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3話 喜んで貰うにはどうしたらいい?(シルル)
しおりを挟むリリアンナとの婚約から半年、相変わらずリリアンナはぷくぷくとしていて可愛い。
どう甘やかそうかと、色々試行錯誤を重ねてきたけど、ケーキをいっぱい食べていいよって言った時の笑顔が一番可愛い。
でも食べさせすぎるのも良くない。
リリアンナがこれ以上ぽっちゃりさんになるのはさすがに俺としては辞めさせたい。
だけど、俺が甘やかす以前に、公爵の娘への愛情が半端なくて、甘々に甘やかした結果が今のリリアンナなのだ。
公爵の甘やかしを少し抑えさせないと、俺がケーキを幸せそうに食べるリリアンナが見られない。
それ以前に、もうすぐしたらしばらくはリリアンナに会えなくなるんだけど・・・
「ねぇ、リリアンナ、今度の僕の誕生日パーティーには一緒に出てくれるよね? 」
今度の誕生日パーティーは僕はまだ成人してないから身内だけのものだけど、リリアンナを身内に紹介出来る最初の機会だ。
そして、誕生日が終わった翌月から僕は王都にある学園に入る。
学園は寄宿舎への入寮が基本なので、しばらくはリリアンナにも会えなくなってしまう。
その前に、いっぱいリリアンナとお話して、俺の事を好きになってもらわないと。
「シルル様のお誕生日を一緒にお祝いさせて頂けるなんて光栄です 」
にっこり笑って話すリリアンナは社交辞令の笑顔で、どうも俺の事を信頼してくれてる感じではないんだよな・・・まぁ、政略結婚なんだから俺の事を好きで婚約したわけじゃないだろうし、警戒されているのもわかる。
だからこそ、俺はリリアンナに俺自身を好きになって欲しい。
そう思っている。
リリアンナが悪役令嬢にならないためには何をすればいいのか分からないけど、まずは俺の事を本当に好きになって欲しい。
「せっかくだから、僕とお揃いの衣装にしない? 」
「え? お揃い・・・ですか? 」
俺の提案に、リリアンナは少し戸惑ったように返事を返す。
「嫌かな? 」
「いえ、そういう訳では無いのですが・・・」
なんだかリリアンナの歯切れが悪い。どうしたんだろう?
「どうしたの? 」
俺の問いかけに、リリアンナは軽く首を横に振る。
「なんでもないです。楽しみです 」
リリアンナはにっこり笑って誤魔化したけど、明らかになんか変だな。
「ドレス何色がいい?」
「お任せします 」
どうも、俺がお揃いの衣装の話を初めてから笑顔が消えたな・・・何でだろう?
それから帰るまでリリアンナは作り笑いを浮かべるだけで明らかに様子が変だった。
俺、なんか失敗したみたいだ。
お揃いの服とか、喜んでくれるかなって思ったんだけどな・・・やっぱ相思相愛でないと、お揃いの服って気持ち悪いのかな、学園に入ると、リリアンナが入学してくるまの2年間会えなくなっちゃうから、少しでも仲良くなりたかったんだけどな・・・
リリアンナが悪役令嬢としてヒロインに嫌がらせをして断罪されるのは俺の卒業式だから、今から5年後、俺が18、リリアンナが16の時。
後5年しかないのに、これから2年はリリアンナに会えない。
今この状況は不味いよな・・・何か考えないと・・・
「リリアンナ、とっても似合ってるよ、やっぱりリリアンナのシルバーの髪にはどんな色でも似合うけど、ピンクが可愛らしくていいね 」
あれこれ考えているうちにあっという間に俺の誕生日になってしまった。
リリアンナのドレスはピンク地に肩と腰に濃いピンクと白のストライプの幾重にも重ねた大きなリボンをあしらっている。
俺のは黒基調に肩と腰に同じリボンの飾りを施してある。
インパクトのあるリボンなので、一目見ればお揃いだってわかる。
「シルル様こそ素敵です 」
褒められて頬を赤くして俯くリリアンナも可愛い。
いつも思うんだけど、控えめで恥ずかしがり屋なリリアンナがなんで悪役令嬢と呼ばれるようになるんだろう?
疑問だけど、ひょっとしたら俺が違うように、リリアンナも小説の中のリリアンナとは違うのかもしれない。
違っていたとしても、今目の前にいるリリアンナが俺のリリアンナだ。
少し恥ずかしがり屋で、とても心の優しい子。
俺は知ってる。
庭を歩いている時に、花を見て微笑んでいるのを、芝生の上で、小さな花を踏まないように歩いていることを、侍女にいつも「ありがとう」と言えている事を、そんな彼女だから俺は愛おしいと思えるんだ。
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