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㊶防衛(ラルフレッド)
しおりを挟むリリアーナが攫われた事件から、俺は屋敷に篭っていた。
リリアーナを一人にさせたくないからと言うのもあるけど、別の理由もあった。
俺が命を狙われるようになったからだ。
命の狙われている俺がリリアーナの近くにいると、リリアーナも危険じゃないのかと思われるかもしれないけど、俺が近くにいる方が、さらわれる不安もないし、何より、俺が結界を張り巡らせているこの屋敷にいるのが一番安全だ。
無闇に別の場所へ行けば、そこで二次被害が出る可能性もある。
護りで言うと、この屋敷はどんな砦よりも強固だという自信がある。
うちの屋敷の情報を漏らされない為に、刺客は全て始末するか、捉えてある。
なので、どうしてここが落ちないのか、相手には謎のままだと思う。
リリアーナに、以前人を殺すとその罪は一生残ると言われてしまったけど、俺は以前からここに来る刺客は始末して来た。
なので今更なんだけど、リリアーナの言葉は嬉しかった。
俺をなんでも出来る化け物ではなく、一人の人として扱ってくれたのが・・・
「帝国が相手ですか・・・」
アレクが溜息をつきながらこぼす。
「うん、面倒臭いのに目をつけられちゃったよねー。」
アレクの言葉に、リリアーナが顔を引き攣らせる。
「北側というと、我が国と接しているのはナザリア共和国と、ハザール帝国ですよね?ハザール帝国がラルフ様を狙っているのですか?」
「うん、俺をって言うか、この国を狙ってるんだけどね、どうやら、マドラスは帝国と繋がってたみたいだね。俺の情報が入ってるって事はそういう事でしょ。」
「何故?」
「ここんとこ我が国って穀物も安定して取れてるし、資源発掘も進んで安定した、周りから見たら凄く潤いのある国に見えてるんだよね、だから帝国だけでなく、実は色んな国から狙われてるんだけどね、一番大きい所が手を出してきたって感じかな。」
「まぁ、今の恵はほぼラルフ様のお陰なんですけどね。」
アレクが俺の説明に補足をつける。
まぁ、国を良くするために色々やったから、周りの国から見たら欲しくなるのもわかるけどさ・・・
もう少し平和的に出来ないのかな・・・
欲しいから奪うって、いつの時代だよ・・・
「大丈夫なのですか?」
リリアーナが不安そうに俺の腕にしがみつく。
「うん、まぁ、色々手は打ってあるから大丈夫だよ。」
前にアレクにナザリア共和国の動きに気を付けるよう言ったけど、あれも帝国に対する対策の一つだ。
ナザリア共和国とハザール帝国は元々仲が良くないので、うちを狙っていたハザールにはうちの恵みを与えて防衛協定を結ばせている。
なので、帝国が攻めてきたらハザールはうちと一緒に戦うことになる。
そして、ハザールが攻め入る為のルートは色々あるように見えて、一本しかない。(その為にちょっと地形いじっちゃったけどね)迎え撃つ準備はしてある。
その事に相手が気が付くか、気がついてくれれば血を流さなくて済むし、気が付いていて攻めて来るなら、俺を見くびりすぎだと返り討ちにするまでだ。
どっちにしろ、俺が邪魔だと思って排除しようとしてるってことは、近々来るつもりかな・・・
「アレク、俺も近々父上の所には行くけど、準備をしておくように伝えてくれ。」
父上達にも、帝国が攻めてきた時の対策は伝えてある。
その為に以前から色々指示してたから守りは出来上がってるはずだ。
(ちょっと内緒で地形いじっちゃったけど)
「了承しました。ラルフ様が以前から動きをかけてくれてたので焦ることは無いですね。」
アレクが明るく答える。
「まあ、ね。」
俺は不安そうなリリアーナを抱き寄せると頬にキスをする。
「大丈夫、俺を信じて。」
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