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40話 お誘い
しおりを挟む「ふーん、内容は分かったけど、本当にエリシア様はレオンハルト様の事はなんとも思ってないの? 」
クリスティーナ様がやっと耳を傾けてくれたので、経緯を一気に話した。
「ええ 、なんとも思っていないわ 」
自信を持って答えたつもりどけど、心のどこかで後ろめたさが湧き上がる。
その思いは奥底に沈めてクリスティーナ様を見据える。
「・・・分かったわ、今回は信じてあげる。それにしても、レオンハルト様は意外と狡猾なお人柄なの? 」
レオンハルト様について、詳しい事は話していないので、クリスティーナ様はまだ猫かぶり王子のレオンハルト様しか知らない。
あの温和な感じから狡猾なイメージは思いつかないわよね。
「クリスティーナ様も接する機会が多くなれば気づくと思うけど、レオンハルト様は小説のイメージとは全然ちがうわよ 」
「そうなの? でも、私は仲良くなる機会なんて無いわ 」
少し面白くなさそうに、だけど寂しそうに呟くクリスティーナ様に、私はにっこり笑ってみせる。
「その笑顔は何? 自分が優位だと言いたいの? 」
怪訝な顔で私を見るクリスティーナ様。
「そんなこと思ってないわ、ねぇ、クリスティーナ様、協力してもらいたい事があるんだけど、いいかしら? 」
「協力ってなに? 」
さらに怪訝な表情になるクリスティーナ様に、私はディアルドでの提案内容を話した。
「なるほど・・・確かにこの世界には移動方法は馬しかないものね、鉄道があれば便利になるし、一気に文明が進むんじゃない? 」
「鉄道の事を知ってるのは転生者である私とクリスティーナ様だけだと思うの。他に転生者が居なければ・・・なんだけど、だからこれからのディアルドとの協力をクリスティーナ様にも、助けてもらいたいの 」
意気揚々と話す私に、クリスティーナ様は少し引き気味に、微妙な表情になる。
「私が? 」
「ええ、ぜひ知恵を出して協力して欲しいの 」
「それは無理だわ、この世界で女性が前に出る事は嫌がられるのよ、それはエリシア様も知ってるでしょ? 周りから疎まれて弾かれるわよ 」
クリスティーナ様の反応はこの世界の事をよく分かってる反応だ。
私もそう思っていた。
「この件はレオンハルト様が関わってるから、きっとレオンハルト様が守ってくださるわ、レオンハルト様と関わる機会も多いわよ 」
「レオンハルト様が? 本当に? 」
私の言葉に、少し身を乗り出すクリスティーナ様。
「ええ、本当よ 」
私の言葉に、クリスティーナ様はしばらく考え込む。
「それならいいかもしれないわね・・・それにしても、レオンハルト様は何故エリシア様にそんな事をさせようとしてるのかしら 」
クリスティーナ様の言う事は最もだ。私もレオンハルト様が何がしたいのか分からなかったけど、もしかして・・・と、一つの結論に至っている。
「私も分からないのだけど、もしかしたら、レオンハルト様は女性がもっと尊重される、女性も男性と同じように働ける国を作ろうとしてるんじゃないかしら・・・」
「女性が? でも、レオンハルト様は何のためにそんな事をするのかしら? 」
クリスティーナ様の疑問は私も考えた。
レオンハルト様が女性が活躍できる場を作って何のメリットがあるのか分からない。
「それは分からないわ、今度聞く機会があったら聞いてみようと思ってるの 」
何時もはぐらかされて肝心な事は教えて貰えてない気がするんだけど、その内教えてくれるかなと思っている。
あれ? そう言えば、お兄様は事情を知ってるみたいだった。最初からレオンハルト様に協力してたみたいだし、お兄様に聞いた方がいいかも知れない。後で聞いてみましょう。
とりあえず、今はこの場を乗り切らなくちゃ。
「どうかしら? 協力して貰えないかしら 」
もう一度クリスティーナ様をまっすぐに見つめて確認する。
クリスティーナ様は少し目を伏せて考えているようだったけれど、しばらくして目線を戻すと、私を見つめる。
「分かりました。協力します 」
「良かった、私一人では不安だったの、クリスティーナ様がいて下さると心強いわ! 」
本当に、私の記憶だけで実現できるのか不安だったので、クリスティーナ様の協力はとても心強い。おまけに、レオンハルト様との事も何とか回避出来たみたいで、ほっと一安心だわ。
なんて事を思って一人嬉しさを噛み締めていると、クリスティーナ様がにっこり笑って私を見る。
「この件はこれで置いておいて、ひとつ聞きたいことがあるのだけど、エリシア様、これは貴方が書いたものなの? 」
そう言って、後ろから出したのは分厚い紙の束だった。
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