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14話 レオルカ様の洞察力

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「レオルカ様 」

俺はレオルカ様の部屋の前まで行くとノックをして返事を待った。

「ああ、入って 」

レオルカ様の返事を聞いてドアを開けて入ると、レオルカ様は先程外出した時の衣装のままで、今上着を脱いでいるところだった。

「今お戻りになったのですか? 」

俺はさっとレオルカ様の近くに移動して着替えを手伝いながら聞く。

「ああ、先に父上に報告に行ってたんだ 」

「え? 伯爵様への報告は私も同行するのでは? 」

「ああ、いや、あれはアイリーンの手前そう言っただけ 」

まぁ、嘘を言っているのは分かってたけど、俺に何の用だろう?

「ユリウスを外しているということは、あまり聞かれたくない内容ですか? 」

お嬢様に俺が付いているように、本来レオルカ様にもユリウスという男が付いている。
今日は俺一人で護衛もつとまるだろうと言うことで付いて来てはいなかったが、本来のレオルカ様の護衛はユリウスだ。
レオルカ様に護衛が必要なのかという疑問はあるが、身の回りの世話をする為に居るはずのユリウスが居ない。

「うん、セルジュは察しがいいね 」

俺に脱いだ上着とベストを渡してネクタイを緩め、シャツのボタンを外しながら俺を見るレオルカ様は、俺より少し身長が低いので、レオルカ様が俺を見上げる形になる。
俺を見上げる眼差しは憂いを帯びて艶っぽい表情をしている。
男に色気を振りまいてどうする、レオルカ様。

「お褒め預かり光栄です 」

「セルジュ・・・・・・君、なにか隠してるでしょ 」

「え? 」

レオルカ様はニヤリと口角を上げて微笑みながら俺を見る。

「なにか・・・・・・と言いますと? 」

レオルカ様の射抜くような瞳、これは、なにか感づかれたか?

「俺に隠し事なんて無しだよ? 」

「・・・何のことでしょう? 」

「まだ恍けるなんて、何かを隠してる証拠だよ、セルジュもまだまだだね 」

まさか俺の前世が魔王だったことに気づいてるはずはない。何に気がついた? 

「・・・・・・心当たりがないのですが・・・・・・」

「ふーん、無自覚? では無いと思うけど・・・・・・セルジュ、魔力が上がってるよね 」

「え? 」

レオルカ様の言葉に少し焦る。
気付かれた? 復活した魔王の魔力は隠して今までと同じ魔力量に抑えていたつもりだったけど・・・

「今日の戦い、セルジュの魔力が上がってると感じた。魔力なんてそうそう上がるもんじゃないけど、何があった? 」

レオルカ様・・・・・・鋭すぎる。
レオルカ様はハルバート様が亡くなってこのチェスター伯爵家を継ぐために戻って来なければ、いずれ王国騎士団を束ねる総司令まで登り詰める事が出来たのではないだろうか。
それだけの能力を持っている。

「それは・・・・・・ 」

あんまり隠しすぎても怪しまれるだけだけど・・・・・・どう誤魔化そう。

「・・・・・・はぁ・・・、やっぱり俺は信用出来ないかな 」

どうするか少し逡巡していると、レオルカ様はソファーに掛けて頬杖を着きながらため息をこぼした。

「いえ、そんな事はありません 」

「気を使わなくていいよ、俺は周りから兄上を殺してこのチェスター伯爵家を手に入れた汚い人間だと思われてるし、セルジュとは親しくしているとはいえ、たった1年の付き合いだ、信用出来なくて当然だよね 」

レオルカ様は悲しい表情を一瞬見せた後、嘆息して仕方ないと言うように微笑を浮かべる。

レオルカ様はずるい、いや、交渉事がとても上手い。こんな事を言われれば何か言わざるを得ないじゃないか。

「実は・・・今までレオルカ様との手合わせの時は魔力を70%程に抑えていました。申し訳ございません 」

これで納得してくれればいいが・・・・・・

「なるほどね、普通100%出す人間はいない。だいたい80%で留めておくけど、それを更に10%余裕を持たせていたのか 」

レオルカ様は納得したように頷いた。
良かった、納得して貰えたようだ。

「流石セルジュだね、例え主従関係でも能力を全てさらけ出さないのはいい事だ。でも・・・・・・ 」

にっこり笑って俺を褒めた後、試すような目付きで俺を見る。

「本当に70%かな? それってまだ上があるでしょ 」

「レオルカ様、あんまり買いかぶらないでください、そんな能力ありませんよ 」

そう言って誤魔化したが、本当は更に上、数値で表すなら1000%くらいはあるんだがそれはさすがに出せない。

「ふーん・・・まぁ、今はそういうことにしておこうか、とりあえずセルジュの力はとても頼りになるし、アイリーンを守ってくれる力だと思ってるからね 」

「はい、アイリーンお嬢様をお守りすることが私の役目ですので 」

「うん、任せたよ 」

そう言って屈託なく微笑むレオルカ様は、俺と同い年なのに何処か幼さと少女のような可憐な表情で、この笑顔しか知らない人ならば守ってあげたいと思わせることが出来るだろう。
だけど、俺はレオルカ様の事は、強さ、賢さ、優れた洞察力、それに人を惹きつけるカリスマ性を持っている人間だと知っているので騙されない。

「レオルカ様、男を誘惑する趣味でもあるんですか? 」

「ん? なんの事かな? 」

首を傾げて恍けているけど、全部分かった上での行動だ。

「俺は騙されませんからね 」

「なーんだ、つまらないなー、セルジュは真面目だからちょっとからかってみようかと思ったのに、残念 」

肩を竦めてイタズラっぽく笑うレオルカ様はやっぱり同い年には見えない。
こんな表情は普段見せないからほとんどの者が知らない。
何故か歳が同じだからだろうか、俺には時折見せる表情だ。








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