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12話 リリアンナの再決意(リリアンナ)
しおりを挟む今日は入学式、そしてシルル様と久しぶりにお会い出来る日。
この日の為に必死で努力して痩せることは出来たけれど、たくさんの方の前に出て、私はシルル様の婚約者として恥ずかしくない態度でいられるのか心配・・・
そんなことを思っていたけれど、入学式が終わった後、同じクラスになった方から声をかけられた。
「リリアンナ様、初めまして、私クリスティナ・フィルスと申します 」
「初めまして、私はロザンナ・ブルーゲルです 」
2人の女性に声をかけられて、ちょっと緊張してしまった。
今日まで社交の場に出たことの無い私は正直お友達と呼べる方がいない。なので、同世代の方とどう接していいのかわからなかった。
「初めまして、リリアンナ・グラウシスと申します 」
私が会釈をすると、二人は顔を見合わせてキャッキャッとはしゃぐ。
「あ、ごめんなさい、リリアンナ様の事は存じてますわ、シルル王子様のご婚約者ですわよね、私達、ずっとお会いしたかったので、今日お会い出来て嬉しいんです! 」
私とシルル様の婚約は皆様知っていらっしゃるのだと思うけど、私に興味を持っていただけていたなんて、私はシルル様のおまけでしかないのに・・・
「まぁ、嬉しいです 」
「今日、リリアンナ様を初めて拝見しましたけれど、とても素敵な方で、シルル王子様の隣に立つにふさわしいお方だなって、二人で話してたんです 」
二人は嬉しそうに目を輝かせながら満面の笑みでお話してくださる。
その表情から、今の言葉が社交辞令でないことは分かる。
「そんなふうに思っていただけていたなんて、とても嬉しいです 」
自信のなかった自分に少しだけ自信を持っていいのかしら・・・
「私達、リリアンナ様とお友達になりたいのですけれど・・・ 」
本来なら下の身分の者からは話しかけるのも、まして友達になって欲しいなんて要望を出すことも憚られるのが社交界なのだけど、ここは学園、その常識はここでだけは当てはめることが出来ない。
ここが学園でよかった、私ならお友達になってなんて、話しかける勇気がなかったから、このお二人の行動に感謝だわ。
「はい、私でよろしければ喜んで 」
こんなに早くお友達ができるなんて思ってなかったので、とても嬉しい。
「今日はシルル王子様とお会いになるのですよね? お二人が並ばれたところを見るのが楽しみです! 」
クリスティナ様にそう言われて嬉しかった気持ちが半減した。
そういえば、今日私はシルル様にお会い出来るのかしら。
特にお約束をしてる訳でもないし、私の事なんて全然気にしていないのでは?
そうだ、この2年間、入学までは出会わないと決めたので、何度か受けたお誘いは理由を付けてお断りしてしまったもの、私の事なんてどうでも良くなっているんのじゃないかしら・・・
この2年間、シルル様の隣に立ってもシルル様に相応しい女性になれるよう、それだけを目標に頑張ってきたけれど、シルル様とお会いする機会まで拒んでしまった事を今更ながら後悔した。
本当にお誘いがなかったらどうしよう・・・
そう思っていたけれど、初日が終わったと同時にシルル様の執事のアグリが私の教室にやって来た。
「リリアンナ様、今日はお疲れ様でございます。お疲れのところ申し訳ございませんが、シルル様がお待ちでございます。ご一緒に来ていただけますか? 」
その言葉と、久しぶりに見るアグリの顔に安心してほっとしながらニッコリ笑って答えた。
「アグリ、お久しぶりですわね、分かりました、案内お願いしますわ 」
そうして向かった先の部屋にいたシルル様を見た途端、また心臓が跳ね上がった。
2年経ってシルル様は15歳におなりになって、以前の可愛らしさは影を潜めて、とても素敵な、カッコイイ人になっていた。
さらに破壊力を増した相変わらずの素敵な笑顔で微笑まれると、お顔を直視できない。
相変わらず人を喜ばせるお言葉が上手なので、つい本気にしてしまいそうになる。
ダメよ、シルル様は誰にでもお優しいのだから本気にしては、シルル様が他の誰かを愛された時傷付くのは嫌、愛してはいけない。
久しぶりにお会いして素敵になったシルル様を見て、私も気を引き締め直そうと思った。
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