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23.謎の黒塗り高級車

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 それから数日後、帰りのホームルームを受けていると急に豪雨が降り出した。

(ゲリラ豪雨かよ、ツイてねえ……。今日は夕食当番だから早く帰りたかったのに)

 突然のことなのでもちろん傘なんて持ってきていない。終礼が鳴り、のろのろと俺は昇降口まで階段を下りた。

(すぐ止むとは思うけど、しとしと降りに移行したらやっかいだな……)

 いっそ強行突破で帰るか、と下駄箱を開いて、俺は目を丸くした。折り畳み傘が入っていたからだ。見覚えのある青い傘にはメモ書きつきの付箋が貼ってあった。

『使ってください。オレは迎えが来るので大丈夫です』

(あいつめ……どこまでスパダリ発揮するんだよ……)

 メモ書きに名前はなかったが、秀一の傘ということは明らかだった。
 しかしふと『迎え』という単語が気になった。

(まさか適当な女呼び出して迎えに来させたとか……! ……いや、そんなことアイツはしないか)

 さっぱり見当がつかないながらもありがたく傘を使わせてもらおうと玄関に向かうと、数人の女子たちが固まってキャーキャーと話していた。校章の色からして二年生だ。

「……でね、高級そうな車が停まってるなーって思ってたのね」
「えーっ! まさかついに!?」
「そのまさか! 高城くんが乗り込んでったの!」
「やだぁ! 絶対芸能事務所じゃんっ!」

(はぁっ!?)

 不意に出てきた名前に、内心で激しく動揺した。

(迎えって……芸能事務所のか!? そりゃ声かけられてるって話は聞いたことあったけど……)

 それでも今までは「学業優先」と断ってきたらしいし、数日前に進路について話したばかりだ。あまりの急展開に、真相を確かめようと俺はスマホを取り出した。

『傘サンキュ。ところで今どこにいる?』

 メッセージを送信するも、なかなか既読の表示がつかない。授業中以外は即レスの男だったので、疑念は募るばかりだ。

 結局それから二時間ほど経ってから『返信遅れてごめんなさい。いま青山で、すぐ帰ります』とレスポンスがあった。
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