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3話 入隊
しおりを挟む長い入隊式が終わって、僕らは部隊に配属されるまでの半年間、訓練を積むことになる。
僕は第三班に入ることになり、班の中から寄宿舎の部屋割りも決められる。
基本は二人一部屋、貴族の子息は必ず隊に入隊することになっているので、ほとんどが貴族の坊ちゃんだけど、たまに一般人もいたりする。
余程の坊ちゃんだと、一人部屋の場合もある。
僕の父は侯爵なので、一人部屋にしようと言ってくれたけど、あえてしなかった。
特別扱いされると変に勘ぐられてもいやだからだ。
かと言って、同室はかなり危険なのもわかってる。
気を抜けない。
一体どんな奴が僕と相部屋になるんだ?
知ったやつだといいけど・・・
「クリストファーとギルバート、208号室。」
順番に名前が読み上げられる中、自分の名前が読み上げられる。
「はい!」
「はーい。」
僕は返事をして立ち上がって相手を見る。
でかい!
何センチあるんだ?
とりあえず、僕はギルバートと呼ばれた奴の前まで行って握手を求める。
「クリストファーだ、よろしく。」
「えー、俺の相棒、こんなちっちゃくて可愛いお嬢ちゃんなの?」
ギルバートがその言葉を発した瞬間、他の同期達から、
「あー・・・」
「やったな・・・」
とため息が零れる。
僕はでかい図体のギルバートの襟首を掴んで体の下に入り込むと、ギルバートを投げ飛ばしていた。
「ってぇー何すんだよ!」
「誰がちっちゃいお嬢ちゃんだって?」
僕は投げ飛ばしたギルバートを跨ぐと腕組して上から睨みつける。
周りはまたやったか・・・と言う表情だ。
「あー、・・・ごめん。」
その状況を見てギルバートが謝る。
「こら、喧嘩は許さんぞ!早く部屋に入れ!」
「はーい。」
そう言われて僕とギルバートは部屋に向かった。
部屋は、二段ベッドが壁際にあって、机と椅子のセットが2つ、窓際に並んでいる。
ベッドにはカーテンが付いているので、一応プライバシーは守られるようになっている。
風呂もトイレも各部屋毎にあるので、特に問題は無い。
「さっきは悪かった、俺はギルバートだ。お前はここらじゃ有名なのか?」
「こっちこそ、いきなりごめん。んー、ここに入るまで剣術学校に通ってたから、同期で知ってる奴は何人かいるよ。」
僕がちっちゃいとか、女みたいと言う奴は片っ端から投げ飛ばしてきたから同期の間では有名だと思う。
「ふーん、俺は田舎育ちだからな、分からない事があったら教えてくれ。」
「いいよ、田舎はどこ?」
「ブレイスウェイ領だ。俺はブレイスウェイ伯爵の次男だ。お前は?見るからに坊ちゃんだよな。」
ギルバートはそう言って僕を上から下まで舐めるように見る。
「僕はルイズウェル侯爵家の長男だ。」
「侯爵家か、俺より身分は上だな。」
そう言いながら見下ろすギルバート。
「別に、身分とか関係無いだろう。僕はそういうの好きじゃない。それより、見下ろすな。」
そう言って僕を上から見下ろすギルバートを睨みつける。
僕の身長が161だから190位あるんじゃないのか?
睨みつけたのに、ギルバートは口角を上げてニヤリと笑う。
「何が可笑しい?」
「いや、顔は女みたいだけど、お前良い奴だな、気に入った。俺の事はギルと呼んでくれ。」
そう言って手を差し出してくる。
「女顔は余計だ!後、見下ろすな!」
僕は手を荒々しく取って握りながら睨みつける。
「こればっかりはクリストファーがちっちゃいんだからしょうがないだろ。」
「・・・僕の事はクリスでいい。」
「よろしくな、クリス」
にっこり笑って握り返すギルは悪い奴には見えない。
ただ、口は悪そうだけどな。
「で、ベッドはどっちにする?」
「選ばせてくれるなら、僕は上がいい。」
「了解。俺も下の方が良かったからちょうどいいや。」
上の方が覗かれる心配はないかと思ったけど、よく考えたらコイツでかいんだよな・・・
カーテンはきっちり閉めて寝るようにしよう。
ーこうして僕の寮生活は始まった。
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