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20.これ少女マンガで100万回読んだやつだ

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 呆れながらも腹は空いた。いただきます、と断りを入れてから俺はパンケーキにかぶりついた。

「……美味い!」
「よかった」
「なあなあ、どうやったらこんなふわっふわになんの? 俺が作るとぺしゃんこになるんだけど」
「卵白で一度メレンゲを作るんですよ。それから小麦粉と混ぜるんです」
「……メレンゲってなに?」
「卵白と砂糖で出来た焼き菓子です。今度作りますね」
「よろしく頼むわー」

 食事は当番制、二人交代で作っているが、秀一の作る料理は美味すぎて俺ばかりが得をしているような気がしてならない。

(……ん?)

 夢中で食べていると、テーブルの向かいに座っていた秀一が、トントンと頬を指差した。

「誠二さん、クリームついてますよ」
「え、マジか」
「違う違う、右じゃなくて……こっち」

 すっと形のいい手が近づいたかと思うと、秀一の指が俺の頬を掠めていく。その指先には、白いホイップクリームがついていた。

「……ん、美味しい」
「っ……!」

(な、なに恥ずかしいことしてるんだコイツは……!)

 秀一は掬い取ったクリームを、そのまま自分の舌で舐めとった。俺の頬についていたクリームを、だ。

 普段のスキンシップは、まるで子犬が戯れるような無邪気なものばかりで俺も怒る気にならないが、こればかりは流石に説教ものである。

「おっまえなあ! そういう恥ずかしいことすんなよ!」
「いいじゃないですか。二人きりなんだし」
「そういう問題じゃない!」
「だってオレ、秀一さんに告白したんですよ。もっと格好いいところ見せますって言ったじゃないですか。ちょっとでもポイント上げたいんです」
「どういうポイントだよ! しかもコレ、格好いいのかよ!?」
「今まで女の子は喜んでくれましたよ?」
「……ああ、そう……」

 そういえばコイツは学園一のモテ男だった、と思い出し一気に脱力した。
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