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7. ルミナーラ公爵家
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わたくしは、帝国へ向かうために、馬車に揺られております。
本来なら、五日はかかる行程ですが、転移魔術を何度も使用し、大幅に時間を短縮しているため、もう隣国の領土に入っておりました。
「エリス。良かったのか。どうしてもと言うならば、断ってくれてもよかったのだぞ」
「伯父さま……いえ、今日からは養父さまですわね。わたくしは大丈夫ですわ」
わたくしを心配してか、馬車で養父さまが話しかけてくれます。
養父さまは、あの国王陛下との謁見の後、すぐに馬車と共に迎えに来てくれました。
その瞳には、黄色いトパーズのような宝石眼が輝いています。
一年ぶりに再会したわたくしに、優しい眼を向けてくれるばかりか、わたくしの心情を察してか、ギリギリまで養父さまはお父さまとお話しさせてくれました。
そのお陰で、わたくしは心置きなく帝国に向かうことができているのですから、感謝こそすれ、後悔などあろうはずもありません。
「まず、君についての背景だが、覚えているか?」
「ええ。お母さまは、宝石眼を持っていなかったため、わたくしの瞳が宝石眼だとは思っておらず、報告していなかった。そして、養父さまはお母さまに花を手向けに来たときに、わたくしの瞳が養父さまと同じ輝きをしていて気づいた……でしたわね?」
「ああ。彼女は宝石眼の所有者である私や父上とはそこまで深く交流していなかった。それに、宝石眼は一般人が見ても、簡単には見分けがつかない。それで通るだろう」
「いえ、それで通しましょう。母の名誉は守らねば」
お母さまはきっと、わたくしを帝国の継承権争いに巻き込ませたくなかったため、わたくしの存在を隠していたのでしょう。
ですが、隣国である以上、帝国とまったく関わらないのは不可能です。わたくしには口だしてこなかっただけで、わたくしの瞳に気づいている存在は、きっと学園にもいたことでしょう。
「……二度とハワード卿と会うなとは言わない。もし会いたくなればいつでも言ってくれ。なるべく時間を取れるように努力しよう」
「はい、養父さま。屋敷に着いたら、手紙を認めることといたしますわ」
◇◇◇
しばらく馬車に揺られているうちに、わたくしたちはルミナーラ公爵邸へと到着いたしました。
公爵邸は、ハワード侯爵家の屋敷とは比べ物にならない規模で、小国の王宮と張り合えるのではと思えてしまうほどです。
わたくしたちが屋敷に入ると、使用人たちが出迎えてくれます。
「お帰りなさいませ、旦那さま。お嬢さま」
使用人たちは一斉にそう言って頭を下げました。
お嬢さまというのはわたくしのことでしょう。
外部も立派でしたが、屋敷の内部も立派でした。やはり、大国のハルムート帝国は違いますわね。
「お帰りなさいませ、エルハルトさま」
屋敷の奥のほうから、美しき夫人が歩いてきます。
顔を見たこともないわたくしでも、この方が公爵夫人であることはわかりました。
「ただいま戻った。この子が私の姪であるエリスだ。今日からこの公爵家の養女となる」
「そうですの。この子が……」
公爵夫人は、わたくしを見定めるかのように観察してきます。
わたくしは、帝国の礼である、左手でドレスの裾を軽くつまみ、右手を胸に当てて挨拶をしました。
「エリスと申します。これからよろしくお願いいたします、公爵夫人」
「あら、これから娘になるのですから、わたくしのことは養母さまとお呼びなさい」
「はい、養母さま」
どうやら、第一印象は悪く映らなかったようです。それだけでも、わたくしは一安心しました。
わたくしのことを娘と呼んでくれているのがその証拠でしょう。
気に入らないのであれば、わざわざ娘なんて言葉を使いたがらないでしょうから。
「わたくし、娘が欲しかったのよ。やっと来てくれて嬉しいわ。明日からはドレスを新調しましょうね」
「はい。ありがとうございます」
養父さまも、養母さまの反応に、少し安心しているみたいですわね。わたくしが養父さまの実子というわけではないことも大きいかもしれませんわね。
それに、わたくしの瞳のお陰で、血筋は確かではありますし。
「ここには、私の息子もいるのだが、今は学園に行っているから、帰ってきてから挨拶させよう。次は部屋の案内をさせるから、ゆっくりしてきなさい」
「はい、養父さま」
養父さまの言葉に反応するように、使用人がわたくしの部屋に案内してくれます。
そこには、すでに装飾も終えられている、女性の部屋がありました。
「もう部屋の用意を終えているの?」
案内してくれた使用人に聞いてみると、使用人はうなずき答えました。
「旦那さまと奥さまがいつでも迎えられるようにと、一年前から準備していたのですわ」
「まぁ……そうなの」
わたくしは、待たせてしまったことに少し申し訳なさがありながらも、こんなにも素敵な部屋を用意してくださった養父さまたちに感謝しました。
予定ではお父さまに手紙を認めるつもりでしたが、そんな体力は残っておらず、わたくしは湯浴みをして、ベッドに倒れ込むように眠りにつきました。
本来なら、五日はかかる行程ですが、転移魔術を何度も使用し、大幅に時間を短縮しているため、もう隣国の領土に入っておりました。
「エリス。良かったのか。どうしてもと言うならば、断ってくれてもよかったのだぞ」
「伯父さま……いえ、今日からは養父さまですわね。わたくしは大丈夫ですわ」
わたくしを心配してか、馬車で養父さまが話しかけてくれます。
養父さまは、あの国王陛下との謁見の後、すぐに馬車と共に迎えに来てくれました。
その瞳には、黄色いトパーズのような宝石眼が輝いています。
一年ぶりに再会したわたくしに、優しい眼を向けてくれるばかりか、わたくしの心情を察してか、ギリギリまで養父さまはお父さまとお話しさせてくれました。
そのお陰で、わたくしは心置きなく帝国に向かうことができているのですから、感謝こそすれ、後悔などあろうはずもありません。
「まず、君についての背景だが、覚えているか?」
「ええ。お母さまは、宝石眼を持っていなかったため、わたくしの瞳が宝石眼だとは思っておらず、報告していなかった。そして、養父さまはお母さまに花を手向けに来たときに、わたくしの瞳が養父さまと同じ輝きをしていて気づいた……でしたわね?」
「ああ。彼女は宝石眼の所有者である私や父上とはそこまで深く交流していなかった。それに、宝石眼は一般人が見ても、簡単には見分けがつかない。それで通るだろう」
「いえ、それで通しましょう。母の名誉は守らねば」
お母さまはきっと、わたくしを帝国の継承権争いに巻き込ませたくなかったため、わたくしの存在を隠していたのでしょう。
ですが、隣国である以上、帝国とまったく関わらないのは不可能です。わたくしには口だしてこなかっただけで、わたくしの瞳に気づいている存在は、きっと学園にもいたことでしょう。
「……二度とハワード卿と会うなとは言わない。もし会いたくなればいつでも言ってくれ。なるべく時間を取れるように努力しよう」
「はい、養父さま。屋敷に着いたら、手紙を認めることといたしますわ」
◇◇◇
しばらく馬車に揺られているうちに、わたくしたちはルミナーラ公爵邸へと到着いたしました。
公爵邸は、ハワード侯爵家の屋敷とは比べ物にならない規模で、小国の王宮と張り合えるのではと思えてしまうほどです。
わたくしたちが屋敷に入ると、使用人たちが出迎えてくれます。
「お帰りなさいませ、旦那さま。お嬢さま」
使用人たちは一斉にそう言って頭を下げました。
お嬢さまというのはわたくしのことでしょう。
外部も立派でしたが、屋敷の内部も立派でした。やはり、大国のハルムート帝国は違いますわね。
「お帰りなさいませ、エルハルトさま」
屋敷の奥のほうから、美しき夫人が歩いてきます。
顔を見たこともないわたくしでも、この方が公爵夫人であることはわかりました。
「ただいま戻った。この子が私の姪であるエリスだ。今日からこの公爵家の養女となる」
「そうですの。この子が……」
公爵夫人は、わたくしを見定めるかのように観察してきます。
わたくしは、帝国の礼である、左手でドレスの裾を軽くつまみ、右手を胸に当てて挨拶をしました。
「エリスと申します。これからよろしくお願いいたします、公爵夫人」
「あら、これから娘になるのですから、わたくしのことは養母さまとお呼びなさい」
「はい、養母さま」
どうやら、第一印象は悪く映らなかったようです。それだけでも、わたくしは一安心しました。
わたくしのことを娘と呼んでくれているのがその証拠でしょう。
気に入らないのであれば、わざわざ娘なんて言葉を使いたがらないでしょうから。
「わたくし、娘が欲しかったのよ。やっと来てくれて嬉しいわ。明日からはドレスを新調しましょうね」
「はい。ありがとうございます」
養父さまも、養母さまの反応に、少し安心しているみたいですわね。わたくしが養父さまの実子というわけではないことも大きいかもしれませんわね。
それに、わたくしの瞳のお陰で、血筋は確かではありますし。
「ここには、私の息子もいるのだが、今は学園に行っているから、帰ってきてから挨拶させよう。次は部屋の案内をさせるから、ゆっくりしてきなさい」
「はい、養父さま」
養父さまの言葉に反応するように、使用人がわたくしの部屋に案内してくれます。
そこには、すでに装飾も終えられている、女性の部屋がありました。
「もう部屋の用意を終えているの?」
案内してくれた使用人に聞いてみると、使用人はうなずき答えました。
「旦那さまと奥さまがいつでも迎えられるようにと、一年前から準備していたのですわ」
「まぁ……そうなの」
わたくしは、待たせてしまったことに少し申し訳なさがありながらも、こんなにも素敵な部屋を用意してくださった養父さまたちに感謝しました。
予定ではお父さまに手紙を認めるつもりでしたが、そんな体力は残っておらず、わたくしは湯浴みをして、ベッドに倒れ込むように眠りにつきました。
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