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出会い

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パーティ会場では、大人しくしておくことそれがトラブルや面倒ごとに巻き込まれないための鉄則ですわ。
でも今夜は特別なお客様がいたようで―――。

「あなたが聖女様ですね?」
パーティー会場の隅にいた私は、突然話しかけられた。
「いいえ、わたくしはジア王国第二王女、ユリフィエ・ジアですわ」
「やっぱり本物のお姫様か……ん? 王国の王女様?」
「はい。正しくは国王の娘ですが。王国は十五歳で成人となりますから、もう大人ですわよ」
「そうですか」
「あら、つれない返事」
「……あの、もう少しおもてなしをしなくては……」
「そ、そこはせめて……わたくしに興味を持って下さっても……よろしいのでは……?」
ユリフィエは胸の下で腕を組み、身体を横に揺すりながら口を尖らせる。そして上目使いをしつつ、瞳を潤わせる演技をする。
「なるほど。そうですね」
「………………」
「……何か?」
おもてなしに全く興味を示さないリィネ。ユリフィエは無言で話しかけてきた人を無表情の見つめながら、口をへの字に結ぶ。
「……いえ、別に」
「そうですか。それで用事とは?」
「あ、あぁ! そうですわ!」
ユリフィエは気を取り直して本来の目的を口にする。
「実はこの国には魔物が棲んでおりますの」
「魔物?」
「はい。本来は結界で守られている国ですが……数年前、魔族が何体かこの国に召喚されまして、それが今現在もこの国には魔物がいるのです」
「へぇ。それは大変だ。……それで?」
会場にいる男は続きを促す。
「はい、その魔族を討伐してほしいのです」
ユリフィエは一呼吸置き、改めてお願いを口にする。
「それはジア様にできないことなのでしょうか?」
「そうですわ。わたくしに討伐できないのです」
「……他の国の人では?」
「いえ、ジア王国で唯一の光属性の使い手である聖女様がいるのです」
私はちらりと視線を会場の奥に向ける。そこには聖女様が立っていた。
男もつられてそちらを向き、納得したように小さく頷く。
「あぁ、なるほど」
「どうか魔族の討伐をお願いします!」
「……報酬は?」
「はぃ?」
私は目を丸くして首を傾げる。
「報酬はいくらですか?」
「報酬ですの? そんなものは用意しておりませんわ」
私はさも当たり前のように答える。
「そうですか……では、お断りします」
男は踵を返すとさっさと会場を出て行こうとする。
「え? はあ!?待って下さい!」
ユリフィエは男に追いすがり腕を掴む。
「他に何かありますか?」
「……えっと……お金ではなく、この国にいる間に受けた恩をお返ししますわ!」
「あぁ、ならいりません」
男はユリフィエの手を払いのけ、会場の外へ出て行ってしまう。
「あっ!」
ユリフィエは部屋の外で男に声をかけ続けるが反応はない。
「……お父様に何と報告しよう……」
◇◇◇◇◇◇
彼の名前はクルツ・コーンウォリス。この国の王子だったらしい。
王国主催のパーティに出席していて、他のご令嬢方の相手をしているところだ。

この国はジア王国と隣接していて、魔族の影響は私の国にもふりかかる問題になる。
この問題を解決するために、先々代よりも前に封印したはずの王族の持っている聖女の力を解放するお話。
その間に彼との恋がはじまる...とか、はじまらないとか...。
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