17 / 50
第一章 悪役王女になりまして
16. それは、ちょっとした違和感
しおりを挟む
アルフォンスに聞いてみることにしたものの、それまでは暇なので、書類整理をしておく。
あの書類を書いたのがエルルーアだとバレてから、アルフォンスにやっておけと言われているからだ。
(人使いが荒いなぁ、あの王子さまは!)
フラストレーションはもうかなり溜まっている。冷静でいられるのが不思議なくらいだ。いつ爆発してもおかしくない。
爆発しないのは、爆発したら一気に前までのエルルーアに逆戻りだからだ。今までのことが水の泡になってしまうので、ぎりぎり導火線に火がつかない。今にも着火しそうだが。
「……うん?」
5枚ほどまとめて、次をやろうとしたところで、手に取った書類に意識が行った。
内容としては、そんなにおかしくない。設備の改善だ。フレイマーの調子がおかしいので、修理してほしいというもの。
フレイマーは、彩花の国でいう、ストーブや、ヒーターのようなものだ。それで、少し違和感を覚えた。
(今の時期にフレイマー?もうすぐ梅雨なのに)
日本で作られた乙女ゲームだからか、この世界には四季が存在する。日本と同じように、梅雨も。
エアコン──こちらでは、アイシクルという冷却装置──ならおかしくないが、今の時期にフレイマーはおかしくないだろうか。
なぜなら、梅雨が終われば夏になるからだ。
壊れているから、直しておいてという文体ならわからなくもなかったが、今すぐに直してほしいと書いてある。
(アルフォンスがこんな間抜けなものに引っかかるのかしら?)
少し考えれば、おかしなことを書いてあることくらいはわかる。
以前のエルルーアよりも、アルフォンスは賢かった。彩花に口で勝てるくらいなのだから、彩花よりも賢いであろうことは想像がつく。自分でも気づいたのだから、アルフォンスが気づかないとは思えなかった。
(もし引っかかったとして、何が目的なのかしらね。アルフォンスのサインがほしいんでしょうけど……何かを大々的にやろうとしている?)
ここの生徒会長で、王子でもあるアルフォンスが許可したら、止めることは難しい。自分も、サインをしたことには間違いないので、アルフォンスが止めるのも難しい。
とりあえず、書いていた通りにまとめておいて、違和感があるということもメモにして置いておいた。小さい紙がなかったので、白紙をちぎって。
(ちょっとだけ、見に行ってみる?)
書き終わった書類は、見張りでもあるアランに渡して、彩花は窓の外をみる。少し曇り空で、外には人が見当たらなかった。
彩花は、音をたてないように注意して、見開きの窓を開ける。そして、窓の枠に足をかけた。
そして、再び後ろをチラッと見たあと、彩花は、保険のために、魔力を纏って、身体を守ったあと、サッシに手を乗せて、足を降ろし、サッシに腰かけるような形になり、さらに腰を降ろして、手でぶら下がっているような感じになった。
彩花は、落ちないように手を魔力で強化する。
そして、指を使って、横に移動し、端まで移動したあと、柱に捕まる。後は、捕まりながら上り棒のように降りていった。
(意外と、思うように体が動いたわね)
アクション子役としての知識や経験を元に動いただけなので、そんな行動をしたことがないエルルーアは、うまく体が動かないと思った。だからこそ、保険として、魔力を纏って、防御していた。
それが自分の思う通りに動いてくれたので、怪我一つなく、地上に降り立つことができた。
(この外見だと気づかれるかもなぁ)
そう思った彩花は、服についているリボンをほどき、一本の紐にしたあと、髪を結んだ。
そして、黒色の元になる、ユーメラニンを魔法で増やした。回復魔法の応用だ。本来、癒しは、傷口を塞いだりするくらいで、新たに再生させるのは、よほどの腕でないと難しい。
エルルーアの魔力は強いので、彩花の想像力と合わさり、あっさりと応用の魔法を使ってしまった。
これで、今の髪色は、栗色から、さらに暗いダークブラウンになった。
ここまで変わっていれば、よほどでない限りは、エルルーアだと気づかれないだろう。
彩花は、先ほどの書類について調べるために、魔道具の保管場所に向かった。
あの書類を書いたのがエルルーアだとバレてから、アルフォンスにやっておけと言われているからだ。
(人使いが荒いなぁ、あの王子さまは!)
フラストレーションはもうかなり溜まっている。冷静でいられるのが不思議なくらいだ。いつ爆発してもおかしくない。
爆発しないのは、爆発したら一気に前までのエルルーアに逆戻りだからだ。今までのことが水の泡になってしまうので、ぎりぎり導火線に火がつかない。今にも着火しそうだが。
「……うん?」
5枚ほどまとめて、次をやろうとしたところで、手に取った書類に意識が行った。
内容としては、そんなにおかしくない。設備の改善だ。フレイマーの調子がおかしいので、修理してほしいというもの。
フレイマーは、彩花の国でいう、ストーブや、ヒーターのようなものだ。それで、少し違和感を覚えた。
(今の時期にフレイマー?もうすぐ梅雨なのに)
日本で作られた乙女ゲームだからか、この世界には四季が存在する。日本と同じように、梅雨も。
エアコン──こちらでは、アイシクルという冷却装置──ならおかしくないが、今の時期にフレイマーはおかしくないだろうか。
なぜなら、梅雨が終われば夏になるからだ。
壊れているから、直しておいてという文体ならわからなくもなかったが、今すぐに直してほしいと書いてある。
(アルフォンスがこんな間抜けなものに引っかかるのかしら?)
少し考えれば、おかしなことを書いてあることくらいはわかる。
以前のエルルーアよりも、アルフォンスは賢かった。彩花に口で勝てるくらいなのだから、彩花よりも賢いであろうことは想像がつく。自分でも気づいたのだから、アルフォンスが気づかないとは思えなかった。
(もし引っかかったとして、何が目的なのかしらね。アルフォンスのサインがほしいんでしょうけど……何かを大々的にやろうとしている?)
ここの生徒会長で、王子でもあるアルフォンスが許可したら、止めることは難しい。自分も、サインをしたことには間違いないので、アルフォンスが止めるのも難しい。
とりあえず、書いていた通りにまとめておいて、違和感があるということもメモにして置いておいた。小さい紙がなかったので、白紙をちぎって。
(ちょっとだけ、見に行ってみる?)
書き終わった書類は、見張りでもあるアランに渡して、彩花は窓の外をみる。少し曇り空で、外には人が見当たらなかった。
彩花は、音をたてないように注意して、見開きの窓を開ける。そして、窓の枠に足をかけた。
そして、再び後ろをチラッと見たあと、彩花は、保険のために、魔力を纏って、身体を守ったあと、サッシに手を乗せて、足を降ろし、サッシに腰かけるような形になり、さらに腰を降ろして、手でぶら下がっているような感じになった。
彩花は、落ちないように手を魔力で強化する。
そして、指を使って、横に移動し、端まで移動したあと、柱に捕まる。後は、捕まりながら上り棒のように降りていった。
(意外と、思うように体が動いたわね)
アクション子役としての知識や経験を元に動いただけなので、そんな行動をしたことがないエルルーアは、うまく体が動かないと思った。だからこそ、保険として、魔力を纏って、防御していた。
それが自分の思う通りに動いてくれたので、怪我一つなく、地上に降り立つことができた。
(この外見だと気づかれるかもなぁ)
そう思った彩花は、服についているリボンをほどき、一本の紐にしたあと、髪を結んだ。
そして、黒色の元になる、ユーメラニンを魔法で増やした。回復魔法の応用だ。本来、癒しは、傷口を塞いだりするくらいで、新たに再生させるのは、よほどの腕でないと難しい。
エルルーアの魔力は強いので、彩花の想像力と合わさり、あっさりと応用の魔法を使ってしまった。
これで、今の髪色は、栗色から、さらに暗いダークブラウンになった。
ここまで変わっていれば、よほどでない限りは、エルルーアだと気づかれないだろう。
彩花は、先ほどの書類について調べるために、魔道具の保管場所に向かった。
23
お気に入りに追加
3,562
あなたにおすすめの小説
転生悪役令嬢、物語の動きに逆らっていたら運命の番発見!?
下菊みこと
恋愛
世界でも獣人族と人族が手を取り合って暮らす国、アルヴィア王国。その筆頭公爵家に生まれたのが主人公、エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌだった。わがまま放題に育っていた彼女は、しかしある日突然原因不明の頭痛に見舞われ数日間寝込み、ようやく落ち着いた時には別人のように良い子になっていた。
エリアーヌは、前世の記憶を思い出したのである。その記憶が正しければ、この世界はエリアーヌのやり込んでいた乙女ゲームの世界。そして、エリアーヌは人族の平民出身である聖女…つまりヒロインを虐めて、規律の厳しい問題児だらけの修道院に送られる悪役令嬢だった!
なんとか方向を変えようと、あれやこれやと動いている間に獣人族である彼女は、運命の番を発見!?そして、孤児だった人族の番を連れて帰りなんやかんやとお世話することに。
果たしてエリアーヌは運命の番を幸せに出来るのか。
そしてエリアーヌ自身の明日はどっちだ!?
小説家になろう様でも投稿しています。
【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?
氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!
気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、
「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。
しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。
なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。
そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります!
✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!
Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜!
【第2章スタート】【第1章完結約30万字】
王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。
主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。
それは、54歳主婦の記憶だった。
その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。
異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。
領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。
1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します!
2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ
恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。
<<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>
男爵令嬢は王太子様と結ばれたい(演技)
藤浪保
恋愛
悪役令嬢ものあるあるの残念ヒロインが、実は普通の令嬢(非転生)の演技だったら……というお話です。
兄の借金により好色ジジイに嫁がなければならなくなったソフィア。そこに王太子の友人になれば借金を肩代わりしてくれるという提案がなされる。だが「友人」とは王太子の婚約者を嫉妬させる「当て馬」のことだった。ソフィアは王太子の作った「計画書」通りに友人役を演じていくが……。
第15回恋愛小説大賞で奨励賞を頂きました
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
悪役令嬢なのに下町にいます ~王子が婚約解消してくれません~
ミズメ
恋愛
【2023.5.31書籍発売】
転生先は、乙女ゲームの悪役令嬢でした——。
侯爵令嬢のベラトリクスは、わがまま放題、傍若無人な少女だった。
婚約者である第1王子が他の令嬢と親しげにしていることに激高して暴れた所、割った花瓶で足を滑らせて頭を打ち、意識を失ってしまった。
目を覚ましたベラトリクスの中には前世の記憶が混在していて--。
卒業パーティーでの婚約破棄&王都追放&実家の取り潰しという定番3点セットを回避するため、社交界から逃げた悪役令嬢は、王都の下町で、メンチカツに出会ったのだった。
○『モブなのに巻き込まれています』のスピンオフ作品ですが、単独でも読んでいただけます。
○転生悪役令嬢が婚約解消と断罪回避のために奮闘?しながら、下町食堂の美味しいものに夢中になったり、逆に婚約者に興味を持たれたりしてしまうお話。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる