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10話 油断大敵

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「クリス、なんか調子悪そうだけど大丈夫か?」

朝のマラソンの後、ギルが心配そうに話しかけてくる。
今日は朝から調子が悪い。
月の物が重くて、腹痛と頭痛がひどいんだ。
いつもなら薬で何とか誤魔化せるのに、今月はキツくて、マラソンの間も身体が重かった。

「うん・・・ちょっと調子悪いかも。」

僕はギルに向かって笑ったつもりだったけど、痛みで引きつってしまったのが分かる。

「クリス、顔色悪いぞ、今日は練習休め。」

ギルはそう言うと、教官の所まで行って許可を貰って来てくれた。
今日は本当に辛いから、ギルの言葉に甘えて休ませてもらおう。

「教官には言ってあるから部屋に戻って休め、一人で戻れるか?」

「うん、大丈夫。ありがとう。」

僕はギルに礼を言うと、寮棟がある方へと向かって歩き出した。


しばらく歩いていたけど、やっぱり調子悪い。腹痛だけならまだしも、今日は頭痛が酷くて、目眩までしてきた。
ズキズキと痛む頭に耐えきれなくなって、僕は木の影にしゃがみこむ。

しばらくじっとしていれば楽になるかな・・・そう思って痛みと戦いながらしばらく目を閉じる。

「お前、三班のクリストファーだよな?どうした?」

知らない声に顔を上げると、二人の知らない男が立っていた。 
誰だ?何で僕のことを知ってるんだろう?

「誰?」

「あれ?知らない?まあいいけど、なんかしんどそうだな。」

「うん、ちょっと頭痛が酷くて・・・」

そう言うと、一瞬二人が顔を見合わせて笑った気がした。

「そうなのか?俺達が部屋まで送ってやろうか?」
 
優しい言葉、さっきのは気のせいか?

「ありがとう、でもしばらくこうしてれば良くなるから大丈夫。」

「俺、痛みによく効く薬もってるからやるよ。寮まで行けるか?」

薬を貰えるのはありがたいけど、知らない奴にそこまでしてもらう訳にはいかないよな。

「悪いからいいよ。」

「遠慮なんてしなくていいよ、付いてきな、立てるか?」

そう言うと、僕を立たせる。
まあ、薬貰えるならいいか・・・

僕は軽く考えて寮にある二人の部屋までついて行った。


「薬はこれだよ。水はここにある。飲んでいけばいい。」

彼らの部屋に入ると、椅子に座らせてくれて、薬と水を出してくれた。

「ありがとう、付き合ってもらって悪いな。」

「いや、いいんだ、それより、早く良くなるといいな。」

そう言われて、少しでも早く痛みから解放されたくて、もらった薬と水を飲んだ。

「お前強いんだってな、見た目可愛い女みたいなのに凄いよな。」

一人が言った言葉にぴくりと反応してしまう。
誰が女みたいだ!
投げ飛ばしてやりたいけど、さすがに薬もらって優しくしてもらってるのにそれはまずいよな。
そう思って、ぐっと我慢する。

「僕は女じゃない。可愛いとか言うな。」

そう言って立っている二人を見上げる。

「男でも可愛いのに変わりないだろ、いつもはでかいヤツと一緒に居るからなかなか話しかけられなかったけど、ずっと可愛いなと思って見てたんだぜ。」

ニヤニヤと笑いながらそう言われて、反論しようとした瞬間、急に眠気が襲って来た。

「眠いならそこに横になるといい。」

そう言ってベッドを指す。

「いや、・・・部屋に帰るからいい・・・」

そう言いながらも、睡魔は急激に襲ってきて、僕は意識を手放してしまった。




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