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18話 クリスの弱点(ギルバート)

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第二騎士団の寮はまた二人部屋だった。
しかも、今年の新入りは二人だけだから、またクリスと一緒だ。
クリスが他の奴に狙われないか心配だったから、同部屋なのは嬉しい。
また悪い虫から守ってやれる。

なのに、部屋に入った瞬間戸惑った。
ベッドにカーテンがない。

最近、妙にクリスを意識してしまう時があって、このままじゃヤバいと思っているのに、クリスの裸なんか見てしまったら、俺が変になりそうで怖い。

そう思って、慌ててクリスが俺から見られずに着替えができる場所を探した。
広い部屋なので、都合のいい事に、パウダールームも二人で入っても余裕なくらい広かった。

ここならクリスも恥ずかしがらずに着替えができる。

そう思ってクリスに報告してやると、素直に喜んでいた。
クリスは自分の裸を見られるのが嫌みたいで、必ず隠れて着替えをする。
そんなに恥ずかしがることか?と最初は思っていたけど、今は俺自身の為にも、見せないでくれと願ってしまっている。

俺はノーマルだから男なんて好きになるはずないと思っているのに、クリスの笑顔にドキっとしてしまう自分がいる。
この気持ちが何なのか、気にしないようにしてるけど、何がきっかけで一線を超えてしまいそうになるか分からない。
だから裸の姿は見たくないと言うのが俺の本音だ。
クリスは俺の事を信用しているのに、裏切りたくない。
今の関係を壊したくない。
そもそも、俺は男が好きなんじゃない。


俺達は第二騎士団を希望して、見事二人とも入れたけど、第一を選ばなくて、クラウス様にあの時出会って本当に良かった。

第一の団長、カルロス様が好色家で、団員に手を出す奴だと聞いたからだ。
その情報を得た時、俺はすぐにクリスに第二にしろと叫んだ。

クラウス様が呟いた意味がわかった。
俺達が第一に入ると確実にカルロス様の餌食になる。
男に抱かれるなんて、考えただけで寒気がする。
それはクリスも同じ気持ちだろう。


対してクラウス様は何考えてるのか分からない所はあるけど、俺達の事を守ると言ってくれた、頼もしい団長だと思った。

団員の人達との対面も終え、クリスがみんなに受け入れられた。
みんなのアイドルになるのも遠くない話だろう。
俺はいつも通りそばに居て野郎どもの毒牙から守る。

そう誓った。なのに・・・

この無防備に眠るクリスの顔。
以前にも一度クリスの寝顔は見たことあるけど、カーテンがないとこうもはっきり見えてしまうものなのか、いや、クリスがこっちを向いて寝てるのが悪い。
俺が背を向けて寝ればいいんだ。
俺はノーマルだ。なんで男の寝顔見てドキドキしてんだ。 
と、自分の気持ちを落ち着かせる。

これは、慣れるまで辛いな・・・



そんな新しい寮での暮らしにも慣れてきたある日、俺が風呂に入っていると、部屋から悲鳴が聞こえた。
クリスに何かあったのか?
俺は慌てて腰にタオルを巻いてバスルームを出た。

「クリス! どうした?!」

「ギルっ!」

俺の姿を見たクリスは慌てて俺の元に駆けてきて俺にしがみついた。

「何があったんだ?」

俺の胸に顔を埋めるクリスを見ながら問いかけると、クリスは青ざめた表情で震えていた。

「・・・どうしたんだ?」

俺はクリスを抱きしめて、大丈夫だと言うようにそっと背中を撫でながら、もう一度優しく問いかけた。

「まど、窓!」

「窓?」

窓と言われて窓を見る。
特に何も無いように思う。

「窓がどうしたんだ?」

「カーテンを閉めようと思って窓を見たら、窓の外に誰かいたんだ! ここ三階だよ? ゆ、幽霊?」

俺の胸から顔を上げて訴えるように俺を見るクリスはカタカタと震えている。

「は? 幽霊?」

そんなものいるはずないだろう・・・
俺は窓に確認に行こうとしたけど、クリスががっちり抱きついているので動けない。
仕方なくクリスを抱え上げて抱っこしながら見に行くと、窓が近づくにつれて俺の首に必死にしがみつく。

・・・なんだこの可愛い生き物は・・・

念の為、窓を開けて辺りを見回したけど、特に何も無いように思う。確認してから窓とカーテンを閉めて外が見えないようにする。

「・・・何もいないけど?」

「ほんとう?」

窓から離れて下ろしてやると、またしがみついてくる。
こんなに怯えるクリスは初めてだ。

「お前、強いくせに幽霊が怖いのか?」

「チャルソン・・・小さい時に『チャルソン 』て話を読んでもらってから幽霊ムリ!」

「ああ、あれな。」

『 チャルソン』っていうのは夜更かしする子供達が夜な夜な窓からチャルソンという幽霊にさらわれる話だ。
窓に映る自分の姿が急に変わって、確認しようと窓に近づくとそのまま連れてかれるっていう、子供が夜更かししちゃダメよって感じの話なんだけど・・・
まさか信じてる奴がいたとは、今どきうちの妹達でも笑い飛ばして幽霊なんている訳ないって言って信じてないのに、クリス、可愛い過ぎるだろ。

「もう居ない?」

「うん、大丈夫だぞ。」

そう言って俺にしがみついて見上げるクリスを見て、ふと我に返った。

俺、裸だ。しかも、風呂から慌てて出たから腰にタオルを1枚巻いただけで、髪も体も濡れたままだ。

肌に直にクリスの手と顔が触れてる。
これ、ヤバいっ・・・!


そう思った時、部屋のドアが鳴って、返事をする前にドアが開いてクラウス様とリオさんが入って来た。





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