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史那編
中学三年、家庭教師 3
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果穂を母に任せて十五分ほど経った頃、私も露出していた肌の日焼け止めを綺麗に落として頭のてっぺんから綺麗に洗い流し、ようやく浴室を後にした。
家庭教師の先生がどんな人か聞いていなかったので、服装もそれなりにきちんとした物じゃないと失礼に当たりそうだ。
私は下着を着用すると、ノースリーブのワンピースに袖を通した。
二の腕に通学時や体育の授業前に日焼け止めをきちんと塗っているおかげもあり、まだらに焼けることはなく、私の腕は割と綺麗な状態だ。
でもこんな腕を晒して相手に不快な気持ちを持たれるのも嫌だし、ノースリーブはさすがに砕け過ぎだろう。
薄手のカーディガンを羽織ることにした。
私は急いでドライヤーで髪を乾かした。
大体髪の毛も乾き、部屋にカーディガンを取りに戻り、リビングへと急いだ。
喉もカラカラに渇いたし、お腹も空いている。
果穂もいるから、きっと空調もよく効いているだろう。
そしてリビングのドアを開けると……
私は無意識のうちに、こんなにまで理玖のことを思っていたのだろうか。
それともダッシュで帰った上に蒸し暑い風呂場で汗をかいて、脱水でも起こして幻覚でも見ているのだろうか。
そこには、果穂と一緒に寛いでいる理玖がいた。
「おっせーよ。早く水分補給して昼飯食えよ」
全く状況が理解できない。
何故理玖がここにいるの?
一体いつ来たの?
なにしに?
私に一体なんの用事があるの?
次から次へと浮かんでくる疑問に、理玖はまずは私のすべきことを口にした。
「ほら、文香叔母さんが片づけできなくて困ってるだろ? てか史那、顔赤いぞ。風呂場でのぼせたんじゃないか?」
理玖の言葉に、母がグラスいっぱいにお茶を注ぎ、氷も入れてダイニングテーブルの上に置いた。
「そう言えば家に帰った時も顔が真っ赤だったでしょう、本当、大丈夫? これ飲んでご飯食べてから、一応念のために熱計ってみなさいね? 体温計、出しておくから」
理玖も珍しく心配そうな表情を浮かべている。そんなに私は真っ赤になっているのだろうか……?
母が用意してくれたグラスを手に持ち、お茶を一気に飲み干した。
喉は乾いているけれど、なぜかそんなに飲みたいと思わない。
グラスをテーブルの上に戻し、用意されていた昼食に目を遣った。
昼食は、さっぱりとした冷やしうどんだった。
これなら食べられそうだと思ったものの、なぜだろう、余り食欲が湧かない。
さっきまでは全然そんなことなかったのに……
それどころか、ちょっと視界がおかしい。なんだか天井が、歪んで見える……
そう思っていたら、視界が真っ暗になった。
理玖や母が私を呼ぶ声が聞こえるけれど、返事をすることができなかった。
* * *
気がつくと、私は自分の部屋のベッドの上で寝かされていた。
側には、理玖がいる。
私が目覚めたことに気づいた理玖は、安堵の表情を浮かべている。
「私、どうして……なにが、どうなってるの?」
私の疑問に、理玖が優しく答えてくれる。こんな穏やかな理玖を見るのは、いつ以来だろう。
「史那、軽い熱中症にかかってたんだよ。ダイニングで倒れた拍子に少し頭を打って、叔母さんが藤岡先生を呼んだんだ。
体調はどうだ? 脳しんとう起こしてたみたいだけど、今日はもう、大人しく寝てろよ。熱中症にもかかって脱水起こしてたから、点滴も打ってるから」
理玖に言われて私は自分の右手に注射痕があることに気づいた。
「倒れてから三時間は寝てたから、もしかしたら今晩眠れないかも知れないな」
理玖の言葉に、私は身体を起こそうとすると、理玖が介助してくれた。
「叔母さんに、史那が目覚めたこと知らせてくるよ。
果穂が枕元で騒がしくして史那がゆっくり休めないだろうって言ってリビングにいるから。なにか、欲しいものあるか?」
頭がぼんやりしていて、なぜここに理玖がいるのか理由がわからない。
それに、こんなに話をすることすらなかった私たちなのに、なんでこんなに世話を焼いてくれるのか……
欲しいもの……か。
そんなの、理玖の心に決まってる。
でもそんなことは、口が裂けても言えない。言っちゃいけないんだ。
「理玖……」
「ん? なんだ? 水でも飲むか?」
私の呼ぶ声に、優しく答えてくれる理玖。
点滴のおかげなのか、喉の渇きは感じないけれど、身体が怠い。
「体温計……良かったら、持って来てくれるかな……?」
体調が悪いせいか、まだ身体も怠いし、喋るのもしんどく感じる。
これが倦怠感というものだろうか。今までに経験したことのない怠さだ。
「分かった。熱があるなら家庭教師はまた日を改めるから。ちょっと待ってろ」
理玖が部屋を出て行って、ぼんやりとした頭に残った言葉を復唱した。
『家庭教師』って、理玖のことだったんだ……
家庭教師の先生がどんな人か聞いていなかったので、服装もそれなりにきちんとした物じゃないと失礼に当たりそうだ。
私は下着を着用すると、ノースリーブのワンピースに袖を通した。
二の腕に通学時や体育の授業前に日焼け止めをきちんと塗っているおかげもあり、まだらに焼けることはなく、私の腕は割と綺麗な状態だ。
でもこんな腕を晒して相手に不快な気持ちを持たれるのも嫌だし、ノースリーブはさすがに砕け過ぎだろう。
薄手のカーディガンを羽織ることにした。
私は急いでドライヤーで髪を乾かした。
大体髪の毛も乾き、部屋にカーディガンを取りに戻り、リビングへと急いだ。
喉もカラカラに渇いたし、お腹も空いている。
果穂もいるから、きっと空調もよく効いているだろう。
そしてリビングのドアを開けると……
私は無意識のうちに、こんなにまで理玖のことを思っていたのだろうか。
それともダッシュで帰った上に蒸し暑い風呂場で汗をかいて、脱水でも起こして幻覚でも見ているのだろうか。
そこには、果穂と一緒に寛いでいる理玖がいた。
「おっせーよ。早く水分補給して昼飯食えよ」
全く状況が理解できない。
何故理玖がここにいるの?
一体いつ来たの?
なにしに?
私に一体なんの用事があるの?
次から次へと浮かんでくる疑問に、理玖はまずは私のすべきことを口にした。
「ほら、文香叔母さんが片づけできなくて困ってるだろ? てか史那、顔赤いぞ。風呂場でのぼせたんじゃないか?」
理玖の言葉に、母がグラスいっぱいにお茶を注ぎ、氷も入れてダイニングテーブルの上に置いた。
「そう言えば家に帰った時も顔が真っ赤だったでしょう、本当、大丈夫? これ飲んでご飯食べてから、一応念のために熱計ってみなさいね? 体温計、出しておくから」
理玖も珍しく心配そうな表情を浮かべている。そんなに私は真っ赤になっているのだろうか……?
母が用意してくれたグラスを手に持ち、お茶を一気に飲み干した。
喉は乾いているけれど、なぜかそんなに飲みたいと思わない。
グラスをテーブルの上に戻し、用意されていた昼食に目を遣った。
昼食は、さっぱりとした冷やしうどんだった。
これなら食べられそうだと思ったものの、なぜだろう、余り食欲が湧かない。
さっきまでは全然そんなことなかったのに……
それどころか、ちょっと視界がおかしい。なんだか天井が、歪んで見える……
そう思っていたら、視界が真っ暗になった。
理玖や母が私を呼ぶ声が聞こえるけれど、返事をすることができなかった。
* * *
気がつくと、私は自分の部屋のベッドの上で寝かされていた。
側には、理玖がいる。
私が目覚めたことに気づいた理玖は、安堵の表情を浮かべている。
「私、どうして……なにが、どうなってるの?」
私の疑問に、理玖が優しく答えてくれる。こんな穏やかな理玖を見るのは、いつ以来だろう。
「史那、軽い熱中症にかかってたんだよ。ダイニングで倒れた拍子に少し頭を打って、叔母さんが藤岡先生を呼んだんだ。
体調はどうだ? 脳しんとう起こしてたみたいだけど、今日はもう、大人しく寝てろよ。熱中症にもかかって脱水起こしてたから、点滴も打ってるから」
理玖に言われて私は自分の右手に注射痕があることに気づいた。
「倒れてから三時間は寝てたから、もしかしたら今晩眠れないかも知れないな」
理玖の言葉に、私は身体を起こそうとすると、理玖が介助してくれた。
「叔母さんに、史那が目覚めたこと知らせてくるよ。
果穂が枕元で騒がしくして史那がゆっくり休めないだろうって言ってリビングにいるから。なにか、欲しいものあるか?」
頭がぼんやりしていて、なぜここに理玖がいるのか理由がわからない。
それに、こんなに話をすることすらなかった私たちなのに、なんでこんなに世話を焼いてくれるのか……
欲しいもの……か。
そんなの、理玖の心に決まってる。
でもそんなことは、口が裂けても言えない。言っちゃいけないんだ。
「理玖……」
「ん? なんだ? 水でも飲むか?」
私の呼ぶ声に、優しく答えてくれる理玖。
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「体温計……良かったら、持って来てくれるかな……?」
体調が悪いせいか、まだ身体も怠いし、喋るのもしんどく感じる。
これが倦怠感というものだろうか。今までに経験したことのない怠さだ。
「分かった。熱があるなら家庭教師はまた日を改めるから。ちょっと待ってろ」
理玖が部屋を出て行って、ぼんやりとした頭に残った言葉を復唱した。
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