スーパーシティ ～放置国家～

第二章

第六話 新たな動き

　サミットは無事に開催され、何事も無く閉会した。３つの暴力集団

を一気に壊滅させた直後に起きたこの状況を、旅の者となった車輪は

静かに警戒していた。一般人まで巻き添えにしながらの作戦に怒りを

禁じえない事と、結局多少の団体が消滅してもスラムに住む国民の９割

は残った暴力集団から搾取される事に変わりは無い。


　一般人への巻添えは、元自衛隊員の車輪にとっては複雑な気持ちが

残った。今回は特殊警察の圧勝で終わったが、これがもし全国の暴力

集団が結束して暴れ出し、特殊警察でも対処出来なくなったら間違い

なく今度は自衛隊が鎮圧に乗り出すだろう。そうなると一般人を巻き

込む任務が自衛隊に下されていたかも知れないからだ。


　政府内では今回の作戦は成功と捉えられた。国民の９割を占める

スラムの住民から支持された事もあるが、残り１割の正規職に就く

スラム以外の国民の圧倒的支持もあったからだ。彼らからの支持は

犯罪者の征伐よりも、それによってサミットが無事に成功して、

外国にアピール出来た事の方が大きい。


　このスラム以外に住む正規職の１割の国民とは、巨大企業の正社員

と公務員である。彼らは一定レベル以上の大学を出て、巨大企業か

公務員として就職し、民間の零細企業に仕事を与えて監督する立場

である。言わば大昔の貴族のようなものだが、仕事はＡＩやメール、

ドローンを通じてやり取りする為スラムの住民と直接関わる事は無い。


　その為どこに住んでいるかも分からないし、スラムの住民にとって

何となく雲の上の存在で、自分達とは違って努力して教養を身に付けた

人達と言うイメージしかない。２０５０年の貴族の収入は巨大企業が

年１０００万円から５０００万円で、さらに税金は優遇処置を受け、

公務員もそれに準拠しているが、当然スラムの住民は知る由も無い。