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⑯魔物
しおりを挟む本当に・・・ここの人達は自分の容姿が分かっているのかしら。確かに、私も自分で言うのもなんだけど、容姿はいい方かなとは思っていたけれど、私よりあの方たちの方が美しいのに・・・
緑を含んだ空気に少し気が抜けて、ほぅ・・・と息をつきながら何気なく右の方を見るとリリアム様が外を歩いているのが見えた。
何か重そうなものを抱えているけれど、街でお買い物でもされてきたのかしら・・・
ふふっ、物を抱えていても歩く姿は美しい。
いつもパンツスタイルだけど、ウエストの締まったドレスを着たらとてもお似合いになると思うのに・・・
なんて事を思いながらリリアム様のスタイルの良さに見惚れていると、リリアム様の後ろから何か大きなものが勢いよく走ってくるのが見えた。
あれは何?魔物??結界を抜けて来たの??
このままじゃリリアム様が危ない!
そう思うのと同時に身体が動き出していた。
風を浴びていた窓の隣には掃き出しの大きな窓がある。普段は外に出ては行けないと言われているので出ることは無いけれど、身体はそこを通り抜けると庭へと飛び出していた。
「リリアム様!後ろ!危ないです!!」
慌てて叫びながら走って出たけれど、リリアム様はすでに腰の剣を抜いて向かってくる魔物と対峙していた。
「アリア様!危険なので中にいてください!!」
私に気づいたリリアム様が叫ぶ。
けれど、リリアム様の何倍もある大きなブァッファローのような魔物とどうやって戦うというの?危ないわ!
ガキンッ!と魔物の大きな角とリリアム様の剣が大きな音を立ててぶつかる。
大きな魔物に少しリリアム様が押される。けれど、ちゃんと対峙している。
さすが戦いもできると魔王様が褒めるだけある。
魔物と戦う人を初めて見たし、本当に怖いのだけど、リリアム様の事が心配で目が離せない。
リリアム様は冷静に魔物の攻撃を受けているけれど、魔物は自我を失っているようで、狂ったように何度もリリアム様に襲いかかる。
リリアム様は少し苦しそうにその重い攻撃を受けていたけれど、とうとう剣が受けきれなくなって弾け飛んだ。同時にリリアム様もはね飛ばされる。そしてはね飛ばされたリリアム様めがけて魔物が向かっていくのが見えた。
「リリアム!!危ない!!」
考えるよりも先に身体が動いて私はリリアム様の前に立って両手を広げて盾になっていた。
「アリア様!!!!」
リリアム様が叫んでいるのが聞こえたけれど、目の前に迫る大きな魔物に私は目を閉じた。
ドサッ
私に魔物の牙が迫るまで数秒の事だと思ったのに私に魔物が襲いかかることは無く、大きな音がして目を開けると、魔物が倒れて横たわっていた。
そして私の目の前には魔王様が私に背を向けて立っていた。
「アリア、何故外に出た!あれほど危険だと言っただろう!」
私に向き直ると魔王様が叫んだ。
「魔王様、アリア様は私を助けようとして下さったのです。私の落ち度です。申し訳ございません」
慌ててリリアム様が間に入って助けてくれる。
「リリアムを?」
魔王様が怪訝な顔で私を見る。
「魔王様、言いつけを守れなくてごめんなさい。リリアム様に危険が迫っていると思ったらいてもたってもいられなくなってしまって・・・私が差し出がましいことをしてしまったのでリリアム様の気が散ってしまっのですわ。本当に申し訳ございません」
そうだ、私が出てきてしまったからリリアム様の気が散ってしまったのよ。余計なことをしてしまったのだわ・・・でも、もしリリアム様に 何かあったら・・・
考えただけで恐ろしくて首を横に振る。
「アリア・・・リリアムを守ってくれて礼を言う。ここは危ないから中へ入ろう。リリアム、キース、後片付けを任せた」
魔王様が素早く指示を出すといつの間にかキース様もそばに控えていて2人が返事をする。
魔王様を見るとさっきの怒った顔はどこかへ消えて穏やかな優しい表情に戻っていた。
「やはり・・・お前は変わらないな・・・」
魔王様が呟いたけれどその声は小さすぎてアリアの耳には届かなかった。
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