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72話 魔王様

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部屋に着くと、クラウス様とカルロス様は先に来ていた。
2人は騎士の正装をしている。
クラウス様とカルロス様の白黒の騎士の正装はやっぱりかっこいいな。

「クラウス様、カルロス様、そんな服何処に持ってたんですか? 」

「王子としてこれくらいの準備は当たり前だよ。」

クラウス様は僕を見てにっこり笑う。
そう言えば、クラウス様に後で報告するって言って、まだ言えてない。

「レティシア、ちゃんと言えたみたいだね。」

僕とギルが一緒に現れたのを見て、クラウス様は僕に微笑んでくれる。
僕は頷いてクラウス様を見て微笑んだ。

「クラウス様、ありがとう。」



「みんな、紹介するね。」

レイがギルを椅子に座らせてくれたのを見てから、クリスが話し出した。

「こちらが魔王様のレイグランド様です。」 

そう言って、ギルの隣に立つレイを紹介した。

「ええ? 」

僕は驚きのあまり声に出してしまった。
レイが魔王様?? クリスの恋人が?

「レイ、こちらはベルフォード王国の第二王子のカルロス様と第三王子のクラウス様だよ。2人とも騎士団の団長を務めていて、僕もちょっと戦いを見たけど、すごく強いよ。」

僕の驚きは無視してクリスが紹介を続けた。

「ようこそ、我が魔国へ、俺の事はレイでいい、よろしく。」

レイが軽く挨拶をすると、カルロス様が前に出る。

「初めまして、カルロスだ。」

「私はクラウスです。よろしくお願いします。」

カルロス様に続いてクラウス様も挨拶をすると、お互い握手をした。
魔王と勇者の末裔・・・大丈夫そう。

魔王様ってもっとごつくて怖い感じの人かと思ってたけど、レイは細身でスラリとした男前だし、優しい人だよね。

「ベルフォードの王子か・・・」

って思ったのに、レイがそう呟いてニヤッと笑った。
え? ヤバいの?
そう思ったけど、カルロス様とクラウス様はにっこり笑い返している。

「ああ、まぁ色々あるだろうけど、今はお互いそんなしがらみもないしな。」

「そうだな、クリスの祖国の王子達だしな、滞在中はゆっくりくつろいでくれ。」

レイはそう言うとにっこり笑って着席を促した。
良かった、バチバチが始まるのかと思った・・・


「それで? クリストファーは何なんだ? この城の中でどういう位置づけなんだ? 」

乾杯の後、カルロス様がおもむろに話し出した。
うん、それ、みんな気になってたよね。
そう思ってギルを見ると、ギルは楽しそうに僕を見ていた。

「何? 」

「ん? 何でもない。」

ギルはクリスのことを知ってるのかな? レイが魔王様だって事も事知ってたみたいだし。

「クリスは俺の四将の1人だ。そして、俺の伴侶でもある。手出しはするなよ。」

・・・もう、どこから突っ込んだらいいのやら・・・
クリスが魔族を束ねる将軍?

「そうだったのか、洞窟で助けてくれた時の手際は見事だったもんな、しかし、人間の、こんなに若いクリスが将軍とは・・・レイの人事か? 」

カルロス様もそう思うよね、なんでクリスが将軍?

「俺の人事だが、将軍職はクリスが実力で手に入れたものだ。」

レイはクリスの事を貶されたと思ったのか、ちょっと不機嫌そうに答える。

「カルロス様、良かったら明日僕と手合わせします? 僕、けっこう強いですよ。」

レイの様子を見てクリスが提案する。
クリスはよっぽど自信があるのか、余裕な表情だ。
カルロス様も相当強いぞ、しかも勇者の末裔の力持ってるし・・・

「それは面白いな、是非! 」

カルロス様はノリノリで答えた。

「所で・・・ここの者は私達人間が居ても警戒しませんけど、クリスのおかげですか? 」

今度はクラウス様が質問した。

「この国のほとんどの者が今の暮らしに満足している。幸せなんだよ、だから人間の国を侵して、より良い暮らしを求めることも無い。戦争をして今の暮らしを怖そうとは思わないんだ。人間が害のないやつだって言うのをクリスが証明してくれたしな。」

そう言って隣に座るクリスの頭を優しく撫でている。
クリスも嬉しそうににこにこしてる。

「そうでしたか、では、洞窟の出口で出会った者達は? 」

「ああ、あれはレイの王政反対派の奴らなんだ、人間は悪いヤツだから、みんな殺そうぜ的な危険な考えのヤツら。あの洞窟から人間国に行こうと企ててるのを僕達が阻止してるの。」

クリスが説明してくれるけど、そんなヤツらと戦っているクリスが人間なのは危険なんじゃないの?

「なら、クリスがそんな前線に立つのは危険なんじゃないのか? 狙われるだろう。」

カルロス様が僕の疑問をぶつけてくれた。

「ああ、俺も本当はそんなことはさせたくない。」

「でも、あそこを守るのは僕の祖国を守る事なんだ。ぼくがやらなきゃ。」

レイは心配そうだけど、クリスは強い瞳でレイに訴えている。

「そうだったのか・・・クリスが俺たちの国を人知れず守ってくれていたとは・・・ありがとう。」

カルロス様は素直に感謝の言葉を口にした。
洞窟で、実際に戦ってカルロス様も危険な奴らだと実感してたんだろう。

「えへへ、そんな凄いことしてないけど、僕が旗印になってた方が相手の心理を逆撫で出来るしね。」

クリスはカルロス様に褒められて嬉しそうだけど、危険なことには変わりない。心配だな・・・。




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