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番外編 レティシア
7話 引きこもり
しおりを挟む家に帰ると、お父様が僕の姿を見て何があったのか聞いてきた。
僕は今日あったことを正直に話した。
すると、お父様はかなり怒り狂っていて、直ぐにサーヤ様のお屋敷に駆けつけて行った。
その日の夕方、向こうの家と話が着いたのか、戻ってきて僕を呼び出した。
「レティシア、私があんな家の招待状なんて持ってきたから、レティシアに不快な思いをさせてしまったな、怖かっただろう 」
申し訳なさそうに話すお父様に、僕はいつもの笑顔で返す。
「全然大丈夫だよ、新しいお友達も出来たし、ちょっとびっくりしたけど、僕がクラウス様を取ると思われてたみたい。僕は元騎士だから、あれくらい一人で対処できるよ? 」
「いや、もっと大人数で来てたらどうした? レティシアでも、逃げるのが難しかったらだろう? 」
そう言われると・・・以前の第七の奴らの事を思い出す。
卑怯な奴はとことん卑怯だもんね・・・僕も大人数だと勝てる自信ないや・・・
「そうだね・・・今日は無事逃げることが出来て運が良かったのかも・・・」
「レティシア、お父様はレティシアをしばらく外に出したくない。出来れば、家にいてくれないか? 」
そう言われて、僕も頷く。
僕があちこち行くと、何故かトラブルが起こる。
僕は大人しくしといた方がいいのかも・・・
「はい、そうします」
それからしばらくして、フローラ様から手紙が来た。
突然居なくなって心配した事、その後、僕のお父様が怒り狂って乗り込んできて驚いた事が書かれていて、サーヤ様は僕がお兄様を誑かしたと言っているらしいけど、僕がそんな事をするようには思えない。何があったのか教えて欲しいと言った内容だった。
僕は正直にあった事をフローラ様に書いて送った。
フローラ様から返信で、「怖い思いをされたのですね、私はレティシア様を信じます」と書かれていた。
その後、何故か僕がジョセフを誑かして、ジョセフの友達数人と寝たという噂が広がっていると耳にした。
どうして僕がそんな事をしなくちゃいけないんだ・・・
まぁ、噂なんてそのうち消えるか、今は僕は外に出る気もないし、そのうちみんな忘れるかな・・・
って思ってたら、噂を耳にしたクラウス様とカルロス様から手紙が来た。
僕のことを心配してくれるのはありがたいけど、クラウス様達が僕を庇うと、また他の令嬢から反感を買うかもしれない。
なので、2人には理由を説明して、そっとしておいて欲しいと、お願いした。
それからも、フローラ様は僕の事を信じてくれて、何度か手紙のやり取りをした。
信じてくれる友達が出来ただけでも、あのお茶会に行った意味はあったかな・・・
クラウス様や、カルロス様からも、時折手紙が来るけれど、現状の報告とかで、特に深い内容ではない。
私が表に出なくなって、1年半があっという間に過ぎていた。
たまにフローラ様やナタリー様、サリナ様が遊びに来てくれるので、寂しくない日々を過ごしていた。
噂も徐々に消えたそうだけど、僕は表に出る気になれなくて、ずっと出ていない。
そんなある日、クラウス様からパーティーのお誘いの手紙が来た。
私は行く気ないんだけどな・・・
そう思って断ろうとした時、最後のメッセージに目が止まった。
「きっとレティシアが喜ぶ事が起きるよ」
どういう意味?
喜ぶ?
・・・もしかして・・・ギル? ギルが帰って来るの?
その後、クラウス様に真相を尋ねる手紙を送ったけど、何も答えて貰えなくて、「気になるならおいで」という返事だけが帰ってきた。
仕方ないので、重い腰を上げてパーティーに参加することになった。
しばらくして、パーティーの日がやって来た。
私は本当に行っても大丈夫なんだろうか・・・
またクラウス様達と話したら目をつけられるんじゃないかな・・・
面倒事にならなければいいけど・・・
不安の方が大きくて、入口まで来てやっぱり辞めようかと思ってしまう。
ギルならきっと、ここで待ってなくても会いに来てくれるよね?
私はここまで来て意気地が無くなって踵を返して帰ろうとした。
「あら、レティシア様、お久しぶりですわね」
後ろを向いた途端、会いたくない人に出会ってしまった。
サーヤ様だ。
「サーヤ様、ごきげんよう」
1年半前、勝手に帰ってしまった事は手紙では謝ったけど、あれ以来会っていなかった。
「ごきげんよう、どちらへ? 会場はこちらですわよ? 」
「あ、ちょっと! 」
そう言ってサーヤ様に腕を引かれて会場内に連れていかれてしまった。
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