22 / 71
22話 猫かぶり王子
しおりを挟む晩餐会では、言われていたように、隣国の代表の方も沢山来ていて、レオンハルト様はそんな方達とほとんど顔見知りのようで、楽しそうに会話を楽しんでいた。
「いや、レオンハルト殿下にこんな美しい婚約者がいらっしゃったとは、流石は殿下、羨ましいですね 」
ニヤニヤといやらしい笑顔で私を舐め回すように見つめるのはカサエル王国の第一王子、ギルカザフ様だ。
彼の隣に座っているアーニャ妃もとても素敵なのに、そんな目で私を見ないで欲しい。
はっきり言って気持ち悪い。だけど相手は王族、笑顔で耐える。私えらい!
「ギルカザフ殿、私の大事な婚約者をそのような目で見ないで頂けますか? 」
私の隣に居る猫かぶり王子はやんわり笑顔で注意してくれてるけど、迫力がない。ギルカザフ様は聞いていない様子。
それを見て、レオンハルト様は私の肩に手を回して引き寄せると、頬にキスをした。
突然の事にびっくりして声を上げそうになったけれど、それはぐっと耐える。
「レオンハルト様! 皆様の前ですわ 」
肩を抱かれたままレオンハルト様を見ると、熱い眼差しで私を見つめる。
「他の男にエリシアが見られてると思うと、ヤキモチを妬いてしまうよ、エリシアは私のものだからね 」
「ええ、もちろんですわ 」
「エリシア・・・愛してるよ 」
「レオンハルト様・・・私もです 」
そう言って見つめあっていると、「コホン」と咳払いが聞こえる。
咳払いのした方を見ると、シュナイダー王がこちらを見ていた。
「とても仲がよろしいのはいい事だが、皆の前だ、睦み合うのは程々にしてくれ 」
「そうですよ、こんなに仲の良い女性がいらっしゃるとは・・・私の娘を・・・と思っておりましたが、残念です 」
シュナイダー王の後に続けたのはイルダーン国の国王だ。
それに従うように、他の国の方々も「同じく」と口々に話し合う。
レオンハルト様が言っていたように、レオンハルト様を婿に望む国が多いんだと改めて分かった瞬間だった。
確かに我国は大国で、豊かな国だし軍事力もそれなりに持っている。
そんな国の第二王子、しかも超イケメンとか、かなりの優良物件だわね、そんな事を知ってか知らずか、うちの国王様はレオンハルト様を王族の外交担当に置いている。
もしかしたらわざとかもね、婚約者のいないレオンハルト様なら外交相手に下心を抱かせ、こちらの優位に立つ事が出来るもの。
そうなると国王様もしたたかよね・・・なんて事を考えていると、レオンハルト様が私の肩に置いていた手を下ろす。
「これはお恥ずかしい、エリシアを取られてしまうような気がしてつい 」
レオンハルト様は私から離れると照れ笑いをしながら答える。
つい考え事をしてしまったわ。
「いや、レオンハルト殿とエリシア嬢は美男美女でとてもお似合いだ、皆羨ましいのだよ 」
「嬉しいお言葉ありがとうございます 」
シュナイダー王の言葉にレオンハルト様は王子スマイルで答える。
その笑顔に魅入られるように顔を赤らめているご婦人が何人もいた事は内緒にしておいた方が平和よね。
暫く歓談は続き、終わったのは10時を過ぎた頃だった。
レオンハルト様は他の国の方々から沢山お酒を勧められていたので、結構酔っていらっしゃるのか、さっきから少し足取りが不確かだ。そんなレオンハルト様を支えるように寄り添って歩き、レオンハルト様の部屋の前まで戻ってきたのを見て、やっと開放されるとほっとする。
「レオンハルト様、お疲れ様でした。おやすみなさいませ 」
かなり酔ってるみたいだけど、後の事は近侍のライル様に任せておこう。
そう思ってレオンハルト様に挨拶をして自分の部屋へ向かおうとすると、突然手を掴まれてレオンハルト様の腕の中に引き寄せられてしまった。
「ちょっ、レオンハルト様? 」
慌てる私をレオンハルト様は甘い瞳で見つめる。
「離れ離れなんて嫌だよ、今夜はずっと一緒だよ 」
甘い声で囁いた後、私はレオンハルト様の部屋に引きずり込まれてしまった。
0
お気に入りに追加
1,424
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる