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23話 私の気持ち(リリアンナ)

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「 ジュリアス様には大事な方はいらっしゃいませんの? 」

しばらくここからは出られそうもないので、ジュリアス様とお話をして時間を過ごそうと、私の横に立っていたジュリアス様に隣の席に座るよう促す。すると、ジュリアス様はふっと微笑んで私を見た。

「ねぇ、リリアンナ嬢は幼い時からシルル様の婚約者と決められてたんだよね? 」

ジュリアス様が私の横に腰かけながら問いかける。

「ええ、10歳の時からですわ 」

「ふーん、シルル様は外見も内面も文句無く優れた方だから、すぐに好きになったんじゃない? 」

そう言われて初めて出会った時のことを思い出して、最初からシルル様に惹かれていたのだと、改めて実感してしまった。

「ん? どうしたの? 」

私がシルル様のことを思って思わず赤面してしまった顔を隠すように俯いて黙っていると、ジュリアス様が問いかける。

「シルル様の事、実は好きじゃないとか? あ、絶対言わないから安心して 」

私が俯いて黙り込んだのを、ジュリアス様は変に勘違いしたようだ。

「いえ、あの・・・」

私は今まで自分が心に思って来たことを言うべきか悩んだ。
でも、シルル様を嫌いだなんてとんでもない、そんな誤解を受けたままには出来ない。

「私は今までシルル様を好きにならないよう心がけてきました 」

「心がけてた? 」

私の言葉をオウム返しに呟きながら首を傾げるジュリアス様。

「はい、好きになってしまうと、とても辛くなるのが分かっていましたので・・・」

「どういう事? 」

「正直、こんな事を誰かに話すのは初めてなのですけれど、私はシルル様の婚約者です。今は努力して痩せる事は出来ましたが、シルル様と出会った頃はおデブでお世辞にも可愛いと言えない姿でした 」

「え? そうなの? 」

「はい、シルル様はお優しい方ですので、会う度にお世辞で可愛いと仰ってましたが、醜い私が好かれることなんてないと思っていました。なので、シルル様に本当に愛する方ができた時も受け入れることが出来るよう、私はシルル様を好きにならないようにしてきたつもりでした 」

「なるほどね、シルル様の正妻はリリアンナ嬢だけど、シルル様なら側室を娶ることは考えられるからね 」

私の説明に、ジュリアス様は納得してくれたのか頷いてくれる。

「でも、好きにならないようにしてたってことは、逆に言うと、リリアンナ嬢はシルル様の事が好きなんじゃないの? シルル様が別の誰かを好きになった時、傷付くのが怖いから、自分の気持ちから目を逸らしてたんでしょ 」

ジュリアス様、さすがです。私の浅はかな考えなんてすぐに見抜かれてしまいました。

「・・・その通りですわ 」

「それって、めちゃくちゃ悲しいよね、そんな気持ちでシルル様のそばに居るのは辛いよ? 」

「ええ、そうですわね 」

まさかジュリアス様に私の気持ちがわかって頂けると思っていなかったので、何だか少し嬉しい。

「でも、シルル様はリリアンナ嬢以外と結婚なんて考えてない感じだから大丈夫だよ、シルル様の事を信じていいと思うよ? 」

「そうでしょうか? 」

昨日シルル様もそう言ってくれた。
だから少しシルル様を信じて私も本当の気持ちと向き合ってもいいのかもしれないと思った。
結局、私はシルル様の事が好きなのだと自覚してしまったのだけど、気持ちを伝えることが出来なかった。
一度落ち着いて考えると、本当に気持ちを伝えていいものか分からなくなってしまった。

「ジュリアス様、シルル様とセイラ様って仲がよろしいので、私はお付き合いされてるのかと思っていました 」

「え? セイラ嬢と? 俺達はいつも一緒にいるけど、そんな風には見えないけど? ・・・まあ、セイラ嬢がシルル様を狙ってるのは傍から見てても分かるけど、シルル様が相手にして無い感じだよ? 」

ジュリアス様の言葉に心が軽くなった気がした。

「リリアンナ嬢はあの噂を気にしてるの? 」

「噂・・・と言いますと? 」

私がセイラ様を虐めているという噂かしら・・・

「セイラ嬢とシルル様が付き合ってるって噂、それを嫉妬してリリアンナ嬢がセイラ嬢に嫌がらせをしてるって噂 」

ジュリアス様が真顔で私を見つめて言うその言葉に、息が苦しくなって心が重くなる。

「はい・・・私が不甲斐ないばかりに、セイラ様と周りに迷惑をかけてしまいました。今日はその事をセイラ様に謝罪に来たのです 」

私も正直に答えてジュリアス様と向き合うと、ジュリアス様は少し眉をひそめて何かを考える仕草をされる。

「リリアンナ嬢、悪いのは君じゃないと思うけど? 」





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