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⑥ミカの両親
しおりを挟むそれからの一ヶ月は早かったわ。
ドレスを作るための採寸や、ルシリア帝国でのマナー等を教えて貰って、とても充実した日々があっという間にすぎて、今日は本番です。
コンコンコンとドアをノックする音がしてミカが入ってくる。
「レイラ嬢、用意は出来ましたか?」
わたくしはミカを見た瞬間、息が止まりそうなほど胸が高鳴った。
ミカはいつもの黒い衣装ではなく、白を基調に黒のポイントがある衣装を着ていて、マントも同じ白で所々に金の刺繍が施されている。
その姿があまりにも素敵すぎて、ドキドキが止まらない。
「レイラ嬢、本当に綺麗です。まるで妖精のようですね。」
ミカがわたくしを見て褒めてくれる。
ミカが用意してくれたドレスは本当に素敵だった。
ミカが今着ている服と同じ生地のほんのりクリーム色がかった白いドレスで、お揃いで作ったと分かる金の刺繍が施されている。ミカはポイントが黒だけど、わたくしのドレスのポイントはふわりと広がったドレスの腰元と裾に付けられた青い薔薇。そして、わたくしのアップした髪にも同じ青い薔薇が付けられている。
青の薔薇はミカの瞳の色のようで、付けているのがとても嬉しい。
「ありがとう。ミカもとても素敵だわ。」
「惚れ直しましたか?」
わたくしが褒めると、ミカが嬉しそうに言う。
その正直な質問に、わたくしは照れながらコクコクと頷く。
「では、行きましょうか。」
ミカがわたくしに腕を差し出すので、わたくしはそっとミカの腕に手を回す。
「その前に、上皇と上皇后には前室で待ってもらっているので、皆の前に出る前に挨拶をして頂けますか?」
「分かりましたわ。」
ミカのお父様とお母様にお会いするのはドキドキするけれど、とても楽しみです。
どんな方なのかしら・・・
ミカに連れられて部屋に入ると、上皇様と上皇后様が待っていた。
「父上、母上、レイラ嬢をご紹介させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
ミカがおふたりに話しかける。
「クロード、そちらがグレイシス家の?」
「ええ、そうです。」
ミカがわたくしに挨拶を促す。
「上皇様、上皇后様、お初にお目にかかります。わたくしイルザンド王国のグレイシス侯爵が娘、レイラ・グレイシスと申します。」
わたくしは淑女の礼を腰を下げて深々とする。
「貴方がクロードを救ってくれた方でしたか。本当にありがとう。」
上皇様がわたくしに頭を下げる。
上皇様はミカより少し身長は低いけれど、恰幅のいい体格で、黒髪に、ミカと同じ色の瞳を持っている。だけど、ミカとは似ていない。威厳のあるお顔だわ。
「上皇様、わたくし等にそんな事なさらないでください。当たり前のことをしたまでですわ。」
「今は上皇と上皇后では無く、クロードの父母として会っているのだ。そんなに畏まらなくていい。貴方とグレイシス侯爵のお陰で、今のクロードがあるのだ。いくら感謝しても足りないくらいだよ。」
そう言ってにっこり笑う上皇様。上皇様とミカ、性格は似ているのかもしれない。
「レイラ嬢、とても可愛らしいわ。ドレスも良くお似合いよ。こんな可愛い方と一緒に居たらクロードもメロメロになるわね。また時間がある時にでも、クロードが執事をしていた頃の話しが聞いてみたいわね。」
口元を隠しながら上皇后様が話す。
きっとクスクスと笑っていらっしゃるのだ。
上皇后様は髪の色は栗色で、瞳の色はグレーだ。お顔は・・・ミカはお母様似なのね、お母様もとてもお美しいです。
「レイラ嬢、ぜひまたお茶をしましょうね。」
「上皇后様・・・ありがとうございます。光栄ですわ。」
この御両親、どちらもミカに似ている。
ミカの性格はこのお二人から生まれたのね。
いい人達で良かった。
「父上、母上、俺はこの機会にレイラ嬢を俺の婚約者として紹介したいと思っています。レイラ嬢を婚約者とする事にお許しを頂いたてもよろしいでしょうか?」
ミカが改まってご両親にお願いする。
え?そうでしたの?婚約して頂けるの?
突然聞いたことにちょっとびっくりしたけれど、
わたくしも一歩下がってミカの後ろで頭を下げる。
「ウム、許可する。それと、クロードの願いは聞いている。皆を納得させることが出来るのか?」
あっさりと許可を下さる上皇様。
ミカの願い?なんの事かしら?
「はい、必ず納得させてみせます。」
ミカが誓う。
何を納得させるのかしら?
「可愛らしいお嫁さんが出来て私も嬉しいわ。」
上皇后様も嬉しそうにして下さる。
「ありがとうございます。」
ミカがお礼をした後、わたくしも続けて淑女の礼を取る。
そして、お客様の揃った会場へ先に上皇様と上皇后様がが入って行かれた。
今日の主役は皇帝陛下です。
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