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77話 別れの前に・・・

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「レティシア・・・ありがとう。」

僕の待つと言う言葉に、ギルも笑顔で答えてくれる。

僕はギルに想いを伝えることが出来た。
ギルの想いも知ることが出来た。
だから大丈夫。僕はいつまでもギルを待つ。

「僕も、おしとやかな女性になれるよう頑張るね。」

僕は今のままじゃ、おかしな女としか受け取られない。
ギルの隣に立ってもギルに恥を描かせないようにはなってなくちゃ。

「シアはそのままでいいよ、逆に女らしくされると俺が引くぞ。」

ギルは笑いながら僕の頭を撫でる。

「あ、ひどい! 僕も女らしくしたらそれなりに見えるんだからね! 」

膨れる僕を、ギルはにっこり笑いながら見つめる。

「うん、分かるよ、でも、シアが女らしくしたら、男がほっとかなくなるから今のままでいい。シアは今でも充分可愛いよ。」

ギル、だから何でそんなに甘々なの??
みんなの前で恥ずかしい。

「確かに、レティシアが女に戻ったらギルが帰って来るまで大変だろうな。」

カルロス様が何かを思い出したように話す。

「そうだね、レティシアはギルが帰るまでは家からあまり出ない方がいいかもね。」

クラウス様もそんなことを言う。

「え? 家に引きこもりなんてやだよ! 僕も外に出たいよ! 」

今まで自由だったのに、女に戻ったら出られなくなるのは嫌だな・・・

「くすくす、シア、女の子は普通家からあんまり出ないよ、お転婆なレティシアらしいけど、大人しく待っていてあげないと、ギルが落ち着いて修行出来ないよ? 」

クリスに言われて、納得してしまった。
そうか、女の子は家から出ないものなのか、僕 女の子の生き方知らないや・・・ってそれって僕ヤバくない?

「ねぇ、クラウス様、僕 女らしくなれるかな・・・」

思わず心配になってクラウス様に聞いてしまった。

「ふふっ、レティシアなら大丈夫でしょう。以前のパーティーもちゃんとレディになれてたよ。」

「以前? パーティー? なんの事だ? 」

クラウス様の言葉に、ギルが即座に突っ込んできた。
ギルは僕が女の格好でパーティーに出たの知らないのに、クラウス様のバカー!
って心の中で叫んでたら、クラウス様はくすくすと楽しそうに笑いながらギルを見ている。

「「内緒」のパーティーで、レティシアには私のパートナーとして出てもらったんだよ。」

「ああ、あの時のか、あれはかなりそそられる姿だったな。」

カルロス様も同調する。
ギルを見ると、ギルは悔しそうに2人を見ていた。

「2人とも、シアが女性の姿を見た事があるんですか? 」

ギルの質問に、2人はニヤリと笑って僕の肩に手を置いた。

「めちゃくちゃ綺麗だったぞ。」

その言葉に、ギルは悔しそうにしながらも僕を見てにっこり笑う。

「俺が帰ったらシアを独り占めするからいいです。」

えっと・・・なんの勝負をしてるんだ?

なにを張り合ってるのか分かんなくてキョロキョロする僕を見て、みんなが笑う。
なんで笑うんだ・・・


「あはは、ほんと、シアは可愛いね、皆さん、まさか今日経つなんて言わないよね? 経つまで少しだと思うけど、その間はゆっくりしていってよ。」

クリスの言葉に、カルロス様がクラウス様を見てから答える。

「俺達は・・・明日立とうと思う。レティシア、申し訳ない。」

明日?あと1日しかギルと一緒に居られないの?
でも、カルロス様達は早く帰らないといけないのも分かる。
僕に謝ったってことは、カルロス様も気を使ってくれてる。

「・・・分かりました。」

僕は笑顔でカルロス様に気を使わせないように返した。

「シア、急いでカツラを作ろう、ドレスも僕に選ばせて? 」

そう言うクリスに、僕は近付いて、肩の上でバラバラに揺れる髪を触った。

「うん、ありがとう。クリスの髪も整えないとね。」

後ほんの少しの時間だけど、クリスと沢山話をしたい。
ギルともしばらくお別れになっちゃう。
もっと一緒に居たい・・・

「レイ、今日は僕レティシアと一緒に寝ていい? 」

クリスもそう思ったのか、レイに確認してくれる。

「ああ、いいぞ。ゆっくり話してこい。」

レイがそう言うと、クリスは微笑んだ。そしてギルを見た。

「ギルは夜までは一緒に居させてあげるけど、シアと寝るなんて早いからね! 」

「・・・わかってるよ。」

ギルも口をとがらせながら答える。
なんだか拗ねてる子供みたいで可愛い。

「くすくす、僕もいっぱい話したい。」

「うん、でも夜更かしは旅に支障が出るから程々にね。」


僕達は部屋に戻ると、沢山話をした。
クリスがここに来てからの話、レイとの出会いの話、魔法の話、沢山話した。
僕の事はほとんどギルから聞いていたみたいなので、僕はクリスの話をいっぱい聞いて、泣いて、笑って、慰めあって、僕の片割れの存在を忘れないように、幼い頃のように、お互い手を繋いで眠った。



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