榛名の園

第二十五話「進級近し」

4月に入ると、私の周りの動きが慌ただしくなった。
面談では私の仮退院後の身の振り方について、定時制高校と通信制高校と全日制の高校どちらを選択するか聞かれた、私は勿論全日制の高校に行きたい。
元々の私の本籍地のある埼玉県の公立高校への転入学の方針が決まった。

果たして私の取得単位と学力で転入学出来るかが問題になるのだが、全ては先生方や児童相談所や自治体へお任せする方向で決まった。
先生からは「もしこの期間中違反をしたら全てのお話は白紙に戻ります」って言われた。相変わらずナルミには１級進級のお話は一切出ていないらしい。

ここに来て２年５ヶ月、学園のルーティンにもすっかりハマって。
廊下で先生とのすれ違い時の姿勢を正したお辞儀や、点呼時の号令とか誰が見ても模範生だと思うよ。
５月に入り、児童相談所の職員とNPO団体が運営する自立援助ホームの人が面会に来た。
私は仮退院後にK市の自立援助ホームに行くことになったようだ、その隣接市に県立高校があって取得単位に合致して転入学出来る高校が見つかったそうだ、ホームの理事長と副理事長が保護司の資格を持ちあたしと同じ境遇の子達が暮らしているんだって。
副理事長「時期的には夏休み明けの２学期から転入学という方法を考えています。」
（よろしくおねがいします）
「正式に仮退院が決まったら迎えに来ますから、それまでは慎重に行動を慎む事」

久しぶりに弁護士の先生との面会「ヒカルちゃん良く頑張ったね、仮退院はあたしも弁護士として付き添うからね」これ先生が個人的に無料でやってくれるんだって。

本来は１級への進級、とくに仮出院の準備って他の寮生には一切極秘裏に進められるのよ、でも私の場合はむつみ寮では年長だし２年以上の処遇を受けている院生って稀なんだよね、だから私には寮生同士でかなり黒い噂があってねシャバに出たら私の報復が怖くて手を出せないんだよねアハハ！勝手な噂なのにね。
それともう一人２年以上の長期処遇があたしの同室のマブダチだからね。
廊下で他の寮生とすれ違うと、ヒカルさん今度の評定は間違いなく１級だねとか、ここ出たら最初に何を食べますかって？質問攻め、本来は私語は厳禁なんだけどね。

カレンダーは６月になって私のお誕生の翌日に１級進級が決まりました。
その３日後に仮出院準備室に移されました。
お部屋は１人部屋だけど、調度品や様相が官給品と違って普通の女の子仕様のお部屋。
ミニキッチンもあっていつでも自分でお茶とか煎れられるのよ、TVもリアルタイムの放送が見れるし、希望すれば前日の新聞や少し古い週刊誌も持って来てくれるの。
日課はお部屋で自習と面談、面談というよりも今後出院の打ち合わせが中心だけどね。
次回はいよいよ仮出院です。