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11話 王立図書館

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「エリシア、もう図書館に行くのかい? 」

「ええ、早く行きたくてうずうずしてたんですもの、少しでも早く行って長くあの空間にいたいの 」

お兄様が驚くのも無理はない。
あまり出かけない私が朝から準備万端で馬車に乗り込もうとしているのだから。
昨夜はレオンハルト様の意味不明な招待に困惑したけれど、念願の封書は手に入ったし、レオンハルト様の事なんてもうどうでもいいわ。私は開館と同時に図書館に入って閉館まで居続けるのよ!

「お兄様、行ってきます! 」

私は意気揚々と図書館へと向かった。


王立図書館に着いて受付に封書を見せると、何時もは入れない受付の裏の扉をすんなりと通ることが出来た。
始めて足を踏み入れる場所にドキドキとワクワクが止まらない。
本は前世でも好きだったけれど、今世でもっと好きになった。とにかく知らない事を教えてくれる本は読んでいてドキドキする。
ここには今まで呼んだことの無い本が沢山あると思うとワクワクする。

私は沢山の本棚の並ぶ一角から本を数冊取ると、配置されているテーブルセットに腰を下ろして本の中に引き込まれて行った。

何度か書棚とテーブルを行き来して数冊を読むことが出来たけれど、まだまだ読みたいものが沢山ある。

「一日じゃ全然足りないわ・・・」

気が付くと時計の針は閉館時間前になっていて、時間があっという間にすぎてしまったショックと悔しさに天井を仰いで目を閉じた。

「じゃあ、明日も来る? 」

不意に横からする声に驚いて体が反応して跳ねる。
今まで私以外誰もいないと思っていたのに、急に声がして心臓も飛び跳ねた。
びっくりしながら横を見ると、机に肘を乗せて頬杖をつきながら和やかに私を見つめるレオンハルト様が居た。

「レオンハルト様!? 何故ここに? 」

焦って叫んだけれど、それと同時に落ち着いた自分が心の中でつぶやく。
そうよこの場所に入る権利をくれたのは誰? この人なのよ! まんまと釣られて来ちゃったのは私、ここに私が来ると分かってるんだもの、パーティーで話すよりここの方が誰にも邪魔されないわ。
初めからこれが狙いだったのね・・・でも、もう閉館間際、残念だったわね、あまり話す時間はないわ。

「・・・いつからいらっしゃったのですか? 」

平常心を取り戻してレオンハルト様を見る。

「んー、1時間ほど前かな、仕事が片付いたのでここで君の事を眺めてた 」

・・・は? 1時間? 1時間の間ずっと何も言わずに座ってたの? なんの為? 話がしたかったのならか話しかけるわよね? 
レオンハルト様の行動が全然わからない。

「全然気が付きませんでしたわ。失礼致しました。 私を見ていたとは? ・・・監視ですか? 」

何も言わず、そっと見てたって事は私が何か盗むんじゃないかと思われてる?  それならわざわざレオンハルト様自らそんな事しないわよね?

「監視か、そうかもね 」

レオンハルト様はくすくすと楽しそうに微笑む。
やっぱり私は信用されてないんだわ。

「エリシア嬢の表情は見てて飽きないな、とてもキラキラした瞳で、コロコロと変わる表情はずっと監視してたい気分だよ 」

はい? 

「あの・・・レオンハルト様? 」

ダメだ、相変わらず柔和な笑顔で私を見るこの人の考えが全く読めない。
私の表情を見てて何が楽しいのか、王子様はそんなに暇なの?

「エリシア嬢に会いたくて来たんだけど、エリシア嬢の読書の時間を邪魔するのは悪いと思って、隣で君の顔を眺めてたんだ  」

レオンハルト様、にっこり笑ってますけど、それどういう意味ですか?
何故私にそんなに興味を示されてるのか、さっぱり分かりません。
物語を修正しようとする強制力か何かなの?
あ、そう言えば、昨日クリスティーナ様とレオンハルト様は転生者では無いかと疑ったばかりだったわね。
なんだかレオンハルト様は私に気があるような素振りだし、聞いてみてもいいかしら。

「レオンハルト様、スマホってご存じですか? 」

「すまほ? 何それ? 本の題名? 」

私の質問にレオンハルト様は首をかしげながら尋ねてくる。その表情からは嘘を言っているようには見えない。
あれ? 転生者じゃないのかな?

「いえ、何でもないです 」

ヤバい、違った時の誤魔化し方考えずに聞いちゃった。

「ん? 何か言いたかったんじゃないの? 」

「それはもういいです。それより! レオンハルト様は私に何かご用があって来られたのでは? 」

話を逸らしたくて言った言葉だけど、レオンハルト様はそれに気づいているかのように、にっこり笑う。

「特に用事・・・では無いんだけど、エリシア嬢の事を見ていたかっただけなんだ、迷惑だったかな、ごめんね 」

私に向けられたその笑顔があまりにも素敵すぎて、思わず赤面してしまう。
レオンハルト様はそんな私を見つめて囁く。

「エリシア嬢、私は君に恋してる 」



・・・・・・・・・は?



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