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㊲ラルフ様は必ず来てくれる。
しおりを挟むセリーヌ様に送って頂いて部屋に戻ってからしばらくして、部屋のドアが鳴った。
ラルフ様かしら?
私は扉を開けると、知らないメイドさんが立っていた。
「ラルフレッド王子様があちらでお呼びです。」
「そうなの?」
何かあったのかしら?
そう思って部屋を出た所で、布を口に押し当てられ、何かを嗅がされて目の前が真っ暗になった。
気がつくと、知らない場所で揺れていた。
土を蹴る音・・・馬車の中?
手足は縛られて、目には目隠し、口にも猿轡がされている。
私、ひょっとして誘拐されたの?
状況を把握した途端、怖くて震えが止まらなくなった。
怖い・・・ラルフ様・・・助けて・・・!
意識が戻ってからどれくらい経っただろう。まだ馬車は揺れている。
どこへ連れていかれるの?
馬車が止まったら、私はどうなるの?
怖い想像ばかりが脳裏をかすめて、震えが止まらない。
自然と涙か溢れてきて、目隠しされている布が涙で濡れる。
しばらくして、馬車が止まった。外で数人が話す声が聞こえる。
ラルフ様・・・助けに来てくれるわよね?
でも、怖い、怖い、怖い・・・
馬車の荷台が開けられたのか、目隠し越しにも分かる光が入ってくる。
そして、私は誰かに担がれた。
「ゔ~っ」
「気がついてたのか!もうちょっと大人しくしてろ!」
怖くて暴れると、お腹を酷く殴られてしまった。
痛みで私はまた意識を失った。
また気がつくと、何処かのベッドに降ろされた所だった。
少しだけ気を失ってたの?・・・
降ろされた場所はふかふかなのでベッドだと思う・・・
そう思っていると、目隠しが外される。
目に入ったのは知らない男の人達。
そして、やっぱり私はベッドの上に寝かされていた。
「ふーん?仮面令嬢ってくらいだから、表情変えないのかと思ったら、ちゃんと恐怖に引きつった顔してるじゃないか。」
そう言った男には確か見覚えがある。
バドルド伯爵?
「しばらくここに居てもらうよ?まあ、今私の顔を見たから帰すわけにはいかないけどね。」
そう言ってからクスクスと笑う伯爵。
帰してくれるつもりは無いの?
その時、男たちの向こうの空間が歪むのが見えた。
これは・・・ラルフ様だわ!
「リリアーナ!」
ラルフ様の叫びに皆が一斉に後ろを振り向く。
そして、バドルド伯爵以外の男の人達に稲妻のようなものが走ったと思うと、みんな意識を失って崩れ落ちる。
「な、何処から?!」
焦るバドルド伯爵もラルフ様の魔法で拘束される。
「バドルド、後でゆっくり話を聞く。」
ラルフ様が静かに低い声でそう言った後、バドルド伯爵も稲妻の様なものに打たれて意識を失った。
「リリアーナ!」
静かになった部屋で私に駆け寄ると、すぐに私の手足と口を押さえていたものを魔力を使って外してくれる。
私はその間もボロボロと涙を零しながらラルフ様を見ていた。
「ラルフ様!・・・怖かった・・・!」
口が自由になると真っ先に叫ぶ。
そんな私をラルフ様は優しく抱きしめてくれる。
「リリアーナ、どこも怪我してないか?酷いことをされなかったか?・・・こんなに震えて・・・怖い思いをさせて済まなかった。」
そうして震えながら泣く私を強く抱きしめてくれた。
「今の声はなんだ?」
別の男達が異変を感じたのか、部屋を開けて数人が入って来た。私はその姿に、またビクリとしてしまう。
そして、男達はラルフ様を見て驚く。
「な、お前はなんだ!」
「お前こそ、これ以上リリアーナを怖がらせるな。」
ラルフ様が静かに言うと、また稲妻が男たちに命中して倒れる。
「リリアーナ、帰ろう。」
私はラルフ様に抱き抱えられて空間の向こうに移動した。
移動した先は国王陛下の執務室だった。
「父上、リリアーナは無事救出しました。兄上も無事です。」
その報告に、陛下は安堵の表情を浮かべる。
「そうか、良かった・・・」
「リリアーナを攫ったのはバドルドでした。今は屋敷ごと結界で閉じ込めているので、意識を取り戻しても出ることは出来ないでしょう。」
「分かった。直ぐに捕獲に向かわせる。」
陛下の言葉を頷いて了承するラルフ様。
「俺は一度屋敷に戻ります。」
「ああ、リリアーナを早く休ませてやるといい。後のことは任せろ。」
陛下の言葉を聞いてから、ラルフ様はまた空間を繋げて、出たのはラルフ様のお屋敷の私達の寝室でした。
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