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史那編
公開告白 4
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理玖の突然の告白に私は目が落ちるのではないかと思うくらい、目を見開いていた。
「俺が中学受験した時、幸司くんに家庭教師をお願いしてやっとの思いで合格したんだけど、史那は実力で合格しただろう? 学力の差が俺の自信を失うきっかけで、それプラス外部環境も作用して史那には嫌な思いをさせてしまったよな」
理玖の言葉に、私は黙って相槌を打つ。そんな私の様子を見ながら、理玖は言葉を続けた。
「まさか俺を追いかけて受験するなんて思わなかったんだ。てっきり公立の中学校か、今のお嬢様学校の中等部に進学すると思っていたし、思春期の色々も重なって史那に対して上手く接することができなくて、史那には本当に嫌な思いをさせてしまってごめん」
ここに来て、まさかの謝罪に私は益々言葉を失うばかりだ。
「あの学校の連中は、学力をハナに掛けたプライドの高い奴らばかりでいつか鼻を明かしてやりたいと思ってたけど、プライドが高い分陰湿な嫌がらせを起こす可能性が高いから下手に動けなかった。史那が外部に出たから、俺も容赦なくそれまで史那に嫌がらせをしてきた連中にそれ相応の仕返しはしてるし、こうやって外堀も埋めていくこともできた。もう、史那も周りの目を気にすることないからな」
理玖の発する言葉の情報量が多すぎて、私の脳内でそれが処理できなくて、固まってしまっている姿を見て苦笑いを浮かべている。
「今までの俺の態度だと、到底信じてもらえないよな。だから、去年……俺が高等部に進学してから、態度を改めたんだけど、気づかなかった?」
理玖の言葉が信じられなくて、私は首をずっと横に振っていた。
だって……これは私の都合のいい夢なのではないかと思ってしまうくらい、理玖が甘い。
「去年の夏休み、史那が熱中症で倒れて抱き上げた時、折れそうなくらい細くて、肌の色も抜けるように白くて……あの時から、機会を窺ってた。史那のことを意識していたのはもう随分と前からだったけど、俺もなにぶん好きな子に対してはヘタレだから、誤解をさせてしまうような行動もあったと思う。それは否定しない。だけど今日、史那も公の場のデビューで、取引先の若い奴らは絶対に史那のことを気に掛ける。あからさまにアプローチを掛けてくる。そんなの、指を咥えて見てるだけなんて俺には無理だ。だから、もう我慢しない」
そこまで一気に喋ると、理玖は大きく息を吸い込んだ。そして……
「史那、俺は史那が好きだ。誰にも渡したくない。だから今更だけど、小さい頃の史那との約束、まだ先になるけど履行してもいいか……?」
理玖の姿が霞んでよく見えない。気がつくと、私の目には涙が溢れている。
「……いいの? 本当に、理玖のお嫁さんにしてくれるの?」
ようやく絞り出した声に、理玖は頷いた。
「きちんとしたプロポーズは、その時に改めてするから。史那、いつか俺のお嫁さんになってくれる?」
頷いた途端、瞳一杯に溜めた涙がこぼれ落ちた。
私の頷きに、理玖が破顔した。
「せっかく綺麗に化粧してるのに、顔、崩れるぞ。今日はみんなに婚約者宣言するから、俺から離れるなよ」
理玖は照れたのか、先ほど出された紅茶に口をつけた。
ほどよくぬるくなっていたのだろう、理玖はそれを一気に飲み干した。
私もバッグの中からハンカチを取り出すと、涙を拭いた。
目の前にいる理玖が、幼少期の頃の大好きな笑顔で私を見つめている。
「理玖、大好きだよ」
私の言葉に、途端に理玖が赤面した。そして、右手を自分の口に当てて視線を泳がせる。
「……っ、ヤバい。めっちゃ嬉しい」
そんな理玖の姿を見て、私も釣られて顔が赤くなる。
傍から見たら、変な二人に見えるだろう。
ようやく気持ちが通じ合った。それが嬉しくて、この後のパーティーのことなんて頭の中からすっかり抜け落ちていたけれど、理玖のスマホに直人伯父さんからの着信があり、現実に引き戻された。きっと会場への呼び出しだろう。もうそんな時間になったのか。
理玖が電話で伯父さんと二言三言話をしてすぐに通話を終わらせた。
「そろそろ行くか」
私は理玖に促され、出されていた紅茶に口をつけると席を立った。
理玖は、私の背中にそっと手を回しエスコートしてくれる。
一緒に並んで会場のホールへ行くと、父と直人伯父さんが入り口で待っていた。
「なんだ? ようやく上手く纏まったか?」
二人の発言に、理玖はなにも言わないけれど親指を立てて肯定を表現すると、二人して良かったなと理玖の頭を小突いている。
その後パーティーが開催され、私は顔を合わせる取引先の役職者に高宮専務の娘であり、次期社長である理玖の婚約者として紹介された。
理玖は私の傍から片時も離れることはなく、周囲も紹介される度に驚きを含ませながらもすんなりと受け入れており、私と理玖は『婚約者』として周知されることとなった。
パーティーも無事終わり週明けに学校へ行くと、パーティーに出席していたと思われる人数名から本当に婚約者なのかと質問されたけど、私はそれに笑顔で頷いた。私たちの婚約話は、みるみるうちに広まった。
聞けば、私のように既に婚約者がいる生徒も少なくはないと言う。
先生方も、必然的にそのような目で私を見るようになり、私は在学中、家庭科目が手を抜けなくなってしまったのは余談である。
「俺が中学受験した時、幸司くんに家庭教師をお願いしてやっとの思いで合格したんだけど、史那は実力で合格しただろう? 学力の差が俺の自信を失うきっかけで、それプラス外部環境も作用して史那には嫌な思いをさせてしまったよな」
理玖の言葉に、私は黙って相槌を打つ。そんな私の様子を見ながら、理玖は言葉を続けた。
「まさか俺を追いかけて受験するなんて思わなかったんだ。てっきり公立の中学校か、今のお嬢様学校の中等部に進学すると思っていたし、思春期の色々も重なって史那に対して上手く接することができなくて、史那には本当に嫌な思いをさせてしまってごめん」
ここに来て、まさかの謝罪に私は益々言葉を失うばかりだ。
「あの学校の連中は、学力をハナに掛けたプライドの高い奴らばかりでいつか鼻を明かしてやりたいと思ってたけど、プライドが高い分陰湿な嫌がらせを起こす可能性が高いから下手に動けなかった。史那が外部に出たから、俺も容赦なくそれまで史那に嫌がらせをしてきた連中にそれ相応の仕返しはしてるし、こうやって外堀も埋めていくこともできた。もう、史那も周りの目を気にすることないからな」
理玖の発する言葉の情報量が多すぎて、私の脳内でそれが処理できなくて、固まってしまっている姿を見て苦笑いを浮かべている。
「今までの俺の態度だと、到底信じてもらえないよな。だから、去年……俺が高等部に進学してから、態度を改めたんだけど、気づかなかった?」
理玖の言葉が信じられなくて、私は首をずっと横に振っていた。
だって……これは私の都合のいい夢なのではないかと思ってしまうくらい、理玖が甘い。
「去年の夏休み、史那が熱中症で倒れて抱き上げた時、折れそうなくらい細くて、肌の色も抜けるように白くて……あの時から、機会を窺ってた。史那のことを意識していたのはもう随分と前からだったけど、俺もなにぶん好きな子に対してはヘタレだから、誤解をさせてしまうような行動もあったと思う。それは否定しない。だけど今日、史那も公の場のデビューで、取引先の若い奴らは絶対に史那のことを気に掛ける。あからさまにアプローチを掛けてくる。そんなの、指を咥えて見てるだけなんて俺には無理だ。だから、もう我慢しない」
そこまで一気に喋ると、理玖は大きく息を吸い込んだ。そして……
「史那、俺は史那が好きだ。誰にも渡したくない。だから今更だけど、小さい頃の史那との約束、まだ先になるけど履行してもいいか……?」
理玖の姿が霞んでよく見えない。気がつくと、私の目には涙が溢れている。
「……いいの? 本当に、理玖のお嫁さんにしてくれるの?」
ようやく絞り出した声に、理玖は頷いた。
「きちんとしたプロポーズは、その時に改めてするから。史那、いつか俺のお嫁さんになってくれる?」
頷いた途端、瞳一杯に溜めた涙がこぼれ落ちた。
私の頷きに、理玖が破顔した。
「せっかく綺麗に化粧してるのに、顔、崩れるぞ。今日はみんなに婚約者宣言するから、俺から離れるなよ」
理玖は照れたのか、先ほど出された紅茶に口をつけた。
ほどよくぬるくなっていたのだろう、理玖はそれを一気に飲み干した。
私もバッグの中からハンカチを取り出すと、涙を拭いた。
目の前にいる理玖が、幼少期の頃の大好きな笑顔で私を見つめている。
「理玖、大好きだよ」
私の言葉に、途端に理玖が赤面した。そして、右手を自分の口に当てて視線を泳がせる。
「……っ、ヤバい。めっちゃ嬉しい」
そんな理玖の姿を見て、私も釣られて顔が赤くなる。
傍から見たら、変な二人に見えるだろう。
ようやく気持ちが通じ合った。それが嬉しくて、この後のパーティーのことなんて頭の中からすっかり抜け落ちていたけれど、理玖のスマホに直人伯父さんからの着信があり、現実に引き戻された。きっと会場への呼び出しだろう。もうそんな時間になったのか。
理玖が電話で伯父さんと二言三言話をしてすぐに通話を終わらせた。
「そろそろ行くか」
私は理玖に促され、出されていた紅茶に口をつけると席を立った。
理玖は、私の背中にそっと手を回しエスコートしてくれる。
一緒に並んで会場のホールへ行くと、父と直人伯父さんが入り口で待っていた。
「なんだ? ようやく上手く纏まったか?」
二人の発言に、理玖はなにも言わないけれど親指を立てて肯定を表現すると、二人して良かったなと理玖の頭を小突いている。
その後パーティーが開催され、私は顔を合わせる取引先の役職者に高宮専務の娘であり、次期社長である理玖の婚約者として紹介された。
理玖は私の傍から片時も離れることはなく、周囲も紹介される度に驚きを含ませながらもすんなりと受け入れており、私と理玖は『婚約者』として周知されることとなった。
パーティーも無事終わり週明けに学校へ行くと、パーティーに出席していたと思われる人数名から本当に婚約者なのかと質問されたけど、私はそれに笑顔で頷いた。私たちの婚約話は、みるみるうちに広まった。
聞けば、私のように既に婚約者がいる生徒も少なくはないと言う。
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