スーパーシティ ～放置国家～

第六章

第八話 熱しやすく冷めやすい

　何万人という数で襲撃される暴力集団は、結局応戦しても勝ち目

は無いので逃げる道を選んだ。最後は惨殺されるより一先ず逃げ隠れて

ほとぼとりが覚めた頃に再起するのは賢い選択だろう。この時代暴力

集団はやりたい放題だったので、アジトの場所も隠す必要が無く

どこの組も近所の住民の間では有名だった。


　その恐怖の対象だったアジトが今や怒りと憎悪の対象に変わった

ので、群衆の破壊も半端なかった。米穀連合会のような比較的賢い

連中は、こういう時にも備えて地下通路等の逃げ道を用意していた

ので、このまま逃げ延びてそのうちまた現れるのだろう。暴力集団を

駆逐した群衆は、そのまま警察署に向かった。


　警察署では特殊警察の車と自衛隊の戦車等が配備されていた。警察

はつい最近まで有料の民間警察だったので、機動隊のような装備は

必要無く、群衆から自らを守れる戦力を持ち合わせていなかった。

しかし特殊警察は所詮外国人の傭兵なのでやる気満々だが、自衛隊は

命令だから来るには来たがイマイチな様だ。


　そもそも日本国民を守る為に日々訓練しているのであって、日本人

同士の揉め事、しかも原因が元自衛隊員の不当逮捕とか、国民を税金

製造機にした事なのだから士気が下がって当然だ。隊員の中には自衛隊

の規模を縮小させておきながら、仮想敵国とつるんで利益を貪っている

政府に対して危機感を募らせている者もいた。


　それもあってか、群衆を機銃掃射せよとの命令が下っても、銃に指を

挟んだとか、機械の故障だとか言って道化を演じる隊員ばかりで、群衆

とてさしもの戦車を見た時点で冷静になり、自然と再度非暴力での抗議に

切り替えた。というよりは、車輪を収監している警察署を残して、それ

以外の群衆は十分暴れたので疲れもあって次第にチラホラ帰って行った。