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11話 将軍任命

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レイのお父さんの葬儀が終わったあと、レイが正式に王位に着いた。

前魔王様を殺した連中は僕が全部殺してしまったので、黒幕を探すのは大変なんじゃないかと思ったけど、あっけなく見付かって、レイの言ってた通り、レイの部下はとても優秀なんだと思った。黒幕は大臣のローランと言う人で、この人も人間は根絶やしにするべきだと訴えている人だった。

そして、混乱に乗じてダイオンの姿は消えていたそうだ。
どこかに身を隠して、反撃を狙っているのかもしれない。

「ダイオンはどこかで同士をかき集めていそうだな・・・クリス、お前が一番危ない」

レイは前魔王様の時に居た、前魔王様の王政に反対だった人間を徹底的に排除した。
そんな事をすれば、レイが敵意を向けられるのは分かるはずなのに、あえて自分に敵意が集中するようにしたんだ。

そして、身分の剥奪と、王都からの退去を命ぜられた何人かはその場で大反対をし、レイに抵抗したけど、レイに呆気なく無力化され、大人しくなった。

でも、そういった人達はまたどこかでレイの命を狙うかもしれない。


「僕よりも、レイが危ないでしょ、僕より自分に敵意が集中するように仕向けたの、わかってるよ! 」

そう言うと、レイがふっと笑う。

「お前は鋭いな、だけど、俺は大丈夫だ。お前も俺が大臣達を無力化したのを見ていただろ? 」

そうだ、レイは思っていた以上に強い。
何人束になってかかっても叶わないだろう。

「ねぇ、魔王様って世襲制なの? 」

「いや、大抵魔王の子は魔王の力を持って産まれるから跡継ぎは息子になるが、魔王の力を受け継がないやつもいるし、実力が魔王の息子よりも一般人の方が勝っている事もある。魔王は実力で決められるから、特に息子が継ぐとは決まってない」

「そうなの? でも、レイは魔王になったよね、レイは実力でも認められてるってことだね」

「そうだな、俺は元々強さでは飛び抜けていたから、早くから次期魔王に選ばれていた」

そうなんだ、だから、前魔王様が死んだ時、直ぐにレイが魔王になったのか。

「それより・・・クリス、お前に軍をやろう」

「は? 」

「ずっと城の中に篭っているのも嫌だろう? だけど、お前一人で外にやるのは危ない。軍をお前につけるから、必ず誰かと行動しろ」

そう言ったあと、本当は誰の目にも触れさせたくないけど・・・と小さく呟いたのを僕は聞いていた。

「軍って・・・僕が貰えるものなの? 」

レイは簡単そうに言うけど、人間の僕に軍なんか与えていいの?

「俺の下に付ける将軍は俺が決める。四将を新たに作るんだが、二人は元々父の元で働いてくれていた優秀な奴を選んである。もう一人は俺の下でずっと働いてくれてた副将のナルサスと言うやつだ。そしてもう一人は、クリス、お前に務めてもらいたい」

「はい? 」

僕はその突拍子もない話に思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
僕が将軍?
レイは何考えてるの?親が子供に玩具を与える感覚で話してるように聞こえるけど、そんな簡単じゃないって事くらい僕にもわかる。

「レイ、それはいくらなんでも無理でしょ」

「何が無理なんだ? お前なら出来る」

・・・レイは親バカですか?
そんな事を思っていたのに、四将軍に任命される後の三人が集まって、その事をレイが告げると、二人は納得して頷いた。
え? そこは反対するところでしょ?

「魔王様、お言葉ですが、何故人間を・・・しかもこんな若造を将軍に? 」

そうだよね、その反応が普通だよね?
反対したのはナルサスと言う人だ。
レイがずっレイの副官をしてくれてたと言っていた。

「・・・失礼ですが・・・魔王様の愛人ですか? 」

本当に失礼なことを聞く、愛人って、僕はそんなんじゃない!
・・・あれ?僕はレイの何?

この人は僕が見た事無い人だから、今までは僕に関わりがなかったのか、ずっと外回りだったのかな?
向こうも、初めて見る僕に、明らかに警戒している。

「ナルサス、失礼なことを言うな」

レイが何も言わない代わりに、古株の一人がナルサスを諌める。

「グラウ卿、貴方も何故納得されるのですか? 魔王様にそこまで威圧されているのか? 」

ナルサスは思ったことを口に出すタイプの人のようだ。
だけど、レイは何も言わない。

「魔王様の実力は私も恐ろしい程把握している。だがそうでは無い。クリストファー殿の実力が勝っているから納得しているだけだ」

グラウさんはなんか僕の事を認めてくれてるっぽい。

「ラファロ卿も? 」

「ああ、私はクリストファー殿が戦った後を目の当たりにした。手練の刺客が全て確実に倒されていた。実力は十分だ」

年配のお二人は僕のことを知ってたのか・・・
でも、ナルサスは気に食わないんだろうな、明らかに顔が不服そうだ。

「魔王様、俺とクリストファーとの手合わせをお許し頂けませんか? 」

ナルサスは僕の実力を測ろうとしたのか、勝負を求めてきた。

「構わないが、クリスを侮るなよ? 」

「魔王様のお墨付きがどれ程か・・・試させてもらいます! 」

そう言って目をギラつかせて僕を見た。



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