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第3章 国際首脳会議
港視察交渉
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アゼミア大帝国との交渉の翌日早朝。クリスタルとルーグは、今度はハルシャル王国の国王と第一王子の四人で自国の港を視察をしている。ハルシャル国王と王子は白く生地の薄い軽装をしているものの、気品を感じさせる衣装である。その少しだけ日焼けをしたような肌に、金の装飾が映える。今回は『国王とその側近としての視察』のため、クリスタルとルーグは普段の視察では着ない、正装で来ている。公式の視察と言う事もあり、周りは護衛に囲まれ遠目から国民が見に来ている。レイレード王国で一番大きな港を見て、ハルシャル国王が頷き感嘆する。
「これはまた大規模な港と倉庫ですな。我が国と肩を並べるくらいではないでしょうか?」
「いや、流石に海域の広さもあるから、そちらの国の港の方が大きいぞ。」
「それは嬉しい評価ですな。ですが、貴国の港は最新技術を使われておりますのは、我が国と大きく違う所ですな。さすがは技術大国です。」
ハルシャル国王は素直に人を評価する。クリスタルがこの国王を気に入っている理由である。それは相手も同じらしく、互いに話が弾む。一方の王子はクリスタルの傍に控えているルーグに話しかける。
「側近殿。ここではどのような海産物が捕れるのですか? 我が国との違いに興味がありまして。」
「魚や貝、海藻がメインです。魚に関しては、貴国の方が種類は豊富でしょう。貝と海藻につきましては、我が国では養殖をメインにしております。」
「養殖、ですか。我が国とはその点が大きく違うのですね。我が国は海に囲まれた土地ですので、海産物は育てる必要が無い程に豊富ですから。きっと味や価格の違いもあるのでしょうね。」
「仰る通りです。やはり養殖より天然で取れる物の方が味が良いです。ですが、天然物は安定して大きな物が取れません。そのため、価格も高めになってしまう傾向がございます。」
「そうなのですか。我が国での野菜と同じ問題が起きているのですね。」
こちらは互いの国の違いについて話が始まる。どちらの会話も弾み、視察も進む。馬車に乗り港を離れ、今度は造船所の視察をする。職人がせっせと作業を行っている。その中にいる職人を見て、ハルシャル国王がクリスタルに問う。
「この職人の方は、もしかして『セイレーン』の種族ではないですか?」
「そうだな。潜水できる種族であるセイレーンは、漁師や造船所といった水にまつわる仕事で重宝されている。そこまで多くのセイレーンの国民が居る訳ではないが、頼もしい種族だな。」
「それでも人数はいらっしゃるのですね。我が国ではセイレーンは『海に安寧をもたらすとされ、崇めるべき種族』です。ですが同時に『高位種族』であるために数が少ない。私も直接セイレーンを拝見するのは数回程度でございます。」
「『高位種族』は、繫殖期が特殊だ。故に個体数が少ない。致し方ないのはあるだろうな。」
「そうですな。こうしてレイレード王国という『死者の国』で、彼ららしく過ごせるのを見られただけで、海の民である我々は嬉しい限りです。」
ハルシャル国王は、何処か寂し気な眼でそう言う。クリスタルはそれに対して言葉を紡ぐ。
「ここは『死者の国』。この国である程度暮らし亡くなれば、何処かの世界で転生する事が出来る。そして生前の行いとこの国での行い次第で、転生する種族を選ぶ事も出来る。ここのセイレーン達は、皆『またセイレーンとして生まれたい』そうだ。何時か、そちらの国に行く者もいるだろうな。」
「そうですな。それまで我々は気長に待ちましょう。我々と、セイレーン達の海を守りながら。」
その言葉を聞き、クリスタルは以前上がって来た報告書を思い出す。
「そうか。そちらではセイレーンは海賊のせいで数が激減しているんだったな。」
「はい。禁地としているセイレーンの住処を、海賊や金儲けの漁師が荒すのです。兵士の見回りをセイレーン達に提案したのですが、セイレーン達はそれを断ってしまいました。」
クリスタルは顎に手を当て考える。今は自国の国民であるセイレーン達が、何時か生まれ変わる場所を確保するのも自身の仕事であるからである。それに、恩を売っておいて損はない。
『何か手立ては無いか』
そう考え、ふと思いつく。
「なぁ、ハルシャル国王。ちょっと考えがある。」
「なんでしょうか?」
セイレーン達を見ていたハルシャル国王は、隣にいるクリスタルへ向き直る。クリスタルは、長年の経験から提案する。
「セイレーン達には悪いかもしれないが、良い案がある。」
「と、言いますと?」
「セイレーンの住処の間近に、観光地を作ればいい。」
ニヤリと笑うクリスタル。固まるハルシャル国王。後ろで同じく固まる王子。そして頭を抱えそうになっているルーグ。
場の雰囲気が、一瞬にして固まる。クリスタル一人を残して。
「これはまた大規模な港と倉庫ですな。我が国と肩を並べるくらいではないでしょうか?」
「いや、流石に海域の広さもあるから、そちらの国の港の方が大きいぞ。」
「それは嬉しい評価ですな。ですが、貴国の港は最新技術を使われておりますのは、我が国と大きく違う所ですな。さすがは技術大国です。」
ハルシャル国王は素直に人を評価する。クリスタルがこの国王を気に入っている理由である。それは相手も同じらしく、互いに話が弾む。一方の王子はクリスタルの傍に控えているルーグに話しかける。
「側近殿。ここではどのような海産物が捕れるのですか? 我が国との違いに興味がありまして。」
「魚や貝、海藻がメインです。魚に関しては、貴国の方が種類は豊富でしょう。貝と海藻につきましては、我が国では養殖をメインにしております。」
「養殖、ですか。我が国とはその点が大きく違うのですね。我が国は海に囲まれた土地ですので、海産物は育てる必要が無い程に豊富ですから。きっと味や価格の違いもあるのでしょうね。」
「仰る通りです。やはり養殖より天然で取れる物の方が味が良いです。ですが、天然物は安定して大きな物が取れません。そのため、価格も高めになってしまう傾向がございます。」
「そうなのですか。我が国での野菜と同じ問題が起きているのですね。」
こちらは互いの国の違いについて話が始まる。どちらの会話も弾み、視察も進む。馬車に乗り港を離れ、今度は造船所の視察をする。職人がせっせと作業を行っている。その中にいる職人を見て、ハルシャル国王がクリスタルに問う。
「この職人の方は、もしかして『セイレーン』の種族ではないですか?」
「そうだな。潜水できる種族であるセイレーンは、漁師や造船所といった水にまつわる仕事で重宝されている。そこまで多くのセイレーンの国民が居る訳ではないが、頼もしい種族だな。」
「それでも人数はいらっしゃるのですね。我が国ではセイレーンは『海に安寧をもたらすとされ、崇めるべき種族』です。ですが同時に『高位種族』であるために数が少ない。私も直接セイレーンを拝見するのは数回程度でございます。」
「『高位種族』は、繫殖期が特殊だ。故に個体数が少ない。致し方ないのはあるだろうな。」
「そうですな。こうしてレイレード王国という『死者の国』で、彼ららしく過ごせるのを見られただけで、海の民である我々は嬉しい限りです。」
ハルシャル国王は、何処か寂し気な眼でそう言う。クリスタルはそれに対して言葉を紡ぐ。
「ここは『死者の国』。この国である程度暮らし亡くなれば、何処かの世界で転生する事が出来る。そして生前の行いとこの国での行い次第で、転生する種族を選ぶ事も出来る。ここのセイレーン達は、皆『またセイレーンとして生まれたい』そうだ。何時か、そちらの国に行く者もいるだろうな。」
「そうですな。それまで我々は気長に待ちましょう。我々と、セイレーン達の海を守りながら。」
その言葉を聞き、クリスタルは以前上がって来た報告書を思い出す。
「そうか。そちらではセイレーンは海賊のせいで数が激減しているんだったな。」
「はい。禁地としているセイレーンの住処を、海賊や金儲けの漁師が荒すのです。兵士の見回りをセイレーン達に提案したのですが、セイレーン達はそれを断ってしまいました。」
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「と、言いますと?」
「セイレーンの住処の間近に、観光地を作ればいい。」
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