
「なんで?」
「第二の巫女姫になってほしくないから……かな。じゃあ、多分すぐに起きると思うけど、おやすみ」
そう言ってすぐに、彼女はその場に寝転がって、目を閉じて眠ってしまった。
そして、すぐに目を開ける。
「ふわぁ……あれ?あいつと戦ってて、心臓を刺されたと思ったんだけど……」
彼女が自分の体を確認するが、傷跡はない。だが、服は破れている。破れている場所には、血も染みている。
「ご主人さま、起きましたか」
「あれ?あんた達、閉じ込められてなかったっけ?」
「ご主人さまがあいつを殺しちゃったから、結界が消えたんですよ」
自分が闇の眷族を倒した。そう言われても、まったく記憶にない。魔力が切れそうなところで、黒い槍のようなもので刺されたところまでしか覚えていない。
違和感があるとすれば、最後の記憶までのときと比べて、魔力が減っているような感覚と、やけに体が疲れていることくらいだ。
(そういえば、腕も足も治ってるな)
足は、激痛が走るほどの怪我を、そして、腕は魔法を使わなければ動かせなかった。
それが、普通に動かせる。
今までのは全部夢だった。そう言われた方が納得するくらいには、不審な点が多い。
「それよりご主人さま。お城に戻らなくていいのか?」
ルカにそう言われて、彩花は、はっとなる。今は、おそらく晩餐が用意されているであろう時間帯だ。
早く帰らなければ、説教どころではすまないかもしれない。
「ご飯抜きは困るんだよー!」
彩花は、疲れなんて知らないように、残っている魔力で強化して、城の方に走っていった。
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