スーパーシティ ～放置国家～

最終章

第三話 地獄

　竹内の仮想現実の世界へ逃げる算段はまだ進捗70％だった。車輪

は何とか逃がすまいとパソコンを操作すると、竹内は生身の身体から

意識などが離れ、やっとコンピューターの空間に移る段取りが成功した

所だった。行き先の仮想現実は何種類か用意されており、竹内は一番

ポピュラーな（現世）という空間に行くセッティングだ。


　しかし車輪が下の（特殊）と書かれた所をクリックすると、（極楽）

と（地獄）に分かれていた。「違う違う！それはあんまり意味が無いん

だっ、ストップストップ！」、、焦る竹内に対し車輪は「お前が意味が

無いと言う事は有ると言う事だ！」、、と返すが、肉体を離れロボット

にも通じて無い竹内はモニターから叫ぶしか成す術が無かった。


　行き先を（地獄）にしてOKボタンをクリックする車輪。「わあぁぁ、

馬鹿っ、それは私が邪魔者をそこに落とし込む為に作らせた世界だっ、

まだモルモットになる奴すら送った事が無いんだぞっ！」、、すると

年月を選ぶようになっていたので、ふと警察の技術者の話を思い出した。

確か今のテクノロジーで200年生きられると。


　という事は竹内はあと百何十年仮想現実の世界で生きる事になるので、

車輪は最大の（終身）を選んだ。今度は（痛覚）のレベルを選ぶ段階に

なったので車輪は迷わず（MAX）を選択。「うわあぁぁ、この馬鹿野郎っ、

この肉体を離れたシステムは地球上に人間が住めなくなっても半永久的に

稼働するんだぞっ、貴様こそ地獄に行くべきだこの大量殺人犯めがっ！」、、


　半狂乱となって泣きじゃくる竹内に車輪は冷静に答えた。「誰が俺は

無実だと言った？そんな事1ミリたりとも思ってはいない。俺は犯罪者と

戦場の敵を大量に殺してきた以上は、お前と同じ地獄に落ちる覚悟はとっく

に出来ている。それが俺の仕事だ！」、、進捗１００％、竹内は地獄の門の

前で獄卒に囲まれ、扉はギイィ～っと軋み音を立ててゆっくり開いた。