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24話
しおりを挟む馬は小一時間ほど走り続けている。
俺達はどこに連れていかれるんだろう?
そもそも、ここが何処なのかもまだ分かっていないのに、俺達はどうなるんだ?
シンシアは大丈夫だろうか? 手荒にされてないだろうか、そんな事を思いながら先頭を行くリーダー格の男の馬を睨みつける。
そしてしばらく馬に揺られていると、目の前に街が見えてきた。
街というより城塞、高い壁に護られた街だ。ここはおそらくこの国の重要都市だろう。
黒ずくめの男達は城門を潜り抜け街中を俺達を連れて進む。
盗賊か何かだと思っていたけど、日中堂々と俺達を連れて街を闊歩する。
この人達は一体何者なんだろう?
そう思った時、大きな通りに出て目の前が開ける。
そして俺の目に映ったのは白亜の城。
あれ? この城最近見た事あるぞ。
ん? え? ええ?
猿轡(魔術詠唱をさせないため)をされているので話せないけど、顔と目でみんなに訴える。
するとみんなも心当たりがあるようで頷いて同意を示してくれる。
やっぱり、ここはつい昨日俺達が飛んだ先で入ってしまった城じゃないのか?
まさか戻ってくることになるなんて・・・
俺達の予想通り、城の門を抜けると昨日見た景色と同じ場所に出た。
城に連れてこられたって事はこの黒ずくめは騎士? ・・・・・・には見えないけど、逃げた俺たちを探してたって事だ。
これ、ヤバいんじゃない? 不法侵入で俺たち全員裁かれるんじゃ・・・
「おい、降りろ 」
嫌な想像をしていると、馬から降りるよう促されそれに従う。
相変わらず俺達がなにも出来ないよう、シンシアを人質に前を進む。
「入れ 」
そう言われて俺たち全員広い部屋に通され、そこでやっとシンシアも解放して貰えた。
良かった、黒ずくめの男達には後ろで剣を構えてしっかり見張られてるけど、とにかくシンシアが俺たちの元に戻って来た。
抱きしめたい衝動に駆られたけど、手は縛られてるし、何より俺が触ると飛んでしまうからそんなこと出来ない。
「貴方たち、何者なの? 」
突然前方から声がして声の方を見ると、そこには女の子とその子を囲むように兵士が二人立っていた。さっき言葉を発したのは間違いなく女の子だろう。
女の子は栗色の長い髪を二つに分けて結んで、その頭には小さな王冠が乗っている。
そして藍色の大きな瞳は少し怯えたような表情を見せる。
「ゔーっ」
「あ、ごめんなさい、それじゃあ話せないわね、猿轡を外してあげて 」
イリヤが唸ると女の子は俺たちが喋れないことに気がついて猿轡を外すよう指示してくれた。
「魔術を使うような素振りを見せたら直ぐに刺すぞ 」
猿轡を外す時に黒ずくめのリーダーに釘を刺されて・・・
「その前に、ここは何処なの? あなたは誰? 」
「貴様、口の利き方を弁えろ! 」
みんなの疑問を口にしたイリヤに剣が突きつけられる。
だけどイリヤは怯まない。
「やめなさい、そうよね、突然こんな所に連れてきてなんの説明もなくてごめんなさい 」
場所と頭の小さな王冠から、この子の正体にはなんとなく想像はつくけど、素直に謝るところを見ると話せる相手なのかもしれない。
「ここはグリエル公国、私はクラリサ・グリエル、この国の公爵よ 」
クラリサと名乗った女の子は予想道理、この国の王だった。
まさかこんな、俺と同じ歳か、俺より下に見える女の子がこの国の公爵閣下だなんて予想外だ。
「やっぱりね、三ヶ月前に前公爵が亡くなったって噂は聞いていたけど、本当だったのね 」
「よく知ってるわね、そうよ、父が亡くなって私はその後を継いだの。まだ国外には情報を流してないはずなのに、よく知ってるわね、貴方は何者? 」
「私はイリヤ、イリヤ・ユグナ・グロー、ユグナの第一王女よ、何もしないから手を自由にしてくれないかしら 」
イリヤの言葉に一番驚いたのは俺だ。
イリヤがユグナのお姫様? 只者ではないと思っていたけど、まさかお姫様だったなんて。
「ユグナの? 確かにあなたはエルフのようだけど証拠は? 」
クラリサは驚きを表しながらも用心深く尋ねる。確かに、侵入者として連れてきた相手が王女だと言われても信じられないよな。
「証拠を見せるから手を自由にしてくれないかしら 」
「わかったわ 」
イリヤは黒ずくめの男に手の縄を解いてもらうと、おもむろに今までずっと着けていた手袋を外した。
そして、その右手の甲をクラリサに見せる。
そこには加護の証、ユグナ王家の紋があった。
「その印があるという事は確かに王家の人間の証、手荒な事をしてすみません 」
素直に謝るクラリサをよそに、俺は初めて見るイリヤの右手の印に妙に納得してしまっていた。恐ろしいまでの弓の腕、あれは加護だったんだ。マリンが補助をしてるんだと納得していたけど、わざとカモフラージュの為にやっていたのかもしれない。
「私達はあなたに危害を加えるつもりは無いわ、他の者も自由にしてやってくれないかしら、そして、ここへ連れてきた訳を聞かせて欲しいんだけど 」
イリヤの言葉にクラリサは少し逡巡した後、俺たちの縄も解いてくれた。
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