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黒猫ツバキと宝船
ツバキとエビス
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現在の世界の状況を、コンデッサはエビスへ説明した。
「……そうですか。某が石になって漂流している間に、そのように劇的な文明転換が、この地球上で起こっていたのですね」
「これから、エビスはどうする気じゃ? 和の国へ行って信仰されるも良し、ここボロノナーレ王国で気楽に過ごすも良し、高天原へ遊びに来ても良いぞ」
アマテラスの問いかけに、エビスは考え込む。
「……そもそも某が石になったのは、ある者に敗北した屈辱に耐えかねたためなのです。復活した上は、リベンジを狙います」
「ほお~。神たるお主に勝利するとは、いったい何者じゃ」
「〝鮮血の悪魔〟です」
エビスの言葉に、コンデッサは驚き、ツバキは震え上がった。
「鮮血の悪魔……それはまた、おどろおどろしい呼び名ですね」
「恐いニャン」
「手強い敵です……某単独では勝てないでしょう。アヤツを打ち負かすためにも、《セブン・フォーチュン・ゴッズ【チーム・宝船】》のメンバーを再集結させねば!」
「セブ……なんですか、それ?」
「仰々しい名前にゃん」
「セブン・フォーチュン・ゴッズとは……日本・中国・インド3ヶ国の神話体系を超え、偉大なる7柱の神々が寄り集い、作り上げたるスーパーグレートな奇跡の集団……」
コンデッサからの質問にエビスが意気込んで返事をしていると
「七福神じゃ」
アマテラスが答えを簡略化した。
「神様が、7柱も居るにょ?」
「その通りじゃ。皆、縁起の良い、福の神関係じゃな」
「しかし、某たち七福神の総力をもってしても、鮮血の悪魔を倒すという宿願を果たすことは出来なかったのです……」
苦々しげに、エビスが呟く。
アマテラスが、怪訝な顔になった。
「7柱の神が力を合わせても、勝利できぬ相手とは……ソヤツは何者なのじゃ? エビス」
「アヤツは、恐るべき強敵でした。白いヒゲをたくわえた、一見、人の良さそうな老人の姿をしているにもかかわらず……。けれど、騙されてはいけない! その本性は、返り血を浴びたかの如く真っ赤に染まった、服とナイトキャップに隠しようもなく表れている! アヤツは、真に邪悪な男だ。こともあろうに、年の瀬も押し迫るクリスマス・イブ、アヤツはたくさんのプレゼントを子供達へ配ってまわるのです!」
「良い人にゃん」
「違う……! そうでは無いのです、黒猫さん。アヤツは『良い子にはクリスマスプレゼントを上げるよ~』などとほざきつつ、実のところは自身では何もやらないのですよ。その子供の両親に贈り物を用意させ、なのに「これはサンタさんからのプレゼントよ~。良かったわね~」と親に言わせていたのです。己は一銭も失わず、そのくせ子供達からの感謝については小賢しくもぬけぬけとゲットしてしまうとは! 何たる不誠実! 何たる非道! 何たる奸智!」
興奮するエビスへ、コンデッサが尋ねる。
「サンタ? それが〝鮮血の悪魔〟の本名なのですか?」
「アヤツの正式名称は、サンタクロース。しかしながら、某たち【チーム・宝船】は、〝三択ロース〟と呼んでいました」
「え?」
混乱する、魔女。
「三択のロース? ロースの三択?」
「『許せぬアヤツを叩きのめしてロースにし、料理するのだ! ロースハムサラダ・ロースカツ・ロースの生姜焼き、3つのうちのいずれかにしてしまえ!』との望みと決意を込めた呼称です。某が、付けました」
「意味が分からないニャ!」
ツバキは話に付いていけなくなったようだ。
コンデッサが問いを重ねる。
「まずもって、〝クリスマス・イブ〟とは何なのでしょうか?」
「異国の祭りじゃ。聖人の誕生を祝う、前夜祭のようなものじゃな。日本ではなんでか知らんが、〝カップルがイチャイチャする日〟となっていたが……」
返答するアマテラス。
憤慨するエビス。
「クリスマス・イブなぞ、〝呪いの日〟に他なりません! ボッチにとっては、カップルのベタベタぶりを指を咥えて眺めるだけの、まさに〝拷問記念日〟! 毎年のクリスマス・イブ、某の耳には引っ切りなしに届いていたのですよ……『苦しい~。誰か、私を慰めて~』と啜り泣く、ボッチたちの悲痛な叫びが! これぞまさしく、〝クリスマス・イブ〟ならぬ〝苦しみます・慰撫〟!!!」
「お、落ち着くのにゃん。エビちゃん様」
「無理もない。エビスも、ボッチじゃからのう。ボッチの悲鳴にシンパシーを感じてしまうのじゃろうて」
「何を他神事のように。アマテラス様も、ボッチの同志でしょう?」
「な、なにを勘違いしておる! 妾は、れっきとしたリア充じゃぞ。子供まで居るのじゃ!」
アマテラスの宣言に、ツバキとコンデッサがビックリする。
「え! アマちゃん様、子持ちなにょ?」
「アマテラス様は、処女神だったはずでは……」
エビスが、訂正する。
「子供……それは、アマテラス様とスサノオ様の誓約の結果、珠が変じたお子様たちのことですよね?。リア充とは、何の関連性もありません。それとも、某が石になって波間を漂っている間に、アマテラス様は恋愛相手を作られでもしたのですか?」
「うう……」
アマテラスは正直な神様なため、嘘を吐くことは出来なかった。
涙目のアマテラスを、ツバキが庇う。
「エビちゃん様! アマちゃん様を苛めちゃダメにゃん。〝ボッチ〟なのは、別に恥ずかしいことじゃ無いのにゃ。ご主人様も、ボッチだし」
「おい、ツバキ! 私を巻き込むな! だいたい、お前だって、ボッチだろ!」
「ニャ~!!!」
部屋の中に居る、ボッチな2柱の神と、ボッチな魔女1人と、ボッチな黒猫1匹。皆、等しくダメージを受けた。
彼らを救えるのは、いったい誰だ? 救世主の降誕が待ち遠しい。クリスマス、早く来て! ……やっぱり、来ないで!
※続きます。
「……そうですか。某が石になって漂流している間に、そのように劇的な文明転換が、この地球上で起こっていたのですね」
「これから、エビスはどうする気じゃ? 和の国へ行って信仰されるも良し、ここボロノナーレ王国で気楽に過ごすも良し、高天原へ遊びに来ても良いぞ」
アマテラスの問いかけに、エビスは考え込む。
「……そもそも某が石になったのは、ある者に敗北した屈辱に耐えかねたためなのです。復活した上は、リベンジを狙います」
「ほお~。神たるお主に勝利するとは、いったい何者じゃ」
「〝鮮血の悪魔〟です」
エビスの言葉に、コンデッサは驚き、ツバキは震え上がった。
「鮮血の悪魔……それはまた、おどろおどろしい呼び名ですね」
「恐いニャン」
「手強い敵です……某単独では勝てないでしょう。アヤツを打ち負かすためにも、《セブン・フォーチュン・ゴッズ【チーム・宝船】》のメンバーを再集結させねば!」
「セブ……なんですか、それ?」
「仰々しい名前にゃん」
「セブン・フォーチュン・ゴッズとは……日本・中国・インド3ヶ国の神話体系を超え、偉大なる7柱の神々が寄り集い、作り上げたるスーパーグレートな奇跡の集団……」
コンデッサからの質問にエビスが意気込んで返事をしていると
「七福神じゃ」
アマテラスが答えを簡略化した。
「神様が、7柱も居るにょ?」
「その通りじゃ。皆、縁起の良い、福の神関係じゃな」
「しかし、某たち七福神の総力をもってしても、鮮血の悪魔を倒すという宿願を果たすことは出来なかったのです……」
苦々しげに、エビスが呟く。
アマテラスが、怪訝な顔になった。
「7柱の神が力を合わせても、勝利できぬ相手とは……ソヤツは何者なのじゃ? エビス」
「アヤツは、恐るべき強敵でした。白いヒゲをたくわえた、一見、人の良さそうな老人の姿をしているにもかかわらず……。けれど、騙されてはいけない! その本性は、返り血を浴びたかの如く真っ赤に染まった、服とナイトキャップに隠しようもなく表れている! アヤツは、真に邪悪な男だ。こともあろうに、年の瀬も押し迫るクリスマス・イブ、アヤツはたくさんのプレゼントを子供達へ配ってまわるのです!」
「良い人にゃん」
「違う……! そうでは無いのです、黒猫さん。アヤツは『良い子にはクリスマスプレゼントを上げるよ~』などとほざきつつ、実のところは自身では何もやらないのですよ。その子供の両親に贈り物を用意させ、なのに「これはサンタさんからのプレゼントよ~。良かったわね~」と親に言わせていたのです。己は一銭も失わず、そのくせ子供達からの感謝については小賢しくもぬけぬけとゲットしてしまうとは! 何たる不誠実! 何たる非道! 何たる奸智!」
興奮するエビスへ、コンデッサが尋ねる。
「サンタ? それが〝鮮血の悪魔〟の本名なのですか?」
「アヤツの正式名称は、サンタクロース。しかしながら、某たち【チーム・宝船】は、〝三択ロース〟と呼んでいました」
「え?」
混乱する、魔女。
「三択のロース? ロースの三択?」
「『許せぬアヤツを叩きのめしてロースにし、料理するのだ! ロースハムサラダ・ロースカツ・ロースの生姜焼き、3つのうちのいずれかにしてしまえ!』との望みと決意を込めた呼称です。某が、付けました」
「意味が分からないニャ!」
ツバキは話に付いていけなくなったようだ。
コンデッサが問いを重ねる。
「まずもって、〝クリスマス・イブ〟とは何なのでしょうか?」
「異国の祭りじゃ。聖人の誕生を祝う、前夜祭のようなものじゃな。日本ではなんでか知らんが、〝カップルがイチャイチャする日〟となっていたが……」
返答するアマテラス。
憤慨するエビス。
「クリスマス・イブなぞ、〝呪いの日〟に他なりません! ボッチにとっては、カップルのベタベタぶりを指を咥えて眺めるだけの、まさに〝拷問記念日〟! 毎年のクリスマス・イブ、某の耳には引っ切りなしに届いていたのですよ……『苦しい~。誰か、私を慰めて~』と啜り泣く、ボッチたちの悲痛な叫びが! これぞまさしく、〝クリスマス・イブ〟ならぬ〝苦しみます・慰撫〟!!!」
「お、落ち着くのにゃん。エビちゃん様」
「無理もない。エビスも、ボッチじゃからのう。ボッチの悲鳴にシンパシーを感じてしまうのじゃろうて」
「何を他神事のように。アマテラス様も、ボッチの同志でしょう?」
「な、なにを勘違いしておる! 妾は、れっきとしたリア充じゃぞ。子供まで居るのじゃ!」
アマテラスの宣言に、ツバキとコンデッサがビックリする。
「え! アマちゃん様、子持ちなにょ?」
「アマテラス様は、処女神だったはずでは……」
エビスが、訂正する。
「子供……それは、アマテラス様とスサノオ様の誓約の結果、珠が変じたお子様たちのことですよね?。リア充とは、何の関連性もありません。それとも、某が石になって波間を漂っている間に、アマテラス様は恋愛相手を作られでもしたのですか?」
「うう……」
アマテラスは正直な神様なため、嘘を吐くことは出来なかった。
涙目のアマテラスを、ツバキが庇う。
「エビちゃん様! アマちゃん様を苛めちゃダメにゃん。〝ボッチ〟なのは、別に恥ずかしいことじゃ無いのにゃ。ご主人様も、ボッチだし」
「おい、ツバキ! 私を巻き込むな! だいたい、お前だって、ボッチだろ!」
「ニャ~!!!」
部屋の中に居る、ボッチな2柱の神と、ボッチな魔女1人と、ボッチな黒猫1匹。皆、等しくダメージを受けた。
彼らを救えるのは、いったい誰だ? 救世主の降誕が待ち遠しい。クリスマス、早く来て! ……やっぱり、来ないで!
※続きます。
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