上 下
12 / 30

12話 リリアンナの再決意(リリアンナ)

しおりを挟む



今日は入学式、そしてシルル様と久しぶりにお会い出来る日。
この日の為に必死で努力して痩せることは出来たけれど、たくさんの方の前に出て、私はシルル様の婚約者として恥ずかしくない態度でいられるのか心配・・・
そんなことを思っていたけれど、入学式が終わった後、同じクラスになった方から声をかけられた。

「リリアンナ様、初めまして、私クリスティナ・フィルスと申します 」

「初めまして、私はロザンナ・ブルーゲルです 」

2人の女性に声をかけられて、ちょっと緊張してしまった。
今日まで社交の場に出たことの無い私は正直お友達と呼べる方がいない。なので、同世代の方とどう接していいのかわからなかった。

「初めまして、リリアンナ・グラウシスと申します 」

私が会釈をすると、二人は顔を見合わせてキャッキャッとはしゃぐ。

「あ、ごめんなさい、リリアンナ様の事は存じてますわ、シルル王子様のご婚約者ですわよね、私達、ずっとお会いしたかったので、今日お会い出来て嬉しいんです! 」

私とシルル様の婚約は皆様知っていらっしゃるのだと思うけど、私に興味を持っていただけていたなんて、私はシルル様のおまけでしかないのに・・・

「まぁ、嬉しいです 」

「今日、リリアンナ様を初めて拝見しましたけれど、とても素敵な方で、シルル王子様の隣に立つにふさわしいお方だなって、二人で話してたんです 」

二人は嬉しそうに目を輝かせながら満面の笑みでお話してくださる。
その表情から、今の言葉が社交辞令でないことは分かる。

「そんなふうに思っていただけていたなんて、とても嬉しいです 」

自信のなかった自分に少しだけ自信を持っていいのかしら・・・

「私達、リリアンナ様とお友達になりたいのですけれど・・・ 」

本来なら下の身分の者からは話しかけるのも、まして友達になって欲しいなんて要望を出すことも憚られるのが社交界なのだけど、ここは学園、その常識はここでだけは当てはめることが出来ない。
ここが学園でよかった、私ならお友達になってなんて、話しかける勇気がなかったから、このお二人の行動に感謝だわ。

「はい、私でよろしければ喜んで  」

こんなに早くお友達ができるなんて思ってなかったので、とても嬉しい。

「今日はシルル王子様とお会いになるのですよね? お二人が並ばれたところを見るのが楽しみです! 」

クリスティナ様にそう言われて嬉しかった気持ちが半減した。
そういえば、今日私はシルル様にお会い出来るのかしら。
特にお約束をしてる訳でもないし、私の事なんて全然気にしていないのでは?
そうだ、この2年間、入学までは出会わないと決めたので、何度か受けたお誘いは理由を付けてお断りしてしまったもの、私の事なんてどうでも良くなっているんのじゃないかしら・・・
この2年間、シルル様の隣に立ってもシルル様に相応しい女性になれるよう、それだけを目標に頑張ってきたけれど、シルル様とお会いする機会まで拒んでしまった事を今更ながら後悔した。

本当にお誘いがなかったらどうしよう・・・
そう思っていたけれど、初日が終わったと同時にシルル様の執事のアグリが私の教室にやって来た。

「リリアンナ様、今日はお疲れ様でございます。お疲れのところ申し訳ございませんが、シルル様がお待ちでございます。ご一緒に来ていただけますか? 」

その言葉と、久しぶりに見るアグリの顔に安心してほっとしながらニッコリ笑って答えた。

「アグリ、お久しぶりですわね、分かりました、案内お願いしますわ 」


そうして向かった先の部屋にいたシルル様を見た途端、また心臓が跳ね上がった。
2年経ってシルル様は15歳におなりになって、以前の可愛らしさは影を潜めて、とても素敵な、カッコイイ人になっていた。
さらに破壊力を増した相変わらずの素敵な笑顔で微笑まれると、お顔を直視できない。

相変わらず人を喜ばせるお言葉が上手なので、つい本気にしてしまいそうになる。
ダメよ、シルル様は誰にでもお優しいのだから本気にしては、シルル様が他の誰かを愛された時傷付くのは嫌、愛してはいけない。

久しぶりにお会いして素敵になったシルル様を見て、私も気を引き締め直そうと思った。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

ざまぁされるのが確実なヒロインに転生したので、地味に目立たず過ごそうと思います

真理亜
恋愛
私、リリアナが転生した世界は、悪役令嬢に甘くヒロインに厳しい世界だ。その世界にヒロインとして転生したからには、全てのプラグをへし折り、地味に目立たず過ごして、ざまぁを回避する。それしかない。生き延びるために! それなのに...なぜか悪役令嬢にも攻略対象にも絡まれて...

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない

亜瑠真白
恋愛
推しキャラを幸せにしたい転生令嬢×裏アリ優等生攻略キャラ  社畜OLが転生した先は乙女ゲームの悪役令嬢エマ・リーステンだった。ゲーム内の推し攻略キャラ・ルイスと対面を果たしたエマは決心した。「他の攻略キャラを出し抜いて、ルイスを主人公とくっつけてやる!」と。優等生キャラのルイスや、エマの許嫁だった俺様系攻略キャラのジキウスは、ゲームのシナリオと少し様子が違うよう。 エマは無事にルイスと主人公をカップルにすることが出来るのか。それとも…… 「エマ、可愛い」 いたずらっぽく笑うルイス。そんな顔、私は知らない。

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

ハズレの姫は獣人王子様に愛されたい 〜もしかして、もふもふに触れる私の心の声は聞こえていますか?〜

五珠 izumi
恋愛
獣人の国『マフガルド』の王子様と、人の国のお姫様の物語。  長年続いた争いは、人の国『リフテス』の降伏で幕を閉じた。 リフテス王国第七王女であるエリザベートは、降伏の証としてマフガルド第三王子シリルの元へ嫁ぐことになる。 「顔を上げろ」  冷たい声で話すその人は、獣人国の王子様。 漆黒の長い尻尾をバサバサと床に打ち付け、不愉快さを隠す事なく、鋭い眼差しを私に向けている。 「姫、お前と結婚はするが、俺がお前に触れる事はない」 困ります! 私は何としてもあなたの子を生まなければならないのですっ! 訳があり、どうしても獣人の子供が欲しい人の姫と素直になれない獣人王子の甘い(?)ラブストーリーです。 *魔法、獣人、何でもありな世界です。   *獣人は、基本、人の姿とあまり変わりません。獣耳や尻尾、牙、角、羽根がある程度です。 *シリアスな場面があります。 *タイトルを少しだけ変更しました。

処理中です...