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27.心配しないで
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結局その夜はあまり寝れなかった。
(くそ……寝不足で頭いてえ……)
目覚ましのアラームは止めたものの、起き上がる気力がなくて俺はベッドに寝転がっていた。秀一が作る美味しそうな朝食の匂いも、今は食欲をそそらない。
今日はもう遅刻していこうか、と考えていると、ノックの後に秀一が部屋に顔を見せた。
「おはよう誠二さん。そろそろ起きないと遅刻するんじゃない?」
「んー……、いいよ。頭痛いし、今日は遅刻してく」
「えっ」
秀一は軽く目を見張ったかと思うと、ずかずかとベッドに近寄り俺の額に手をあてた。
「な、っんだよっ!」
(急に近づいてくんなよ……!)
恋心を自覚した昨日の今日で、この接触は心臓に悪い。当の秀一は手を退けた後は俺の手首を掴んで脈を測っている。
「脈が速い。もしかしたらこのまま熱が上がるかも……」
「いや、風邪とかじゃないから。単に寝不足なだけ」
「寝不足のところにクーラーで寝冷えしたかもしれないじゃないですか。今日は休みましょう」
「はっ?」
脈が速いのはお前のせいだ、とも言えず困惑していると、秀一は眉間に皺を寄せてじっと俺を見つめた。
「……最近、誠二さん根詰めすぎな感じはしてたんです。でも受験勉強って言われちゃうと口出しできなくて……。でも、今日こそ言います。誠二さんは頑張りすぎです。今日は休んじゃいましょう、ねっ」
「いや……休むと授業受けらんないから、行くよ」
「それが頑張りすぎって言ってるんです! ずっとトップギアでいられるわけないんですから、休むのも受験勉強のひとつです!」
「うーん……?」
(言っていることは正しいけど、そもそもお前のせいで寝不足なんだぞ……?)
そう訴えるわけにもいかず、秀一が納得するような言葉を考えていると、本格的に頭が痛くなってきた。二日酔いとはこんな感じだろうか。
「ほら、頭痛いんですよね? 無理しないで今日は休みましょう?」
「……うん……」
それ以上粘るのもバカらしい気になって、俺はこくんと頷いた。途端、ほっと秀一が息をつく。
「よかった……。あ、じゃあ朝ごはんお粥とかのほうがいいですか?」
「そこまで重症なわけじゃないから気にすんなよ。お前こそ遅刻するぞ」
「まだ大丈夫ですよ。作っちゃうんで、その間に学校に連絡入れてください」
相変わらず手際のいい男は、足早にキッチンへと戻っていった。
(まったく甲斐甲斐しい奴だな……)
スマホを手にしながら、その気遣いを嬉しく思っている自分がいた。
(くそ……寝不足で頭いてえ……)
目覚ましのアラームは止めたものの、起き上がる気力がなくて俺はベッドに寝転がっていた。秀一が作る美味しそうな朝食の匂いも、今は食欲をそそらない。
今日はもう遅刻していこうか、と考えていると、ノックの後に秀一が部屋に顔を見せた。
「おはよう誠二さん。そろそろ起きないと遅刻するんじゃない?」
「んー……、いいよ。頭痛いし、今日は遅刻してく」
「えっ」
秀一は軽く目を見張ったかと思うと、ずかずかとベッドに近寄り俺の額に手をあてた。
「な、っんだよっ!」
(急に近づいてくんなよ……!)
恋心を自覚した昨日の今日で、この接触は心臓に悪い。当の秀一は手を退けた後は俺の手首を掴んで脈を測っている。
「脈が速い。もしかしたらこのまま熱が上がるかも……」
「いや、風邪とかじゃないから。単に寝不足なだけ」
「寝不足のところにクーラーで寝冷えしたかもしれないじゃないですか。今日は休みましょう」
「はっ?」
脈が速いのはお前のせいだ、とも言えず困惑していると、秀一は眉間に皺を寄せてじっと俺を見つめた。
「……最近、誠二さん根詰めすぎな感じはしてたんです。でも受験勉強って言われちゃうと口出しできなくて……。でも、今日こそ言います。誠二さんは頑張りすぎです。今日は休んじゃいましょう、ねっ」
「いや……休むと授業受けらんないから、行くよ」
「それが頑張りすぎって言ってるんです! ずっとトップギアでいられるわけないんですから、休むのも受験勉強のひとつです!」
「うーん……?」
(言っていることは正しいけど、そもそもお前のせいで寝不足なんだぞ……?)
そう訴えるわけにもいかず、秀一が納得するような言葉を考えていると、本格的に頭が痛くなってきた。二日酔いとはこんな感じだろうか。
「ほら、頭痛いんですよね? 無理しないで今日は休みましょう?」
「……うん……」
それ以上粘るのもバカらしい気になって、俺はこくんと頷いた。途端、ほっと秀一が息をつく。
「よかった……。あ、じゃあ朝ごはんお粥とかのほうがいいですか?」
「そこまで重症なわけじゃないから気にすんなよ。お前こそ遅刻するぞ」
「まだ大丈夫ですよ。作っちゃうんで、その間に学校に連絡入れてください」
相変わらず手際のいい男は、足早にキッチンへと戻っていった。
(まったく甲斐甲斐しい奴だな……)
スマホを手にしながら、その気遣いを嬉しく思っている自分がいた。
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