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25話 視察会

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午前中のお茶会が終わると、戻って来たレオンハルト様と一緒に軽い昼食をとる。
午後はみんなでディアルド王国の視察会になっている。

「エリシア、茶会はどうだった? 」

食事をとりながら問いかけてくる。今はレオンハルト様の部屋での休憩なので猫は脱ぎ捨てている。

「レオンハルト様の話題ばかりでしたわ、おモテになりますわね 」

ちょっと嫌味を込めて言ってみる。いつもの仕返しよ!なのにレオンハルト様は顔色ひとつ変えない。

「そうか、他には? 」

スルーされてしまった・・・

「婚約者候補にと連れてこられたと思われるご令嬢方に睨まれてしまいましたわ 」

「うん、それはいい事だな 」

にんまり笑うレオンハルト様、ちょっと、普通恋人が睨まれて喜ぶ人なんて居ないわよ!

「それと・・・身分を聞かれました 」

だから身分違いだと言ったのよ、もっと身分の高い方を選べばよかったのに・・・

「そうか、それは嫌な思いをさせたな、すまない 」

あら、レオンハルト様が気を使っていらっしゃる。なら私を選ばなければよかったのに。

「元から身分違いだと分かっていましたから、気にしていませんわ 」

「それもそうだな、エリシアは割り切れる奴だよな 」

「ええ、仕事ですから 」

割り切りますとも。ここでの滞在が終われば開放されるんですから。
済まして答える私をレオンハルト様はククッと声を殺して笑う。

「・・・レオンハルト様、失礼ですわよ 」

「ああ、すまん、午後からは視察に出かけるけど、一緒に来てくれるよな? 」

「ええ、それはぜひ私も行かせてください! 」

「だよな 」

納得してまたククッと笑うレオンハルト様は置いておいて、視察だなんて、そんな面白い事は是非ご一緒させて頂きたいわ。
ご婦人方は遠慮する方が多いと聞くけれど、ただそういったことに興味がなく、歩き回るのが嫌なのね、私は知識を得る機会のある男性が羨ましく思っていたのでこの機会だけは本当に嬉しい。


午後になって、視察のため用意されたバスのような大きな馬車に乗り込むと、まず馬車は鉱山を目指す。

馬車の中には女性は約2割ほど、やっぱり鉱山だとかには興味無いわよね、それよりもお城で優雅にお茶を楽しんでる方がいいのかもね。

「エリシア嬢はレオンハルト様とご一緒されるのですね 」

通路を挟んだ隣に座っていた一人の男性が私に話しかけてくる。
この人は確かエメロン公国のロバルト大公様よね。

「ええ・・・少しでもレオンハルト様とご一緒にいさせて頂きたいですから 」

少し恥ずかしそうに(本当に恥ずかしいんだけど!)答えると、ロバルト大公様は、「ははは」と笑う。

「それは羨ましい、私の妻と娘は着いてきてくれませんでしたからね 」

少し寂しそうに空いた隣の席を見る大公様が少し可哀想に見える。

「鉱山見学はあまり女性向きではありませんからね、仕方がないですよ 」

私がどう返そうか戸惑っていると、レオンハルト様が代わりに返してくれた。

「そうだね、貴殿が羨ましいですよ 」

「ふふっ、エリシアは私にベタ惚れですからね、少しでも一緒にいたいと言ってくれます 」

そう言って私の肩を抱き寄せる。

「レオンハルト様・・・」

見つめ合う二人、きっとレオンハルト様は心で笑ってるわ、完璧な猫かぶり王子なので、柔和な笑顔を張りつけたままでそんな素振りは一切見せないけれど、私にはわかる。絶対心で爆笑してるに違いない。
うん、私もレオンハルト様の事がちょっと分かるようになったかもしれない。

そんなことを思いつつラブラブアピールで見つめ合っていると鉱山に到着した。
鉱山自体初めて来るのでなんだか社会見学旅行に来た気分で案内について見学して回る。
ディアルドは国土の何処を掘っても鉱石が出るらしく、枯渇は数百年は無いそう。
それに、鉄鉱石の採掘時に金も少量取れるとか、金はこの世界でも貴重だもの、高くで取引出来るため、ディアルドも豊かな国なのね。そう言えば、この世界には自動車や鉄道も無いから鉄をそんなに使うことは無い、武器なんかに使うから軍事力を持ってる国はディアルドと仲良くしたがるのよね・・・鉄道・・・あれば便利よね・・・機関車の動力は石炭を燃やした蒸気、この国にはバスのような大きな馬車を作る技術もあるし出来ないことはなさそうね、まあ、私がそんな事を言うことは無いでしょうけどね。

鉱山を見学した後は、製鉄所を見学させてもらった。確かに見学したどちらも男の仕事って感じで女性が行くところではないかもしれない。
そんな事を思いながら、次の目的地へ向かう為、馬車に戻ることになる。

「レオンハルト様、すみません、少しお化粧室に行ってまいります 」

「うん、気を付けてね 」

「はい 」

女性が少ないのでお手洗いも言い出しにくいけれど、生理現象は抑えられないものね。

スッキリして化粧室から出てみんなの元に戻ろうとした時、3人の男性が私の前に立ちはだかった。



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