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10話 リリアンナの入学(シルル)
しおりを挟むあれから俺とセイラ嬢の事は噂の的となり、王子の恋バナにみんなが興味津々になってしまっていた。
ここで俺が違うと言っても本当の意味で否定してると捉えてくれる奴は少ないだろう。
それなら変にかき乱すより黙っていた方がいいと思った。
実際俺とセイラ嬢はそんな関係じゃないし、噂なんてそのうちみんな飽きてしまうだろう。
そう思っていたけど、セイラ嬢は相変わらず俺に普通に接してくる。
振ったから近寄るなって訳じゃないけど、セイラ嬢も良い根性してるなと思ってしまった。
それからはセイラ嬢とは2人にならないよう、特に注意していたので何も起こることはなく2年が過ぎた。
今日は待ちに待った日だ。
「今年はシルル様のご婚約者のリリアンナ嬢が入学してくるんですよね? 」
入学式の会場に向かいながらカイが話しかけてくる。
「うん、そうなんだ 」
久しぶりにリリアンナに会えると思うと、自然に笑みがこぼれる。
「こんな嬉しそうなシルル様を見るのは初めてですね 」
セフィアが俺の珍しい笑顔に驚いたたように俺の顔を凝視する。
「本当に、まさか婚約者ちゃんに会えるのをこんなに楽しみにしていたなんて驚きですね 」
ジュリアスも目を丸くして俺を見る。
ジュリアスは整った綺麗な顔で、いわゆるイケメンなんだけど、その容姿を本人も分かっているのか、結構なプレイボーイだ。
知ってるだけでも入学してから付き合った女の子は20人は超えてる。
俺からしたら、よくそんな元気があるなってジジイめいたことを思ってしまうんだけど、彼曰く、女の子が居ないと自分の存在意義が無いらしい。
そこまで言えるのは立派だと思うけど、トラブルだけは起こさないで欲しい。
まぁ、今のところトラブルなくやってるからチャラく見えてちゃんとしてるのかもしれない。
そういう人間だから一緒にいる訳なんだけど、一応伯爵家の跡取りなんだからそのうち落ち着いて欲しいかな・・・
「ここからだとあまり見えないですね 」
席に着くと、カイが話しかけてくる。
確かに、新入生の顔までじっくりは見えないな。
「後で紹介してくださいね 」
カイの言葉に、隣に座ってたジュリアスもうんうんと頷く。
「うん、後でね 」
ジュリアスはリリアンナを見たらなんて言うのかな、俺は可愛いと思ってるけど、世間一般的にはぽっちゃりさんは受け入れられるのだろうか?
そんなことを思っていると、新入生の入場が始まった。
俺は離れててもリリアンナは直ぐに分かると思ってた。
なのに、新入生の入場が終わって俺の心は動揺していた。
新入生の中にリリアンナを見つけられなかったからだ。
婚約者が分からないなんて、婚約者失格だ。
リリアンナはどこに居たんだ?
もしかして来ていないのか?
入学式の間中、俺はキョロキョロと辺りを見回したいのをぐっと抑えて平静を保っていた。
それから、入学式が終わって退場の時、もう一度リリアンナを探そうとじっと見ていたら、リリアンナによく似た子を見つけた。
リリアンナ? でも姿が・・・他の誰よりも細くてたおやかだ。
そこで俺はふと記憶を思い出した。
そうだ、俺の知るリリアンナは細くて美しい子だった。 やっぱりぽっちゃりしてたのは幼い頃だけで、表舞台に出る頃には細くなってたんだ。
ぽっちゃりのリリアンナに慣れてしまってすっかり忘れてた。
リリアンナは遠目から見ても可愛く綺麗になっている。
「シルル様、リリアンナ嬢居ました? 」
新入生の退場が終わってからカイが
話しかけてくる。
「俺、めちゃくちゃ可愛い子見つけちゃいましたよ 」
そう言うのはジュリアスだ。
「え? そんなに可愛い子居た? 僕は目が悪いからみんな同じ顔にしか見えなかったよ、どんな子? 」
カイが興味津々にジュリアスに問いかける。
俺はリリアンナを見つけるのに必死だったから他の子なんて興味無いし、見てなかった。
「居たよ、ブルーのドレスにシルバーの腰まで緩くウエーブが揺れる凄く華奢な子だった。瞳の色まではさすがに分からなかったけど、どんな色をしてるのかな・・・ 」
俺はその言葉に、嬉しそうに話すジュリアスを凝視してしまった。
「な、なんですか? シルル様 」
俺の異様な行動に、ジュリアスも少し焦る。
「それって・・・多分僕の婚約者だ 」
「え? まじっすか? 」
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