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㉔国王陛下

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「リリアーナ、準備は出来た?」

「はい。」

あれから、とりあえず朝食を食べようというラルフ様と一緒に朝食を終え、支度をして国王陛下に会いに行く事になりました。

会いに行くといっても、ラルフ様の空間魔法でぱっと会いに行けちゃうので、私は着替えるとラルフ様の執務室に向かった。

「じゃ、繋げるけど、いいって言うまで待ってね。」

ラルフ様は笑顔でそう言うと、ラルフ様の前の空間が歪む。

「父上、今よろしいですか?」

ラルフ様が確認して、良いと返事があったのか、私の方を向いて手招きでおいでと促す。

私は緊張で足が竦んでしまいそうになるのを頑張って歩を進めて、歪んだ空間に足を踏み入れた。

踏み入れた場所はさっきまで居たラルフ様の執務室とは明らかに違う部屋だった。

後ろを振り向くと、既に歪んだ空間はなく、違う部屋の中。
ここは・・・広い部屋、重厚な家具、そして目の前の人物。
国王陛下の執務室?

「ラルフレッド、よく来たな。」

国王陛下が立ち上がってラルフ様を迎える。

「父上、お久しぶりです。」

軽く礼をしてから私に向き直って、目を合わせて微笑んでから私の腰に手をやって、また国王陛下を見る。

「こちらがワイズベル伯爵令嬢のリリアーナで、俺の妻です。」

「リリアーナと申します。どうぞ宜しくお願い致します。」

私はラルフ様に促されて、祝女の礼をしながら深々と腰を下げて挨拶をする。

国王陛下はがっしりとした体格に白に近い金髪で、そしてブルー瞳はラルフ様と同じ色です。
でも、全然似ていらっしゃらないので、ラルフ様はお母様似なのね。

「うむ、リリアーナ、此度はラルフレッドの急な申し出を受けてくれ、感謝する。」

「とんでもございません。とても光栄なお申し出、ありがたく存じております。」

私は下げた頭を上げることが出来ず、そのまま話を続ける。

「そんなに畏まらなくても良い。ラルフレッドに人並な所があったと喜んでいるのだ。」

そう言う国王陛下に、顔を上げてみると、にこやかに笑う顔があった。
その表情を見て少し安心する。

「うん、素敵なお嬢さんじゃないか、ラルフレッドも良くこんな可愛い子を見つけたものだな。」

素敵?可愛い?国王陛下はやっぱり人の掌握に長けていらっしゃるのかしら、お口がお上手だわ。

「そうでしょ?リリアーナは俺の自慢の奥さんだよ。」

ラルフ様が私に抱きつきながら自慢げに話す。
ラルフ様、国王陛下の前でそれはダメでしょ!

「ラ、ラルフ様、国王陛下の前です・・・」

恥ずかしくてまた俯く私の頭にキスを落とすラルフ様、お父上様の前だと分かっているのかしら・・・

「ハハハ、気にしなくていい。ラルフレッドがこんなに人に夢中になる日が来るとは思わなかった。」

その言葉に、国王陛下を見ると、ラルフ様の行動を嬉しそうに眺めていました。

「ラルフレッドは基本、人と接する時は冷めたふうな話し方をするやつでな、こんな風に打ち解けて話をするのは本当に数少ないんだよ。打ち解けて話すと言っても、にこやか話す訳じゃない。そのラルフレッドがこんなににこやかにする事があるなんて・・・リリアーナ、ラルフレッドの元へ来てくれて本当にありがとう。」

国王陛下は本当に嬉しそうに、私とラルフ様を見ていた。
国王陛下はとても良いお父様のようね。


「所で、ラルフレッド、今度身内だけのパーティをするから来てくれないか?」

そのお誘いに、ラルフ様の顔が曇る。

「父上、それは契約違反では?」

ラルフ様の契約、それは、ラルフ様の知恵と能力を使って国の役に立つ代わりに自由にする事、社交界には出ない事、王位継承はしない事よね?
前に聞いたことがある。

「身内に会うだけだから違反ではないだろう?」

「・・・何故突然そんな事を?」

ラルフ様は納得いっていないようです。

「先日、セリーヌからラルフレッドが結婚したなんて知らなかったと怒りの手紙を受け取ってな、せめて身内には報告しろと言われた。」

「俺が結婚しようがしてまいが他の兄弟には興味無い事でしょう。」

「そうなんだが、リリアーナが我が一族に加わってくれたのだ。身内に紹介くらいはさせてくれ。」

そう言われると、ラルフ様も私のことを考えてなのか、渋々承諾するしかなかった。

そう言われれば、私は王族の仲間入りをした事になるの?
ラルフ様は郊外に住んでいるのでそんな事考えたこと無かったけれど、よく考えればそうなんだわ・・・


「日時はまた連絡する。」

「分かりました。では失礼します。」

そうして私達は国王陛下の執務室から我が家のラルフ様の執務室へと異動した。










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