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1 幸せな第二の人生……だったのに
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恋愛の予定ですが、ファンタジー色が強くなるかもしれません。
完全不定期です。気が向いたら投稿します。
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リリー・マクレスタ。それは、私が転生した者の名前である。
私は、一国の第一王女様として生を受けた。生まれたばかりの時は、当たり前なんだけど、産声しかあげられなくて、わけがわからなくて泣いていた覚えがある。
でも、さすがに五年も経つと慣れてくるもので、第二の人生を謳歌中!
そして、そんな第二の人生は、幸せの一言に尽きる。それは、この人の存在。
「お母さま。入ってもいいですか?」
私は、ドアをゆっくりと開け、そっと部屋の中を覗く。私は、まだ五歳。小さいのです。なので、ドアを開けるのも、思いっきり伸ばさないと届きません。
はめ殺しになっている窓から差し込む光が、お母さまの美しい金髪を照らす。
お母さまは、私に気づくと、にこりと微笑む。
「ええ。わたくしの可愛いリリー。お母さまのお膝においで」
「はーい!」
私は、ドアを完全に開けて、お母さまのほうに駆け出す。そして、思いきり抱きついた。お母さまは、手慣れた手つきで、私を膝の上に乗せる。
お母さまは、太陽の光を浴びているお陰か、ぽかぽかしていて暖かい。このまま眠ってしまいそうだ。
「リリーも大きくなったわね~。前はこれくらいだったのに」
お母さまは、指で大きさを表現する。それは、私の小さい手がつまめるくらいの小ささだった。
「そんなに小さくありません!」
私が抗議すると、お母さまはうふふと上品に笑う。お母さまは、この国の王妃なだけはあって、所作の一つ一つが美しい。でも、私の前ではこんなお茶目なところも見せる。最高のお母さまだ。
前世での私は、父子家庭だった。お父さんはとても優しかったけど、どうしても母親というのは、恋しくなってしまうもので。
生まれ変わるなら、優しいお母さんの元で暮らしたいと何度も願ったくらい。今世は、その願いが叶ったから、嬉しくて仕方ない。
でも、気になることが、ないとは言わないんだ。それは、父親の存在。
お母さまは、この国の王妃。それならば、当然、いるはずの男がいる。国王だ。
でも、私は全然見たことがない。最後に見たのは、私が生まれた日に、私にリリーという名前をつけた時が最後。赤ん坊の頃から記憶があるのに、一緒にご飯を食べるのも、お誕生日を祝ってくれるのも、プレゼントをくれるのも、みんなお母さまだけで……
国王だから忙しいのかなと思うけど、気になるものは気になる。
そんな疑問は、思ったよりも早く解けることとなった。
その日の夜中に、目が覚めてしまい、私は、お水でも飲もうかと、厨房に向かっていた。
厨房へと向かう道中には、お母さまの部屋がある。私は、もうお母さまは夢の中だろうと思っていたから、普通に通りすぎようとした。
でも、中から、ほんの僅かに聞こえた気がした。
「うっ……ひっく……」
しゃくりをあげているような声。そして、それを押し殺すようにしている。
私は、すぐに察した。お母さまが、泣いていると。
お母さまだって、人間だ。泣きたくなる時だってあるかもしれない。でも、普段のお母さまからは、全然想像ができなかった。
私は、すぐに道を引き返して、自分の部屋へと戻った。
その翌日、私は、夜中の出来事を話して、着替えを手伝いに来た侍女たちにお母さまが泣いていた理由の心当たりを聞いてみることにした。侍女たちは、話したがらなかったけど、私が必死に頼み込んで、どうにか教えてもらえた。
「陛下が、王妃殿下をお叱りになられまして……」
「王妃殿下が、父親としてリリー王女殿下と過ごしてほしいと何度も頼み込まれたので……」
「そんな無駄なことをする時間はない。くだらないことを何度も言ってくれるな、と……」
サリー、メアリー、ニアの順番で話してくれた。
私は、はっ?と怒りでいっぱいになった。その場に国王がいたら、顔面をぶん殴っていたかもしれない。
まだ、まだ何かお母さまに非があるようなことなら、私だってこんな風に思ったりはしない。
でも、でも!母親が娘のために、父親にその役割を求めるのは、当然の権利で、当然の思いじゃないか!それを、無駄なこと、くだらないと一蹴りするなんて!
私は、今にも叫びそうになる気持ちを堪えて、侍女たちに笑みを向ける。
「教えてくれてありがとう。お母さまには内緒にしておいてちょうだい。それじゃあ、仕事に戻って」
「「「は、はい」」」
侍女たちは、私に頭を下げて、部屋を出ていく。
私は、よろよろとベッドのほうに向かい、そのままベッドに倒れた。そして、王女にふさわしいふかふかのマットレスを殴りまくる。きっと、マットレスには、1ダメージも入っていないだろう。でも、殴らずにはいられない。
だって、全部わかったから。私が今まで、まったくと言っていいほど父親に会わなかった理由が。
父……いや、国王は、私のことなんて、どうでもよかったのだろう。生きてさえいれば、それでいいと思っている。所詮王女は、政略結婚の駒にしかならない。
それなら、そう扱ってくれればいい。私には、お母さまがいれば充分だ。だけど、あのお母さまを泣かせるような奴は、たとえ神でも許しはしない。
私がお母さまを幸せにしてみせる。私に与えてくれた幸せを、お母さまに何倍にもして返すんだから。
国王……あんたが入り込む余地なんて……与えない。
完全不定期です。気が向いたら投稿します。
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リリー・マクレスタ。それは、私が転生した者の名前である。
私は、一国の第一王女様として生を受けた。生まれたばかりの時は、当たり前なんだけど、産声しかあげられなくて、わけがわからなくて泣いていた覚えがある。
でも、さすがに五年も経つと慣れてくるもので、第二の人生を謳歌中!
そして、そんな第二の人生は、幸せの一言に尽きる。それは、この人の存在。
「お母さま。入ってもいいですか?」
私は、ドアをゆっくりと開け、そっと部屋の中を覗く。私は、まだ五歳。小さいのです。なので、ドアを開けるのも、思いっきり伸ばさないと届きません。
はめ殺しになっている窓から差し込む光が、お母さまの美しい金髪を照らす。
お母さまは、私に気づくと、にこりと微笑む。
「ええ。わたくしの可愛いリリー。お母さまのお膝においで」
「はーい!」
私は、ドアを完全に開けて、お母さまのほうに駆け出す。そして、思いきり抱きついた。お母さまは、手慣れた手つきで、私を膝の上に乗せる。
お母さまは、太陽の光を浴びているお陰か、ぽかぽかしていて暖かい。このまま眠ってしまいそうだ。
「リリーも大きくなったわね~。前はこれくらいだったのに」
お母さまは、指で大きさを表現する。それは、私の小さい手がつまめるくらいの小ささだった。
「そんなに小さくありません!」
私が抗議すると、お母さまはうふふと上品に笑う。お母さまは、この国の王妃なだけはあって、所作の一つ一つが美しい。でも、私の前ではこんなお茶目なところも見せる。最高のお母さまだ。
前世での私は、父子家庭だった。お父さんはとても優しかったけど、どうしても母親というのは、恋しくなってしまうもので。
生まれ変わるなら、優しいお母さんの元で暮らしたいと何度も願ったくらい。今世は、その願いが叶ったから、嬉しくて仕方ない。
でも、気になることが、ないとは言わないんだ。それは、父親の存在。
お母さまは、この国の王妃。それならば、当然、いるはずの男がいる。国王だ。
でも、私は全然見たことがない。最後に見たのは、私が生まれた日に、私にリリーという名前をつけた時が最後。赤ん坊の頃から記憶があるのに、一緒にご飯を食べるのも、お誕生日を祝ってくれるのも、プレゼントをくれるのも、みんなお母さまだけで……
国王だから忙しいのかなと思うけど、気になるものは気になる。
そんな疑問は、思ったよりも早く解けることとなった。
その日の夜中に、目が覚めてしまい、私は、お水でも飲もうかと、厨房に向かっていた。
厨房へと向かう道中には、お母さまの部屋がある。私は、もうお母さまは夢の中だろうと思っていたから、普通に通りすぎようとした。
でも、中から、ほんの僅かに聞こえた気がした。
「うっ……ひっく……」
しゃくりをあげているような声。そして、それを押し殺すようにしている。
私は、すぐに察した。お母さまが、泣いていると。
お母さまだって、人間だ。泣きたくなる時だってあるかもしれない。でも、普段のお母さまからは、全然想像ができなかった。
私は、すぐに道を引き返して、自分の部屋へと戻った。
その翌日、私は、夜中の出来事を話して、着替えを手伝いに来た侍女たちにお母さまが泣いていた理由の心当たりを聞いてみることにした。侍女たちは、話したがらなかったけど、私が必死に頼み込んで、どうにか教えてもらえた。
「陛下が、王妃殿下をお叱りになられまして……」
「王妃殿下が、父親としてリリー王女殿下と過ごしてほしいと何度も頼み込まれたので……」
「そんな無駄なことをする時間はない。くだらないことを何度も言ってくれるな、と……」
サリー、メアリー、ニアの順番で話してくれた。
私は、はっ?と怒りでいっぱいになった。その場に国王がいたら、顔面をぶん殴っていたかもしれない。
まだ、まだ何かお母さまに非があるようなことなら、私だってこんな風に思ったりはしない。
でも、でも!母親が娘のために、父親にその役割を求めるのは、当然の権利で、当然の思いじゃないか!それを、無駄なこと、くだらないと一蹴りするなんて!
私は、今にも叫びそうになる気持ちを堪えて、侍女たちに笑みを向ける。
「教えてくれてありがとう。お母さまには内緒にしておいてちょうだい。それじゃあ、仕事に戻って」
「「「は、はい」」」
侍女たちは、私に頭を下げて、部屋を出ていく。
私は、よろよろとベッドのほうに向かい、そのままベッドに倒れた。そして、王女にふさわしいふかふかのマットレスを殴りまくる。きっと、マットレスには、1ダメージも入っていないだろう。でも、殴らずにはいられない。
だって、全部わかったから。私が今まで、まったくと言っていいほど父親に会わなかった理由が。
父……いや、国王は、私のことなんて、どうでもよかったのだろう。生きてさえいれば、それでいいと思っている。所詮王女は、政略結婚の駒にしかならない。
それなら、そう扱ってくれればいい。私には、お母さまがいれば充分だ。だけど、あのお母さまを泣かせるような奴は、たとえ神でも許しはしない。
私がお母さまを幸せにしてみせる。私に与えてくれた幸せを、お母さまに何倍にもして返すんだから。
国王……あんたが入り込む余地なんて……与えない。
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