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⑰浄化の方法
しおりを挟む俺達はまた魔王城に三人で戻ってきた。
「魔王陛下、少し話を聞いて頂けませんか?」
ユリアンさんがまた訴える。
「なんだ?さっきから何を言おうとしていた?」
「私はなぜシンラが選ばれたのか理由も知っています。」
「ほぅ・・・人間はほとんど知らないはずだが?」
魔王が話の続きを促す。
ユリアンさんは何を言おうとしてるのかな?
「シンラには魔王陛下に溜まった悪気を払う力が備わっています。」
「そうだ。身体を交えることで浄化される。それをしないと、俺は自分の制御が出来なくなる。」
「ええ、その為に浄化の力を持つ女性が性奴隷として捧げられて来た。」
「性奴隷は間違っているがな。」
魔王が訂正する。
「ですが、シンラは身体を交えなくても浄化することが出来るんです。」
え?そうなの?
「それは本当か?」
魔王が食いつく。
「ええ、本当です。」
「どうりでユリアンからは悪気が感じられないと思った。人間も多少なりとも悪気を持っているはずなのに、ユリアンからは一切感じなかったから、俺はシンラと身体の繋がりがあると思ったんだ。」
そうだったんだ・・・俺なんかしたっけ?
「で、シンラはどうやって浄化しているんだ?」
俺も知りたいです。
俺何してるの?
「浄化はシンラの笑顔で出来ます。」
「は?」
ユリアンさんの答えに、魔王が間の抜けた声を出す。
「シンラが笑えば浄化されるんです。」
「そんな事で?」
マジか・・・俺、笑う度に浄化してたの?
魔王が俺を見る。
「シンラ、笑え。」
「笑えって言われて笑えるわけないでしょ!」
俺は速攻ツッコミを入れる。
「そうだな、では、どうすればいい?何か面白い冗談でもないか?」
魔王が考える。
その真剣な顔に思わず笑みがこぼれる。
すごく偉そうなカッコで、超イケメンな顔を歪めて考え込む姿がなんだか可愛い。
「くすくす。」
その瞬間、魔王から黒い塊が出てすーっと消えた。
「お、笑った。・・・確かに、今浄化された。シンラ!お前すごいじゃないか!」
なんか知らないけど褒められた。
褒められると嬉しい。
にこにこ笑うと、魔王が俺の頭を撫でる。
「少し楽になった。ありがとう。シンラ、ずっと俺のそばにいてくれないか?」
あ、ちゃんとありがとうって言える人なんだ。あれ?そういえば、魔王ってあんまり怖くない。実は優しい人なの?
「俺はそのために来たんだから、言われなくても居るよ。でも、身体求められても無理だからね!」
とりあえず威嚇はしておく。
「アハハ、しばらくは我慢してやる。」
「しばらく??一生だよ!」
そう言って、俺はユリアンさんの後ろに隠れる。
そんな俺を見つめる魔王の視線は優しかった。
「そういえば、魔王様って名前なんて言うの?」
「俺はグレンギルファスだ。」
「グレンギルファスさん?んー・・・長いからグレンさんでいい?それともギルファスさん?あ、ギルは?」
俺がギルと呼んだ刹那、魔王の表情が変わったのが分かった。一瞬だったけど、何かに反応したと思う。
「ギルの方が短くて呼びやすいかも。」
わざと引っかかった単語を言ってみる。
「・・・グレンと読んでくれ。」
そう言ったグレンさんの表情は少し寂しそうだった。ギルって呼ばれるの嫌みたい。
とりあえず深く追求するのはやめといた方がいいのかな ?
「分かった。グレンさんって呼んでもいい?」
「グレンだけでいい。」
「分かった。」
俺は了承してにっこり笑った。
「とりあえず部屋を用意させるが、シンラと同じ部屋でいいか?」
グレンがにっと笑いながらユリアンさんを見る。
「別々の部屋でお願いします!」
ユリアンさんを見てくくっと笑う魔王グレン。ユリアンさんをからかって楽しんでるな。意地悪。
俺がグレンを睨むと、こっちの視線に気づいてクスッと笑う。
「シンラはユリアンの事を信頼しているようだな、俺の事は敵だと思われてるようだが・・・俺にもユリアンに見せる笑顔を見せてくれるようになるか?」
「そんなの、グレン次第だよ。」
まだいい人なのか、悪い人なのか分からない。今までの女の子を酷く扱ってたんなら好きにはなれない。でも、グレンの言う通り、酷い扱いを受けてなかったのなら少しは考え方も変わるかもしれない。
とりあえず、グレンと話さないと何もわかんないよ。
「俺次第か・・・胸に刻んでおこう。」
やっぱりグレンからは嫌な感じがしない。
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