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史那編
見守る事は、もう止める ーside理玖ー 2
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実際幼少期に口約束とはいえ結婚しようと言い合った仲だ。
これは高宮の祖父母や親戚一同も周知の事実。
この約束を無効にせず、なんとか有効にする方法はないだろうか。
ソファーに腰かけてそんなことを考えていると、目の前に人影が見えた。
「待たせて悪かったな」
雅人叔父さんの登場だ。
父も身長が高いが、雅人叔父さんも父と変わらないくらいの身長がある。
高宮の家の遺伝子を色濃く受け継いでいるなら、俺もそこそこ身長が高くなるのだろうか。
史那は雅人叔父さんに顔立ちもよく似ており、女性の女性の中で方だ。
文香叔母さんもその年代では低くはないと思うけど、小学生の頃史那に身長をに抜かれたと言っていたと記憶している。
俺は立ち上がると、雅人叔父さんは後に着いて来いと言わんばかりに歩き出す。
俺は置いて行かれないように後を追う。
叔父さんは役員専用のエレベーターに乗り込み、俺が一緒に乗り込んだのを確認すると、最上階のボタンを押した。そこは役員フロアだ。
ここなら高宮の身内以外、誰も邪魔は入らない。
叔父さんの機転に感謝した。
でもそれだけ今日の話が重大な内容だということを再認識させる。
役員フロアには応接室が三つある。
そんなにアポを取る人が多いのだろうか。
通されたのは、エレベーターから一番遠く奥まった場所にある第三応接室だった。
秘書の女性がお茶を運び入れた時、雅人叔父さんは人払いを伝えた。
「私たちがこの部屋から出るまで、電話も取次はしないで欲しい」
「畏まりました」
秘書が退室して誰もいなくなったところで、出された麦茶に口をつけた。
氷も入れて貰っており、暑い中ここまでやって来た俺は一気にそれを飲み干した。
エアコンで部屋も程よく涼しいおかげで、そこまで汗は吹き出さないものの、それでも代謝のいい十代の身体はそれなりに汗をかく。
俺がポケットからハンカチを取り出して汗を拭うと、叔父さんは徐ろに口を開いた。
「今日、ここに呼び出した内容、分かるか?」
「……史那になにかあったんですか」
俺の返事に苦笑いを浮かべている。
「察しがいいな、その通りだ。理玖、お前の夏休みの予定はどうなってる?」
雅人叔父さんは、応接セットのテーブルに置かれている卓上カレンダーを手に取った。
俺の予定と史那となんの関係があるんだろう。
「入学してすぐに生徒会役員に引っ張られたから、夏休み明けの文化祭や体育祭の準備に追われてると思う。初めてのことだしまだ詳細は分からないけど、毎日はないんじゃないかな。午前中は補習もあるから、午後からなら比較的自由な時間は取れると思うけど」
生徒会役員は、実行委員会の取りまとめの執行部を兼ねている。夏休み明けにすぐ行われる文化祭と体育祭。準備期間は実質夏休みだけだ。
「わかった。そうしたら理玖、お前、金曜日の午後は家庭教師が来ることにしてその準備は全部休め。で、史那の家庭教師をやってくれ」
突然のことに、俺の思考は止まった。
家庭教師? 俺が史那の? なぜ?
俺の表情を見て、雅人叔父さんは苦笑いを浮かべている。
「史那の成績がちょっと心配でな……本人も家庭教師をつけることは承知しているんだ。で、その家庭教師を理玖、お前にお願いしたい」
具体的なことは話してくれないものの、史那の成績がきっと内部進級テストできっとギリギリのラインにいるのだということをなんとなく察した。
史那が内部進学するつもりなら、今までのように外での接触は避けるべきだろう。
どこで誰がなにを見ているか分からない。
「わかった。金曜日の午後はそれで予定入れないようにするし、生徒会の方にはそれで申請する。でも、その家庭教師が俺だってこと、史那には……」
「うん、当日まで内緒にする。これで史那の成績が上がるかどうかは、理玖の実力次第だが」
「うわ、すげープレッシャーだなそれ。でも、成績アップと言っても史那のやる気も関係するから、こればかりは俺一人の責任ではないと思うんだけど」
「まあ、そうだな。がしかし、史那の苦手意識を克服させてやりたいのが一番の目的だからな」
苦手意識……史那は中等部に入学して俺との関係性を色んな奴らに敵視され、嫌がらせも受けている。それがメンタルに影響しているのだろう。
学校の成績に関しては、本当なら俺よりも優秀なのだ。なのに底辺にまで落ちている……
もしかしたら史那は外部受験するのかも知れない。もしそうならば……
「なあ、雅人叔父さん……もしかして、史那は外部受験も視野に入れてるのか?」
雅人叔父さんは、この俺の問いになにも答えない。
でも、それが肯定の意味を指していると俺は直感で悟った。どこの学校を受験するつもりだろう。
「なんにせよ、成績は優秀な方が受験するにも内部進学するにしろ有利なのは自分でも分かってるだろう?
とにかく史那の勉強を夏休みの間見てやってくれ。バイト代は、史那の二学期の成績次第でいいよな?」
とっくの昔に叔父さんには見抜かれている。家庭教師のバイト代なんていらない。
こうやって史那の傍にいる正当な理由があればいいことを。
これは高宮の祖父母や親戚一同も周知の事実。
この約束を無効にせず、なんとか有効にする方法はないだろうか。
ソファーに腰かけてそんなことを考えていると、目の前に人影が見えた。
「待たせて悪かったな」
雅人叔父さんの登場だ。
父も身長が高いが、雅人叔父さんも父と変わらないくらいの身長がある。
高宮の家の遺伝子を色濃く受け継いでいるなら、俺もそこそこ身長が高くなるのだろうか。
史那は雅人叔父さんに顔立ちもよく似ており、女性の女性の中で方だ。
文香叔母さんもその年代では低くはないと思うけど、小学生の頃史那に身長をに抜かれたと言っていたと記憶している。
俺は立ち上がると、雅人叔父さんは後に着いて来いと言わんばかりに歩き出す。
俺は置いて行かれないように後を追う。
叔父さんは役員専用のエレベーターに乗り込み、俺が一緒に乗り込んだのを確認すると、最上階のボタンを押した。そこは役員フロアだ。
ここなら高宮の身内以外、誰も邪魔は入らない。
叔父さんの機転に感謝した。
でもそれだけ今日の話が重大な内容だということを再認識させる。
役員フロアには応接室が三つある。
そんなにアポを取る人が多いのだろうか。
通されたのは、エレベーターから一番遠く奥まった場所にある第三応接室だった。
秘書の女性がお茶を運び入れた時、雅人叔父さんは人払いを伝えた。
「私たちがこの部屋から出るまで、電話も取次はしないで欲しい」
「畏まりました」
秘書が退室して誰もいなくなったところで、出された麦茶に口をつけた。
氷も入れて貰っており、暑い中ここまでやって来た俺は一気にそれを飲み干した。
エアコンで部屋も程よく涼しいおかげで、そこまで汗は吹き出さないものの、それでも代謝のいい十代の身体はそれなりに汗をかく。
俺がポケットからハンカチを取り出して汗を拭うと、叔父さんは徐ろに口を開いた。
「今日、ここに呼び出した内容、分かるか?」
「……史那になにかあったんですか」
俺の返事に苦笑いを浮かべている。
「察しがいいな、その通りだ。理玖、お前の夏休みの予定はどうなってる?」
雅人叔父さんは、応接セットのテーブルに置かれている卓上カレンダーを手に取った。
俺の予定と史那となんの関係があるんだろう。
「入学してすぐに生徒会役員に引っ張られたから、夏休み明けの文化祭や体育祭の準備に追われてると思う。初めてのことだしまだ詳細は分からないけど、毎日はないんじゃないかな。午前中は補習もあるから、午後からなら比較的自由な時間は取れると思うけど」
生徒会役員は、実行委員会の取りまとめの執行部を兼ねている。夏休み明けにすぐ行われる文化祭と体育祭。準備期間は実質夏休みだけだ。
「わかった。そうしたら理玖、お前、金曜日の午後は家庭教師が来ることにしてその準備は全部休め。で、史那の家庭教師をやってくれ」
突然のことに、俺の思考は止まった。
家庭教師? 俺が史那の? なぜ?
俺の表情を見て、雅人叔父さんは苦笑いを浮かべている。
「史那の成績がちょっと心配でな……本人も家庭教師をつけることは承知しているんだ。で、その家庭教師を理玖、お前にお願いしたい」
具体的なことは話してくれないものの、史那の成績がきっと内部進級テストできっとギリギリのラインにいるのだということをなんとなく察した。
史那が内部進学するつもりなら、今までのように外での接触は避けるべきだろう。
どこで誰がなにを見ているか分からない。
「わかった。金曜日の午後はそれで予定入れないようにするし、生徒会の方にはそれで申請する。でも、その家庭教師が俺だってこと、史那には……」
「うん、当日まで内緒にする。これで史那の成績が上がるかどうかは、理玖の実力次第だが」
「うわ、すげープレッシャーだなそれ。でも、成績アップと言っても史那のやる気も関係するから、こればかりは俺一人の責任ではないと思うんだけど」
「まあ、そうだな。がしかし、史那の苦手意識を克服させてやりたいのが一番の目的だからな」
苦手意識……史那は中等部に入学して俺との関係性を色んな奴らに敵視され、嫌がらせも受けている。それがメンタルに影響しているのだろう。
学校の成績に関しては、本当なら俺よりも優秀なのだ。なのに底辺にまで落ちている……
もしかしたら史那は外部受験するのかも知れない。もしそうならば……
「なあ、雅人叔父さん……もしかして、史那は外部受験も視野に入れてるのか?」
雅人叔父さんは、この俺の問いになにも答えない。
でも、それが肯定の意味を指していると俺は直感で悟った。どこの学校を受験するつもりだろう。
「なんにせよ、成績は優秀な方が受験するにも内部進学するにしろ有利なのは自分でも分かってるだろう?
とにかく史那の勉強を夏休みの間見てやってくれ。バイト代は、史那の二学期の成績次第でいいよな?」
とっくの昔に叔父さんには見抜かれている。家庭教師のバイト代なんていらない。
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