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21.見ている世界は同じじゃない

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 秀一と兄弟になってから気に留めていなかったが、相変わらず学園内外を問わず『高城秀一人気』は続いている。いや、加速しているといったほうが正しいかもしれない。
 先日も船越さんが「他校の女子高生が校門前で出待ちしてる。あんなのルール違反よ」と怒っていた。本人のあずかり知らぬところで、何かしらファン間で規則が定められているらしい。怖い世界だ。

(……そういえば、こいつ今まで彼女いたのかな)

 さっき『今まで女の子は喜んでくれた』と言っていたが、実際の所それは恋人だったのだろうか。一途な奴だから軽率に女子をからかったわけではないだろうし、気になるところだ。

「なあ、お前って彼女とか今までいたわけ?」
「まあ……人並には……」
「どんな子だった? やっぱり可愛くて華奢で、勉強も料理もなんでもできちゃう子?」
「どうしてそんな完璧な女の子だと思うんですか」
「そりゃ、高城秀一の彼女になるような子だったらそういう子かなって思っちゃうよ」
「…………」

(あ、やべ。ツッコミすぎたか?)

 しかし押し黙ってしまった秀一に謝ろうと口を開くより早く、形のいい唇は言葉を紡いだ。

「……別に、みんな普通の女の子でしたよ。可愛い子も、勉強が得意な子もいましたけど、共通してたのはオレの外見しか見てなかったってところです」
「……っ」
「それが嫌で、高校に上がってからは『学業優先』で押し通してたんです」

 これは俺も失言だった。傘の一件で、こいつのことを上辺だけでしか見ていなかったのだと痛感したというのに、ひどいことを言ってしまった。

「……悪いこと言った。お前だって好きで騒がれてるわけじゃないもんな」
「別に気にしてないです。今のオレには誠二さんがいるし」

 真っ直ぐに俺を見つめる視線は、パンケーキのクリームより甘い甘いものだ。
 けれど……。

(彼女がいたってことは、こいつはバイセクシャル……ってことなんだろうな)

 俺はゲイだが、一般的な『可愛い女子』というものは理解できる。しかし、恋愛対象にはならない。
 一方、秀一は今こそ俺を好きだと言っているが、女子も恋愛対象になるのだ。

(……もし俺への想いが落ち着いたら、こいつは女の元に戻っていくのかな)

 それが世の中のスタンダードと知りつつも、俺の胸はチリッと痛む。

(勝手だな……。告白に応えてないのは俺なのに)
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