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side結衣
消えない記憶
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私は、聡子の言葉を聞いて頭の中が真っ白になった。
一体どう言う意味?
臨時休校になっている?
連絡網も回っている?
聡子は私に連絡網が回っていない事に驚き、すぐに家の中に入る様に招き入れてくれたが、私の思考と行動は上手く働かない。
その場に立ち尽くして動けないでいた。
聡子はそんな私を見て困った顔をしたものの、すぐに家の中に入り、お父さんらしき人を連れてすぐに出て来た。
「今から学校に行っても誰も居ないし、風邪ひいちゃうよ。
お父さんに送って貰うから、家に帰ろう」
結局私は聡子のお父さんに車で家まで送って貰ったものの、帰宅してからも思考が停止したままで、しばらくの間家の前で立ち尽くしていた。
私に気付いた母が驚いて家の中に私を連れて入ったものの、私の記憶はその時点でもうあやふやになっていた。
吹雪の中外でどの位居たのかすら分からない。
母が私を見つけた時、私は軒下に居たものの座り込んでいて、その身体の上には雪が降り積もっていたらしい。
病院に行くにも、私もこの時点で発熱していたのかなかなか思うように身体も動かない。
母が私を急いで着替えさせ、部屋の暖房を入れてホットミルクを作ってくれた。
部屋に上がる気力もなく、私はリビングのソファーの上でたくさんの服を着込み、母が持ってきた毛布と布団にくるまって眠った。
今思えば、この時点で既にインフルエンザに感染していたのだろう。
予防接種を受けていたおかげで、症状は発熱だけで済んだけれど、インフルエンザは感染症。
学校も『欠席』ではなく『出席停止』となる。
発熱のせいで微睡みながらも、私の中に疑問が湧く。
聡子が、朝の七時に臨時休校の連絡網を回したと言っていた。
なのに何故、私の所に連絡網が回って来なかったのだろう。
クラスの連絡網は、出席番号順で四班に分かれている。
先生から班の先頭の人に連絡が行き、最後の人が確認で先生に連絡をして終了する。
私は二班で、最後の順番だった。
私の前の人は……。
坂本だ。
フルネームは坂本悠太、小学校は違う校区だし、同じクラスになったのは今年が初めてだった。
坂本はスポーツ万能で、バスケ部のキャプテンで部長、加えて生徒会長と二足の草鞋を履き、駄目押しでイケメン。
男子にも女子にも先生にも後輩にも、人気や信頼のある天に二物も三物も与えられた男だ。
進学先も、私が本命で受験する県立高校の普通科が年明け早々に推薦で決まっていた。
誰にでも優しくて世話好きな坂本が、こんな連絡ミスをするだろうか。
もしかしたら坂本の所にも連絡網が回ってなかったのだろうか。
それならば、坂本の前の人は一体何をやっていたのだろう。
私は熱で朦朧とする意識の中でも坂本の心配をしていた。
午前中はぐっすりと眠り、汗をかいたので一度着替えると、母に病院へ連れて行かれ、インフルエンザの診断を受けた。
今まで体調にあれだけ気を付けていたのに……。
私はショックで頭が回らなかった。
母も受験が何とかならないかと学校に連絡して先生に掛け合って貰ったものの、交通機関の遅れ等、一定の条件に当てはまらない個人の体調不良では再試験の実施にはならないとの回答だった。
母もそう簡単には引き下がらず、今回の体調不良は学校からの連絡網が回って来なかった事による不可抗力だと伝えるも、学校側からはまさかの回答があった。
それは、坂本から担任に連絡があり、私の家に電話するも繋がらなかったと。
それを聞いて母も私もクラスで配布された連絡網に記載されている我が家の電話番号を確認するも、電話番号は間違っていない。
それに母は私が学校に出てからも外には出ておらず、私が帰宅するまで電話は一切鳴らなかったと言う。
私はそこで初めて坂本に対して疑念を抱いた。
確か以前も、一度連絡網が回って来なくて大変な目に遭いそうになった事があったのだ。
あれは二学期の、秋の音楽祭前日の事だ。
季節外れの台風の影響で、音楽祭が一日後にズレる事になり、当日と翌日の二日分お弁当がいると言う事が連絡網で回って来る筈だったのだ。
この時はたまたまママ友の情報網で母の方が先に連絡を受けていたのでお弁当を忘れると言う失態は免れたのだけれど……。
この時、確か坂本は気まずそうな顔をして、でも私には何も言ってくれなかった。
そして今回も、連絡網が回って来なかった。
もしかして、これはわざとなのだろうか。
それとも本当にうちに電話をかけたけど繋がらなかったのだろうか。
一度湧いた疑惑は、そう簡単に払拭する事は出来ない。
どちらにしても、私はインフルエンザに感染している以上、本命の高校受験すら叶わないし、熱が下がってもしばらくは登校出来ないのだから、大人しく自宅で過ごすしかない。
私は悔しくて、悲しくて、涙が止まらない。
受験に失敗する挫折よりも、それすらも叶わない現実に、その原因がもしかしたら坂本の故意によるものだとしたら……。
私の出校停止が解けるまでに、私は体重が二キロ落ちていた。
一体どう言う意味?
臨時休校になっている?
連絡網も回っている?
聡子は私に連絡網が回っていない事に驚き、すぐに家の中に入る様に招き入れてくれたが、私の思考と行動は上手く働かない。
その場に立ち尽くして動けないでいた。
聡子はそんな私を見て困った顔をしたものの、すぐに家の中に入り、お父さんらしき人を連れてすぐに出て来た。
「今から学校に行っても誰も居ないし、風邪ひいちゃうよ。
お父さんに送って貰うから、家に帰ろう」
結局私は聡子のお父さんに車で家まで送って貰ったものの、帰宅してからも思考が停止したままで、しばらくの間家の前で立ち尽くしていた。
私に気付いた母が驚いて家の中に私を連れて入ったものの、私の記憶はその時点でもうあやふやになっていた。
吹雪の中外でどの位居たのかすら分からない。
母が私を見つけた時、私は軒下に居たものの座り込んでいて、その身体の上には雪が降り積もっていたらしい。
病院に行くにも、私もこの時点で発熱していたのかなかなか思うように身体も動かない。
母が私を急いで着替えさせ、部屋の暖房を入れてホットミルクを作ってくれた。
部屋に上がる気力もなく、私はリビングのソファーの上でたくさんの服を着込み、母が持ってきた毛布と布団にくるまって眠った。
今思えば、この時点で既にインフルエンザに感染していたのだろう。
予防接種を受けていたおかげで、症状は発熱だけで済んだけれど、インフルエンザは感染症。
学校も『欠席』ではなく『出席停止』となる。
発熱のせいで微睡みながらも、私の中に疑問が湧く。
聡子が、朝の七時に臨時休校の連絡網を回したと言っていた。
なのに何故、私の所に連絡網が回って来なかったのだろう。
クラスの連絡網は、出席番号順で四班に分かれている。
先生から班の先頭の人に連絡が行き、最後の人が確認で先生に連絡をして終了する。
私は二班で、最後の順番だった。
私の前の人は……。
坂本だ。
フルネームは坂本悠太、小学校は違う校区だし、同じクラスになったのは今年が初めてだった。
坂本はスポーツ万能で、バスケ部のキャプテンで部長、加えて生徒会長と二足の草鞋を履き、駄目押しでイケメン。
男子にも女子にも先生にも後輩にも、人気や信頼のある天に二物も三物も与えられた男だ。
進学先も、私が本命で受験する県立高校の普通科が年明け早々に推薦で決まっていた。
誰にでも優しくて世話好きな坂本が、こんな連絡ミスをするだろうか。
もしかしたら坂本の所にも連絡網が回ってなかったのだろうか。
それならば、坂本の前の人は一体何をやっていたのだろう。
私は熱で朦朧とする意識の中でも坂本の心配をしていた。
午前中はぐっすりと眠り、汗をかいたので一度着替えると、母に病院へ連れて行かれ、インフルエンザの診断を受けた。
今まで体調にあれだけ気を付けていたのに……。
私はショックで頭が回らなかった。
母も受験が何とかならないかと学校に連絡して先生に掛け合って貰ったものの、交通機関の遅れ等、一定の条件に当てはまらない個人の体調不良では再試験の実施にはならないとの回答だった。
母もそう簡単には引き下がらず、今回の体調不良は学校からの連絡網が回って来なかった事による不可抗力だと伝えるも、学校側からはまさかの回答があった。
それは、坂本から担任に連絡があり、私の家に電話するも繋がらなかったと。
それを聞いて母も私もクラスで配布された連絡網に記載されている我が家の電話番号を確認するも、電話番号は間違っていない。
それに母は私が学校に出てからも外には出ておらず、私が帰宅するまで電話は一切鳴らなかったと言う。
私はそこで初めて坂本に対して疑念を抱いた。
確か以前も、一度連絡網が回って来なくて大変な目に遭いそうになった事があったのだ。
あれは二学期の、秋の音楽祭前日の事だ。
季節外れの台風の影響で、音楽祭が一日後にズレる事になり、当日と翌日の二日分お弁当がいると言う事が連絡網で回って来る筈だったのだ。
この時はたまたまママ友の情報網で母の方が先に連絡を受けていたのでお弁当を忘れると言う失態は免れたのだけれど……。
この時、確か坂本は気まずそうな顔をして、でも私には何も言ってくれなかった。
そして今回も、連絡網が回って来なかった。
もしかして、これはわざとなのだろうか。
それとも本当にうちに電話をかけたけど繋がらなかったのだろうか。
一度湧いた疑惑は、そう簡単に払拭する事は出来ない。
どちらにしても、私はインフルエンザに感染している以上、本命の高校受験すら叶わないし、熱が下がってもしばらくは登校出来ないのだから、大人しく自宅で過ごすしかない。
私は悔しくて、悲しくて、涙が止まらない。
受験に失敗する挫折よりも、それすらも叶わない現実に、その原因がもしかしたら坂本の故意によるものだとしたら……。
私の出校停止が解けるまでに、私は体重が二キロ落ちていた。
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