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ここは取締組です 第3話
しおりを挟む総長室を出た後、私たちは再度、神楽さんのお部屋に戻った。
「桃子。女中もいることにはいるが、ここは男所帯だ。……何があるか分からん。慣れてくるまでは、俺か劉紀の目の届くところにいるようにしてくれ。」
「大丈夫や!心配せんでも、桃子ちゃんにつく悪い虫は、俺がぶっ飛ばしたる!」
いやん。二人ともかっこよすぎます。身体の大きさや格好も相まって最初はちょっと怖かったけど、慣れてくるとイケメンにしか見えない。
「私は、桃子が住めそうな部屋を手配してくる。劉紀は、必要なものを手配してくれ。」
「おう。」
神楽さんの指示に、劉紀さんは素直に従う。この二人、なんだかんだ良いコンビだな。総長さんもそれを分かっているのかも。
桜谷さんと神楽さんの話によるとこの取締組は、やはり現代で言う警察のような組織で治安維持活動を行っているらしい。
鬼ヶ島には、鬼と人間がいるらしいが基本的には、鬼が邏卒(隊士)をしているようだ。見るからに鬼の方が怖くて強そうだし、なんとなく理由は分かる。
「ん~、まずは服をなんとかせんとなぁ。その格好やと、買いモンに行くこともできんしなぁ。」
「あの、お古でもなんでも気を使ってもらわなくて、大丈夫ですよ!頂けるだけでありがたいですし。」
「いいや!そういう訳にはいかん!別嬪さんが台無しや!……おっ!ちょうどええとこに来た奴がおるわ!おーい!久慈ー!こっち来いや!」
桜谷さんが、障子から顔を出し、久慈さんという鬼に声をかけると、久慈さんはこっちに駆け寄ってきた。
久慈さんは、桜谷さんや神楽さんよりさらに若そうで、少し髪を伸ばしており、サラサラと靡いている。やんちゃそうな爽やかイケメンだ。
「桜谷さん!お疲れっす!……えっと、そっちの娘は?」
「桃子ちゃん言うねん。総長の知り合いの娘で、今日から女中見習いや。……せやから、お前、手出したらアカンで。……それとな、ちょっとドジして、着物が濡れて使えなくなってもうてん。……これで、頭から足まで見繕ってきてくれんか?」
「はぁ、それで桜谷さんの上着を……って濡れてってアンタ、こんな可愛い子に昼間から何したんスか!?」
「あーもう!ちゃうちゃう!ええからジロジロ見んなや!早う買うてき!シバくで!」
桜谷さんは、久慈さんにお金を渡した。久慈さんも桜谷さんが怖いようで焦った様子で返事をし、すぐに駆けていった。
「あの、ありがとうございます。お金まで……、働けるようになったら必ずお返ししますので!」
「ええて。俺からの贈りモンや。」
うぅ、桜谷さん、怖いなんて思ってごめんなさい。アンタとってもいい人だよ!
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